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月日の流れは早いもの−。地主明神を石行の地より奉安したのがずうっと昔のこととなったある年のことなんだド。
それぞれ家主の代がかわり、お宮も屋根や囲廊が苔むして、だんだん古くなったド。世の乱れのためか、信心がうすれたものか、修理もしないで年を重ね、もったいないことながらご身体にもくもの巣がかかっていたド。塵や埃に埋まっても、当時の氏子たちは、誰一人としてお宮を再建しようとする者がなかったド。
それはそれは見苦しく、あさましい有様であったんだド。
折しもそのころ、このあたり一体の村々に疫病が発生して、人から人へとうつったド。初めの間は、医者の薬で治そうとしたが、全くその効目がなくだんだん死者が多く出るばかりだったド。
そして人ばかりでなく、家畜にも疫病がうつって、あちこちに牛馬の死体が散乱すろようになったド。人々は、加持や祠祷とあらゆる手だてをしたが、その甲斐もなかったド。疫神を祭ったが、疫病は益々勢いが強まるばかりで、人々はなす術を知らず、その恐しさに手をとり合って泣くばかりであったド。
そのころ、新波に多郎右衛門と云う者が住んでおったんだド。
主人はもとより、家族も皆正直な人柄であったド。とりわけ息子は、大の親孝行もので、朝夕に神仏をひたすらに信心する感心な若者であったんだド。
しかしながら、多郎右衛門の父親も疫病にかかり、心をこめての看病も甲斐なく、だんだんに重くなり、悲しいことにただ、死ぬのを待つばかりになったんだド。
そうしたある夜のこと、息子は不思議な夢を見たんだド。その夢というのは、自分が村に近い川の渦巻の上に現れた大きな竜の形の雲に乗った本尊様が入水したのを拾い奉り家に安置した夢だったド。
息子は翌朝、さそわれるように川端に行ったら、渦巻の中から夢にでてきたご尊像が本当にあらわれたド。
驚くことにご尊像は、水中から抱き上げたら、人肌のようなぬくもりがあったド。そして宮の奥座敷に安置して家内の人々が信仰したんだド。
そのことがあってから、病み細っていた父親の様子は、見る見る快方に向かい、もとの元気な身体に戻ったことから、ご尊像のご霊験と、家族一同が有難さに涙を流し喜びあったんだド。
ご尊像を水中より抱き上げ奉った時、左右の手はもとより、着ていた昔物にも芳しき香りが紛々として、しばらく消えなかったド。
このご尊像を、地主明神と併せて再逮した新しきお宮にお祠り申しあげたところ、疫病もたらまちおさまり、大勢の村人が救われたんだド。
とつぴんぱらりのぷ!
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