平成29年度一般会計・特別会計決算審査意見
審査の対象
- 平成29年度秋田市一般会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市土地区画整理会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市市有林会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市市営墓地会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市中央卸売市場会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市公設地方卸売市場会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市大森山動物園会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市廃棄物発電会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市病院事業債管理会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市学校給食費会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市国民健康保険事業会計(事業勘定)歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市母子父子寡婦福祉資金貸付事業会計歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市介護保険事業会計(保険事業勘定)歳入歳出決算
- 平成29年度秋田市後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算
- 平成29年度各会計実質収支に関する調書
- 平成29年度財産に関する調書
審査の期間
平成30年7月9日から平成30年8月31日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の方法
平成29年度秋田市一般会計・特別会計歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書および財産に関する調書は、関係法令に基づいて調製されているか、計数が関係する証書類と符合するかを確認した。また、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続等によって実施し、予算の執行状況の適否について審査した。
審査の結果および意見
審査に付された各会計歳入歳出決算および決算附属書類は、いずれも関係法令に基づいて調製されており、計数は証書類と符合し正確であると認めた。
また、予算の執行は、おおむね適正であることを認めた。
決算総額
本年度の一般会計の決算額は、歳入が前年度より9億3,221万円(0.7%)減の1,332億1,220万円、歳出が15億1,910万円(1.1%)減の1,309億7,698万円となっている。これに特別会計を加えた決算総額は、歳入が4億5,666万円(0.2%)増の2,095億3,047万円、歳出が569万円(0.0%)増の2,050億1,494万円となっており、いずれも前年度を上回っている。
一般会計では、歳入歳出差引額(形式収支)が22億3,522万円となり、前年度の形式収支16億4,833万円を上回っている。また、翌年度への繰越財源が前年度は1億9,534万円であったが、本年度は7億2,951万円となっており、形式収支から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は、前年度より5,272万円(3.6%)増加し15億571万円の黒字となっている。これに特別会計を加えた実質収支の総額では、前年度より8,321万円(2.2%)減少し37億8,601万円の黒字となっている。
普通会計における財政状況
地方財政統計上の統一会計区分である普通会計における決算収支の状況は、実質収支が16億8,302万円の黒字、前年度実質収支を差し引いた単年度収支は12万円の赤字となっている。これに財政調整基金の積立金および取崩額、市債繰上償還金を加減した実質単年度収支は、11億5,664万円の赤字となっており、赤字額は前年度に比べて1億5,073万円(11.5%)減少している。
主要財政指標は、前年度と比較して、財政力指数、経常収支比率、経常一般財源比率、公債費負担比率、実質公債費比率が改善しているものの、実質収支比率は同率、義務的経費比率は悪化している。
