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雄物川の川べりのとある村里に藤太(とうた)というおとこのわらしこ(子供)がえであったド。
そこの家では、おなごわらしばかり生れたあとに藤太が生れたものだから、めんこくて、めんこくて、あまりに大事に育てたものだから、外にもろくに出ることがながったド。んだもんだ(それで)から、体の弱いわらしこになっていったド。
ほかのおとこわらしと遊ぶこともあまりなく、たまに外に出るといじめられて泣いて帰ってくることが多かったド。
んだもんだから、おど(お父さん)も、あば(お母さん)もしんぺ(心配)して、何とか藤太が丈夫な一人前のおとこに育ってもらいたいと、いつも神様にお祈りしていたもんだド。
◇ ◇ ◇
月日のたつのは早いもので、弱虫な藤太も13歳になったド。
春も近づいたある晩のこと、藤太はおそろしい夢を見たド。
その夢は、川の上流にある水沢というところの館(たて)に住む大蛇が、人の姿になってあらわれ、「住み家になっている館の杉の大木が切りたおされるので、住みにくくなるから、そのうちに川を下って、海へ出る。そして、別の場所に住みかえるので、お前の下を通るから、必ずその時に川のほとりに出ておがめ!。そうすれば、お前のおどやあばの願い事をかなえてやる。このことは、絶村に誰にもいってはならぬぞ」とお告げがめったド。
いくじのない藤太は、幾度となくおどやあばにそのことを話そうと思ったども『誰にもいうな!』とのお告げと、話してしまうと何が起きるかしんぺになって、まんま(ご飯)ものどを通らなかったド。
山々の雪もとけ、川の水かさも多くなり、雄物川のほとりには、白い野だいこんの花が咲いているのどかな夏に近いある日……。藤太は何んとも川の方が気になってしかたがなかったド。
なんとしたものか、足は自然に川の方に向いて、川岸に引き寄せられろように、いつの間にか川のほとりに一人立っていたド。
すると、風もないのに川の波がだんだん大きくなり、水の色もしだいに青黒くなって、川の中程はとくに上流から波のうねりがはげしくなったド。
藤太はおそろしくなり「水沢の館の主が今、下るどごだ……」と叫んでも声が出なかったド。目の前の青黒い波のうねりに手を合せて、夢中にお祈りしたド。
しばらくして波もおさまり、液太は気をとりもどしたが、川のほとりはもちろん、あたりにはまったく人の影もなかったド。
藤太は、それから気丈な強いおとこになり、村のおさ(長)になったド。とっぴんぱらりのぷ!
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