平成29年度公営企業会計決算審査意見(概要)
審査の対象
平成29年度秋田市水道事業会計
平成29年度秋田市下水道事業会計
平成29年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間
平成30年6月15日から平成30年7月31日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の財政状態および経営成績を適正に表示しているか否かを審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉に寄与しているかどうかを審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続等によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の平成30年3月31日現在の財政状態および同日をもって終わる事業年度の経営成績を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、おおむね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
平成29年度の給水状況は、前年度と比較して、給水世帯数が253世帯増の134,724世帯、給水人口が2,790人減の306,172人となり、普及率は前年度と同率の99.4%となっている。また、年間有収水量は313,836立方メートル減の32,866,905立方メートル、有収率は0.4ポイント低下し92.2%となっている。
次に、建設改良工事の実施状況は、配水管整備事業として仁井田、上北手地区などにおいて施工延長25,574.9メートルの配水管布設、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として竹ノ花送配水管整備工事、緊急貯水槽整備工事等を実施している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、給水収益の減などにより営業収益が7,380万円(1.1%)の減少、他会計補助金の減などにより営業外収益が152万円(0.2%)の減少となっている。これにより総収益は7,532万円(1.0%)減の71億4,628万円となっている。
一方、費用については、給水費の増などにより営業費用が211万円(0.0%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が3,020万円(7.2%)の減少、固定資産売却損の増などにより特別損失が12万円(87.1%)の増加となっている。これにより総費用は2,797万円(0.5%)減の58億5,505万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して4,735万円(3.5%)減の12億9,123万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、ダム使用権の減などにより固定資産が9,767万円(0.2%)減少したものの、現金・預金が増となったことなどにより流動資産が12億8,199万円(11.4%)増加したことから、合計では
11億8,433万円(1.6%)増加し746億1,164万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が4億3,934万円(1.7%)減少したことなどから、合計では2億5,500万円(0.6%)減少し429億190万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが30億8,589万円の資金増加、投資活動によるものが16億4,918万円の資金減少、財務活動によるものが2億8,839万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して11億4,832万円増加し115億171万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率および現金預金比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている。
むすび
収益については、根幹をなす給水収益が、前年度に引き続き僅かに減収となったことから、総収益も減収となった。費用では、営業費用が前年度より僅かに増加したものの、営業外費用が減少したことなどから、総費用も減少した。その結果、29年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの、黒字額は減少した。
こうした中、収入については、一般家庭における節水意識の定着や節水器具の普及に加え、本市の人口減少に伴い給水人口が年々減少していることなどにより、今後も給水収益の増加は見込めない状況にあり、中長期的に減収となることは避けられない見通しとなっていることから、有収率や料金収納率の向上による収益の確保に努めることが必要である。また、支出については、老朽化した施設の維持管理や更新に加え、浄水・配水施設の耐震化などに多くの費用が見込まれることから、秋田市公共施設等総合管理計画や秋田市上下水道事業基本計画に基づき、将来の給水量の見通しにあわせた施設規模の適正化や施設の廃止などを積極的に行う必要がある。
特に、本市の主力浄水場である仁井田浄水場の更新については、本年6月に基本計画素案が示され、平成34年度から約5年間の設計・工事費が約190億円、浄水場本稼働後50年間の維持管理経費が約351億円と、多額の事業費が見込まれている。本浄水場の更新にあたっては、後年度の負担が過大とならないよう本市の将来人口などを踏まえた適正な規模の整備と効率的な施設運営に努められたい。
また、近年、全国各地で地震や豪雨などの大規模災害により上下水道施設が被災し、広範囲の断水など市民生活に重大な支障をきたした事例が見られ、本市においても、平成29年7月の豪雨災害では約800戸において断減水が発生している。今後も引き続き施設および管路の耐震化や供給システムの強化などの災害対策を進められたい。
なお、給水収益等における未収金については、依然として多額であることから、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、その解消に鋭意努力されたい。
下水道事業会計
業務実績
平成29年度の普及状況は、前年度と比較して、処理区域内人口が2,060人減の289,594人、水洗化人口が838人減の258,835人となっている。また、下水道普及率は0.3ポイント上昇し93.3%、水洗化率は0.4ポイント上昇し89.4%となっている。
次に、建設改良工事の実施状況は、浸水対策として千秋、手形地区などの雨水管を整備したほか、市内各地区で汚水管の面整備などを行い、総延長6,178.4メートルの管渠を布設している。また、処理場建設事業として八橋下水道終末処理場の本館電気室空調設備改修工事を実施している。特定環境保全公共下水道事業では太平地区などに汚水管7,216.6メートルを布設している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、下水道使用料の減などにより営業収益が2,156万円(0.3%)の減少、他会計補助金の減などにより営業外収益が4,948万円(1.5%)の減少、退職給付引当金戻入の増などにより特別利益が3,942万円(206.4%)の増加となっている。これにより総収益は3,162万円(0.3%)減の104億3,588万円となっている。