財政構造の弾力性を判断する義務的経費比率の悪化については、今後の推移を注視する必要がある。また、財政力の強弱や公債費による財政負担の程度を判断する財政力指数、公債費負担比率、実質公債費比率は改善しているものの、類似都市の平均値に及ばず、本市の財政状況は依然として楽観できないものとなっている。
一般会計の歳入
一般会計の収入済額を前年度と比較すると、自主財源は、企業の設備投資や家屋の新増築による固定資産税の増などにより市税が2億4,010万円(0.6%)、中小企業貸付預託金元利収入の増などにより諸収入が3億4,649万円(4.9%)それぞれ増となったものの、庁舎建設基金繰入金の減などにより繰入金が23億5,258万円(32.2%)、旧土地開発公社からの残余財産分配金の減などにより財産収入が4億2,806万円(55.6%)、繰越金が2億5,394万円(13.3%)それぞれ減となったことなどにより、24億8,987万円(3.9%)減少し618億1,539万円となっている。依存財源は、基準財政需要額の減少などにより地方交付税が2億4,965万円(1.2%)、臨時福祉給付金給付事業費補助金の減などにより国庫支出金が1億1,365万円(0.5%)それぞれ減となったものの、畜産競争力強化対策事業費補助金の増などにより県支出金が9億1,759万円(11.1%)、小学校大規模改造事業などに係る市債の増加により市債が4億6,460万円(4.1%)、国の消費税収入額の増加により地方消費税交付金が3億8,399万円(6.5%)それぞれ増となったことなどにより、15億5,766万円(2.2%)増加し713億9,681万円となっている。歳入総額では、9億3,221万円(0.7%)減の1,332億1,220万円となっている。
自主財源比率については、前年度の48.0%から1.6ポイント低下し46.4%となっており、庁舎建設基金繰入金の減、県支出金の増が主な要因となっている。
収入未済額については、総額で前年度より6億2,639万円(11.7%)減の47億4,853万円となっており、これから繰越事業に係る国庫支出金や県支出金の収入未済額を除くと、3億465万円(11.2%)減の24億2,377万円となっている。このうち市税の収入未済額は、前年度より3億1,545万円(13.3%)減少し、20億5,541万円となっている。収入率は、前年度と比較し現年課税分が同率の98.8%、滞納繰越分が8.3ポイント上昇し28.4%、全体では0.7ポイント上昇し95.2%となっている。
また、繰越事業分などを除いた税外収入の収入未済額は、前年度より1,080万円(3.0%)増加し、3億6,836万円となっている。収入率は、前年度と比較し現年度分が同率の97.5%、過年度分が0.6ポイント低下し9.3%、合計では2.4ポイント上昇し86.5%となっている。
不納欠損額は、前年度より1,005万円(5.8%)減少し、1億6,267万円となっている。
一般会計の歳出
一般会計の支出済額を前年度と比較すると、15億1,910万円(1.1%)減の1,309億7,698万円となっている。
目的別にみると、増加した主なものとしては、農林水産業費が河辺たまごの郷畜産クラスター事業費の増加などにより8億8,385万円(38.7%)増の31億6,589万円、災害復旧費が事業費の増加により3億8,462万円(148.6%)増の6億4,337万円、商工費が中小企業金融対策事業費の増加などに伴い2億1,053万円(3.1%)増の69億6,962万円となっている。
一方、減少した主なものとしては、土木費が土地区画整理会計繰出金や除排雪関係経費の減少などにより26億3,321万円(15.5%)減の143億1,402万円、総務費が庁舎建設事業費の減少などにより4億8,367万円(2.5%)減の188億6,617万円、公債費が過去の大規模事業に係る市債の償還終了などにより1億8,114万円(1.3%)減の136億9,083万円となっている。
次に、性質別にみると、消費的経費は、維持補修費が8億8,719万円(27.1%)減少したものの、人件費が9億7,781万円(4.6%)増の221億407万円、補助費等が4億4,288万円(3.3%)増の140億2,233万円となったことなどから、全体では5億4,608万円(0.6%)増の863億7,742万円となっている。投資的経費は、普通建設事業費の単独分が7億642万円(10.9%)減の57億9,158万円となったものの、補助分が5億7,859万円(10.3%)増の61億9,851万円で、災害復旧事業費などを含めた全体では2億5,168万円(2.0%)増の127億9,442万円となっている。また、その他の経費は、繰出金が9億5,064万円(9.7%)減の88億130万円となったことなどから、全体では23億1,686万円(6.8%)減の318億515万円となっている。この結果、歳出全体に占める構成比率については、消費的経費が1.2ポイント上昇し65.9%、投資的経費が0.4ポイント上昇し9.8%、その他の経費が1.6ポイント低下し24.3%となった。
