IFA グレッグ・ショー氏と秋田市エイジフレンドリーシティ行動計画作業部会との座談会
エイジフレンドリーシティ(高齢者にやさしい都市)を推進するため、来秋した国際高齢者団体連盟(IFA)国際事業部部長のグレッグ・ショー氏が、秋田市エイジフレンドリーシティ行動計画作業部会参加者と座談会を行いました。
座談会概要
日時
平成24年11月11日(日曜日)14時00分~16時00分
会場
民俗芸能伝承館
内容
- 福祉保健部長あいさつ
- 市担当者から作業部会について報告
- グレッグ氏と作業部会参加者との意見交換、質疑応答
グレッグ氏からのコメント
- これから秋田市がエイジフレンドリーシティの行動計画を策定するにあたり、みなさんが計画の策定に参加することは非常に重要である。
- 行動計画は、達成可能、実現可能なものである必要がある。
- 行動計画に行政ができることだけを盛り込むのは間違いであり、行政、民間、市民のそれぞれができること、この三つの要素で構成される必要がある。
質疑応答、意見交換
質問1.エイジフレンドリーレストランの取り組みについて
アイルランドではエイジフレンドリーレストランの取組があるそうだが、高齢者が食べきれる量を提供するといった工夫はされているか。
回答1.アイルランドのキルケニーというところで、エイジフレンドリーレストランガイドを出している。
残念ながら、食事の量についての規定があるかどうかは分からない。情報を取り寄せて、ぜひ後日秋田市に提供したい。
質問2.エイジフレンドリーシティの取組におけるソフト面の強化について
エイジフレンドリーシティのリーフレットに掲載されている秋田駅周辺の事例は、ほとんどが施設などのハード面についてである。
エイジフレンドリーシティの取組として、ハード面だけでなく、高齢者の心が癒やされ、高齢者の活力が生み出されるようなソフト面の施策がより強調されることを期待している。
回答2.確かに、高齢者が社会に積極的に参加できる政策や事業を推進する必要がある。
例えば、日本では老人クラブがあるが、会員数が減少していると聞いて、老人クラブの運営にもビジネス的な観点・視点を入れて取り組む必要があると感じた。
高齢者がサービスを求める場合、行政よりも民間部門がこのニーズに応えられるような仕組みを作るべきである。
質問3.エイジフレンドリービジネス、NPO活動について
「ビジネス」というキーワードが出てきたが、自分が携わっている特定非営利活動(NPO活動)はボランティアというイメージが強く、ビジネスという観点が入りにくい分野。
海外で、高齢者が遠く離れている家族とコミュニケーションができるよう、スカイプ(インターネット電話)の講座を開いたという事例が紹介されたが、ビジネスとして取り上げられたのは、やはり継続性の観点が強いからなのか。
回答3.NPOとはNon Profit Organization の略であり、営利という意味、利益を追求しないということだ。
しかし、利益がなければさまざまな事業を展開することは難しくなる。ビジネスが市場のニーズに応えることができなければビジネスとして失敗だ。
同じくNPOも消費者のニーズに応えることができなければ失敗に終わってしまう。
行政に依存する形でNPOが継続できた時代は既に終わってしまった。
何を言いたいかというと、NPOの活動の中にもイノベーション=革新を取り込む必要があるということだ。
想像力のある人間、そしてリーダーとなれる人間がNPOの中に必要なのだ。
質問4.行動計画を策定し実行していく上でのエンジン、核となる要素について
NPO代表者、商店主、高齢者、地域住民がうまく繋がり、行動計画を策定し、実施していくためには何が必要か。今後作業部会を進めていく上でのアドバスをいただきたい。
回答4.大変難しい質問だが、先ほどのレストランガイドを例にすると、これはレストランのオーナー達が積極的に関わらないと実現できない取組だ。
はじめは数店からスタートし、徐々に数十店まで拡大したものだ。
この取組の特徴は、実に多くの高齢者がこの情報にアクセスすることができたという点だ。
そしてこういった取組はマーケティングを正確に行わないと成功はしない。
質問5.エイジフレンドリーシティの普及について
秋田市でエイジフレンドリーシティを普及させようとしているが、なかなか難しい。
むしろ、全国的な普及やPRを行った方が、より簡単に秋田市内にも浸透するではないだろうかという気もしている。
例えば新たに介護ビジネスも参入している企業と提携して、エイジフレンドリーシティを普及していくことなども考えられる。
エイジフレンドリーシティと言うことが広まるのであれば、秋田市が主導して、そのような案を実践していってもよい気がするが、それについて意見を聞きたい。
回答5.秋田市だけがエイジフレンドリーシティという言葉を広げる役割を担うべきとは考えない。
市のみならず皆さんが、まずはエイジフレンドリーシティの理念を伝えていただきたい。
更に、高齢者、介護に関与するあらゆる企業、NPO、団体に対してエイジフレンドリーシティの理念を広げることを考えていくべきである。
エイジフレンドリーシティという言葉は言い方を変えると「常識」ということもできる。
秋田市からの、エイジフレンドリーシティの推進という提案に答えることのできない企業や団体はチャンスを失うということだ。
だから、高齢者ビジネス等に関心がある企業や団体がいれば、秋田市はエイジフレンドリーシティの実現に関与してもらうことを考えるべきである。
市のホームページからの情報発信、エイジフレンドリーな取組を実践している企業やNPOなどとのリンク、企業やNPOホームページからの秋田市の取組紹介などを積極的に行ってほしい。
秋田市が単独で推進するのではなく、さまざまな分野でパートナーを見つけて連携することが効果的である。
質問6.老人クラブの会員数増加のための取組について