一方、費用については、管渠費の減などにより営業費用が150万円(0.0%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が1億1,102万円(8.0%)の減少、減損損失の減などにより特別損失が3,199万円(99.8%)の減少となっている。これにより総費用は1億4,451万円(1.5%)減の93億1,308万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して1億1,289万円(11.2%)増の11億2,280万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、現金・預金が増となったことなどにより流動資産が9億1,172万円(18.6%)増加したものの、機械及び装置の減などにより固定資産が10億5,533万円(0.6%)減少したことから、合計では1億4,360万円(0.1%)減少し1,725億2,668万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が22億6,543万円(3.3%)、長期前受金の収益化により繰延収益が4億4,995万円(0.8%)それぞれ減少したことなどから、合計では21億9,740万円(1.6%)減少し1,314億580万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが41億8,230万円の資金増加、投資活動によるものが23億4,198万円の資金減少、財務活動によるものが11億3,314万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して7億717万円増加し48億6,140万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率および現金預金比率がいずれも好転しており、現金預金比率は良好な数値を保っている。
むすび
収益については、特別利益が増加したものの、根幹をなす下水道使用料が僅かに減収となったことに加え他会計補助金が減少したことなどから、総収益は減収となった。費用については、営業費用は前年度とほぼ同額となったものの営業外費用、特別損失が減少したことから、総費用も減少した。その結果、29年度損益は前年度に引き続き黒字となり、黒字額は増加した。
こうした中、収入については、一般家庭における節水意識の定着や節水器具の普及に加え、本市の人口減少に伴い水洗化人口も減少傾向となることが予測されるため、今後も下水道使用料の増収は見込めない状況となっていることから、使用料収納率の向上による収益の確保に努めることが必要である。また、支出については、平成32年度の八橋下水道終末処理場と県秋田臨海処理センターの機能統合により維持管理経費などの経費縮減が見込まれるものの、老朽化した施設・管渠の維持管理や更新に加え、耐震化に多くの費用が見込まれることから、秋田市公共施設等総合管理計画や秋田市上下水道事業基本計画に基づき、施設の統廃合などを積極的に行うことにより、維持管理コストの縮減を図るなど、引き続き経営基盤の強化に努められたい。
また、近年、全国各地で地震や豪雨などの大規模災害により上下水道施設が被災し、浸水被害など市民生活に重大な支障をきたした事例が発生していることから、今後も引き続き施設および管路の耐震化や浸水対策の推進などの災害対策を進められたい。
なお、下水道使用料等の未収金については、負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、その解消に鋭意努力されたい。
農業集落排水事業会計
業務実績
平成29年度の普及状況は、前年度と比較して処理区域内人口が232人減の10,045人、水洗化人口が174人減の9,590人となっている。また、普及率は前年度と同率の3.3%、水洗化率は0.5ポイント上昇の95.5%となっている。
次に、建設改良工事の実施状況は、下新城南部地区処理施設の非常用エンジンポンプ改修工事などを実施している。また、個別排水処理施設建設事業として河辺岩見地区などにおいて、4基の浄化槽を設置している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、農業集落排水施設使用料の減などにより営業収益が274万円(2.0%)の減少、他会計補助金や長期前受金戻入の減などにより営業外収益が7,117万円(10.3%)の減少、退職給付引当金戻入の減などにより特別利益が1,489万円(皆減)の減少となっている。これにより総収益は8,881万円(10.5%)減の7億5,440万円となっている。
一方、費用については、資産減耗費の減などにより営業費用が5,532万円(7.8%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が739万円(8.3%)の減少、その他特別損失の減により特別損失が1,650万円(99.0%)の減となっている。これにより総費用は7,922万円(9.8%)減の7億3,161万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して959万円(29.6%)減の2,279万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度と比較して1,017万円(4.8%)減の2億46万円となっている。
財政状態
資産については、前年度と比較して、構築物の減などにより固定資産が4億3,330万円(3.6%)減少したことなどから、合計では3億9,978万円(3.2%)減少し121億9,396万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が2億9,275万円(7.7%)、長期前受金の収益化により繰延収益が2億3,739万円(4.3%)それぞれ減少したことから、合計では5億2,406万円(5.4%)減少し91億3,252万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億3,594万円の資金増加、投資活動によるものが1,832万円の資金減少、財務活動によるものが1億9,340万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して2,421万円増加し6億2,160万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率および現金預金比率がいずれも好転しており、流動比率を除き、良好な数値を保っている。
むすび
収益については、処理区域内の人口減少などにより農業集落排水施設使用料が減収となったことに加え、営業外収益が減となったことなどから、総収益は減収となった。費用においては、営業費用、営業外費用がそれぞれ減となったことにより、総費用も減少した。その結果、29年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの、黒字額は減少した。
今後、これまで整備した処理区域を公共下水道へ接続する計画としていることから、利用者の減により使用料は年々減少する見通しとなっており、支出についても、管路の維持管理が下水道事業会計に移行することや処理場の統廃合などに伴い維持管理経費が縮減するため、事業全体の会計規模が縮小することが予測される。
今後の経営においては、事務事業の見直しなどにより一層の業務効率化に努めるとともに、秋田市公共施設等総合管理計画や秋田市上下水道事業基本計画に基づき、処理場の統廃合や公共下水道への接続などを着実に進め、維持管理コストの縮減を図るなど、引き続き経営基盤の強化に努められたい。
また、農業集落排水事業においては、汚水処理原価が下水道事業に比べ高額となっているものの、利用者の負担を考慮し、施設使用料を下水道使用料と同水準にしているため、不足する財源を一般会計が補てんしている。
このような基準外の繰入については、着実に縮減するなど、一般会計のさらなる負担軽減に努められたい。
なお、施設使用料等の未収金については、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、その解消に鋭意努力されたい。
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