不用額は、39億2,329万円となっており、前年度と比較して7,831万円(2.0%)減少している。また、予算現額1,401億4,391万円に対する割合である不用率は、2.8%となっており、近年は2%台で推移している。
特別会計
特別会計については、平成29年度から学校給食費の公会計化に伴い新たに学校給食費会計が設置されたことから13会計となっている。決算総額は、歳入が前年度より13億8,887万円(1.9%)増の763億1,827万円、歳出が15億2,479万円(2.1%)増の740億3,796万円となっている。
この結果、形式収支、実質収支ともに22億8,031万円となり、前年度より形式収支、実質収支ともに1億3,592万円(5.6%)減少している。
一般会計からの繰入金については、廃棄物発電会計、病院事業債管理会計を除く11会計で、総額で88億130万円の繰入れを受けており、前年度と比較して9億5,064万円(9.7%)減少している。減少額の大きいものとしては、土地区画整理会計で10億392万円(54.6%)、国民健康保険事業会計で7,428万円(2.9%)、市営墓地会計で4,822万円(56.9%)などとなっている。
また、繰入金の総額は、11会計の歳入総額752億505万円の11.7%を占めており、収入済額に対する繰入金の割合が特に高いのは市有林会計で、収入済額1億4,654万円のうち1億2,339万円(84.2%)、大森山動物園会計で収入済額5億5,251万円のうち4億4,615万円(80.7%)となっている。
収入未済額については、総額で41億4,309万円であるが、これから繰越事業に係る国庫支出金などの収入未済額を除くと、前年度より1億3,273万円(4.2%)減少し、30億3,479万円となっている。
このうち最も収入未済額が多額となっているのは国民健康保険事業会計で、前年度と比較して1億2,701万円(4.4%)減の27億5,860万円である。次いで、介護保険事業会計の2億881万円(前年度比478万円、2.2%減)、母子父子寡婦福祉資金貸付事業会計の3,649万円(同122万円、3.2%減)、後期高齢者医療事業会計の3,028万円(同14万円、0.5%減)などとなっている。
不用額は、19億6,434万円となっており、前年度と比較して6,489万円(3.2%)減少している。また、予算現額771億541万円に対する割合である不用率は、2.5%となっており、近年は1.5%から2.7%の中で推移している。
むすび
平成29年度、本市では7月と8月の2回にわたり前線を伴った低気圧の影響で大雨に見舞われ、特に7月には秋田空港で24時間降水量が観測史上最大に達するなど記録的な大雨となり、人的被害はなかったものの市民生活や経済活動に大きな影響を及ぼした年であった。
市政運営においては、28年度から32年度までを計画期間とした第13次秋田市総合計画「新・県都『あきた』成長プラン」をはじめとした各種プランに基づき、人口減少対策を喫緊の最重要課題と捉え首都圏移住促進事業などに取り組んだほか、泉・外旭川新駅(仮称)等整備事業、県・市連携文化施設整備事業などの事業が本格化した。
このような中、平成29年度の本市決算をみると、一般会計の歳入については、市税などが増となったものの、繰入金などの減により前年度と比較して減少している。また、自主財源比率は前年度と比較して低下し、50%を割り込んでいる状況が数年続いている。
一方、歳出については、補助費や災害復旧費などが増となったものの、繰出金などの減により前年度と比較して減少した。
実質収支は前年度と同程度の黒字となり、単年度収支は僅かに黒字となった。
また、実質単年度収支は、繰上償還額が前年度より上回ったものの、基金取崩額が多額となったことから赤字となった。
今後の見通しについて、本市では、急激な人口減少局面に入りつつあり、年少・生産年齢人口の減少と老年人口の増加が推測されている。これにより、長期的には生産年齢人口の減少に伴う個人市民税や法人市民税などの減収、人口減少や合併算定替の終了による地方交付税の減少が見込まれ、歳入は減少傾向が続くものと予想される。
また、歳出面においては、老年人口の増加により医療や介護などの社会保障関係経費の増大が見込まれるうえ、本市が保有する公共建築物の4分の3程度が老朽化の目安である建築後30年を経過するなど、今後、改修や更新に係る経費の増嵩が予想される。