ポイントカード制を導入してはどうか。例えば、イベントに参加するごとにポイントが付与され、貯まったポイントで温泉施設の割引券などをもらえるといったシステムはどうか。
回答6.確かに何らかの活動に対してポイントを付与するというシステムは多くの国で行われており、英語で「タイムバンク」と呼ばれ、ボランティア活動を行った際、その活動に対してポイントが付与される事例がある。
秋田市では介護支援ボランティア制度があり、高齢者のボランティア活動にポイントが付与され、最大で年間5,000円が交付されると聞いている。
老人クラブについては、なぜ老人クラブの会員数が減少しているのかを考えなければならないだろう。
老人クラブがするべきことで、できていないことは何なのか、検証する必要があるだろう。
その場合には、老人クラブの会員だけでなく、老人クラブの会員でない人に聞くべきである。
私は老人クラブのメンバーがイベント等に参加するごとにポイントを付与することで、会員数が増加するという考え方には賛成はしない。
老人クラブメンバーが、クラブ外で積極的にボランティア活動を行い、ポイントを付与されることには賛成だ。
しかし、あくまでも社会貢献するという動機があるべきで、ただ単にポイントが付与されるからという理由であるべきではない。
質問7.継続的な活動を行うための市民活動の在り方、行政の関わり方について
ワークショップに参加し、毎回刺激を受けているが、現実にはまだバーチャルな計画段階。
エイジフレンドリーの取組は、やはり最初は行政が主導して行うものだと思うが、行政主導が強すぎると、行政が手を引いたときにボランティア団体などの市民団体、民間の火が消えてしまうことがある。
そうならないためには、最初は行政がリードし、次第に市民が自立していき、行政はサポート側に回るという形が必要だと思う。
回答7.賛成だ。5年後も行政が主導する形であるべきではない。
しかし現実的には、秋田市がWHOのグローバルネットワークに参加し、市長の強い主導の元、行動計画を作成し実行することになっている。
私の考えとしては、この行動計画が行政だけでなく、皆さんのような市民、そして民間、行政の3者のとり組みが広範に取り入れられたものであれば大変すばらしいと考えている。
質問8.世代間交流・連携について
各国のエイジフレンドリーシティの取組事例の中で、世代間交流・連携を推進している事例はあるか。
回答8.エイジフレンドリーシティを推進するためには若年層も取り込んでいく必要がある。
これは、高齢者に対する敬意を認識すること、65歳以上になってもまだまだ社会に貢献することができるということを認識してもらうためである。
例えば、高齢者が学校現場で障がいのある生徒のサポートをする、高齢者虐待に関するガイドを若者向けに作成し配布する、高齢者に若者がパソコン操作を教える教室を開催するなどの例がある。
質問9.市民個々人ができることについて
昨日の講演や本日のワークショップに参加し、これまでエイジフレンドリーを大きく考えていたが、、いろいろ自分なりに気がついたことがある。
家族や周囲の人に話を聞くと、屋外に椅子がほしいという声がある。講演でグレッグさんが、街中に椅子を増やすと高齢者にとってやさしいという話を聞き同じだなと思った。
そして、個人の力でもなにか働きかけて、できることがあるのではと感じたところだ。
回答9.自分にも何かできることがあると感じてもらうことが何よりも嬉しい。そして、今日ここに来て下さったことに感謝している。
質問10.
エイジフレンドリーシティとスポーツ振興について秋田市のスポーツ推進員として、さまざまな世代の方にスポーツを楽しんでいただくために活動をしている。
現在、小学生から高齢者まで楽しく簡単にできるフロアカーリングの推進をしている。
今回、グレッグ氏のお話を伺って、新たな知識を得ることができて、励みになった。
回答10.スポーツに関してわたしからもぜひコメントをしたい。
退職をする退職者というレッテルが貼られ、アクティブな活動は何もできなくなると信じている人がいるが、これは間違いだ。
私が住んでいる市のマラソン大会では、2011年大会の最高年齢のランナーは65歳からマラソンをはじめた人で、ちょうど大会の5日前に100歳の誕生日を迎えた。
また、私が所属するIFAの役員のヘレン・へムリンは、90歳だ。
6年前、シンガポールでの会議に出席する際、彼女は「2週間前に出発して、カンボジアでトレッキングしてから会議に参加する。」といって実行した。
先日一緒にゴルフをした人は、「スコアが年齢を上回ったらゴルフをやめる」と言っていたが、パーが72のコースで結果は85だった。
本人は96歳なので、まだ11ショット打っても大丈夫ということになる。
高齢者というと活動的ではない、社会参加はできないという間違った認識が、まだ蔓延している。
高齢者がより活動的になるためにどのようなスポーツを推進していけばよいのか、ということをぜひ考えていただきたい。
座談会終了後に、芸能伝承館で秋田の竿燈を鑑賞
竿燈にチャレンジするグレッグ・ショー氏
講師について
グレッグ・ショー氏
カナダ・トロントに本部を置くIFA(国際高齢者団体連盟)国際事業部部長。
長年に渡り、オーストラリア政府で保健行政を担当し、ケアサービス制度の充実に努めた。
また、オーストラリア北部の農村地区に住む高齢者や先住民のためのケアホーム設立の任務に従事。
最近では、国連諮問資格を持つIFAの代表者として、アフリカの人権問題・ヘルスケア構築・高齢者虐待等の問題に積極的に取り組んでいる。
また、人口の高齢化に伴う諸問題について、行政や民間会社に助言・援助を行っている。
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このページに関するお問い合わせ
秋田市福祉保健部 長寿福祉課 エイジフレンドリーシティ推進担当
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