こうした中、市民生活に必要なサービス水準を保ちつつ、新たな市民ニーズに的確に対応するため、「新・県都『あきた』成長プラン」に位置づけられた施策や成長戦略事業などを推進し、本市が持続・安定的に発展していくためには、主要2基金(財政調整基金および減債基金)の所要残高を確保しながら歳入規模に見合った歳出構造を堅持する必要がある。
そのため、「新・県都『あきた』改革プラン」に基づく行財政改革を着実に実施・展開していくとともに、今年度策定している平成31年度からの新たな行財政改革にも取り組むことが肝要である。
また、施設の改修や更新にあたっては、引き続き「秋田市公共施設等総合管理計画」における公共施設等マネジメント方針にしたがい、施設の長寿命化や集約、複合化などの検討を踏まえながら個別施設計画の策定や見直しに取り組み、施設保有量の見直しや再編を進め、将来の財政負担の軽減を図る必要がある。
不用額について、生じた背景や原因には、予算の経済的、効率的な執行や経費の節約によるもの、予見し難い事情によるもの、予算の見積もりや想定が実情と合っていなかったものなどがある。予算作成段階での予測困難性はあるにせよ、厳しい財政状況の中、毎年多額の市債を発行している現状においては、予算の見積もりが可能な限り精緻になされ、適切に執行されていく必要がある。不用額の多寡はもとより、毎年度一定の割合で発生していることを踏まえ、発生した状況や理由を的確に把握した上で分析し、問題点や改善すべき点を見出していくことが重要であり、それらを将来の予算編成や予算執行に活かしていくことを求めるものである。
市債について、過去に借り入れした大規模事業に係る市債の償還が終了したことなどにより臨時財政対策債を含む一般会計の平成29年度末現在高は、約1,382億円となっており前年度末と比較して減少しているが、翌年度の一般会計当初予算総額(1,277億円)を上回る状況も続いている。公債費負担比率や実質公債費比率は改善しているものの、類似都市との比較では良好な状況とはいえないことから、市債の償還が将来世代にとって過度な負担とならないように市債の発行を可能な限り抑制し、繰上償還による利子の軽減も行いつつ市債残高を縮減していく必要がある。
未収金対策について、市税の収入未済額は減少しているものの、その額は依然として多額であることから、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じきめ細かい納入指導を行うなど、その解消に鋭意努められたい。また、不納欠損処分に当たっては、十分な調査の上、慎重かつ適正に対処されたい。
特別会計については、廃棄物発電会計、病院事業債管理会計を除く11会計で一般会計からの繰入れを受けており、前年度と比較して減少しているものの、依然として歳入総額の1割を超える額を占めている。特に、市有林会計と大森山動物園会計ではそれぞれの歳入額のうち8割を超える額となっている。
特別会計は、一般会計とは区分して特定の歳入をもって特定の歳出に充てるものであることから、さまざまな手法により自己収入の増加を図るとともにさらなる経費節減に努め、一般会計からの繰入金は必要最小限にとどめるよう求めるものである。
収入未済額については、全体としては減少しているものの依然として多額となっていることから、負担の公平性を確保する観点から、その解消に鋭意努められたい。また、不納欠損処分に当たっても、慎重かつ適正に対処されたい。
内部統制については、今後国が作成する内部統制ガイドラインや本市が平成23年に独自に定めた「今後の内部統制に関する取組方針」を踏まえ、必要な体制を整備されたい。
終わりに、職員一人ひとりにおいては、担っている役割と責務を再認識した上で、コンプライアンスを徹底した適正かつ公正な事務執行に精励し、ワーク・ライフ・バランスにも留意するとともに、選択と集中による経営資源の最適配分を図りながら将来にわたり持続可能な行財政運営を堅持し、次の世代に引き継ぐことができる元気な秋田市づくりに邁進することを切望するものである。
PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。
よりよいウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。
このページに関するお問い合わせ
秋田市監査委員事務局
〒010-8560 秋田市山王一丁目1番1号 本庁舎6階
電話:018-888-5791 ファクス:018-888-5792
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。