令和2年度公営企業会計決算審査意見
審査の対象
令和2年度秋田市水道事業会計
令和2年度秋田市下水道事業会計
令和2年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間および場所
令和3年6月14日から同年7月30日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の経営成績および財政状態を適正に表示しているかについて審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉に寄与しているかどうかを審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の令和3年3月31日をもって終わる事業年度の経営成績および同日現在の財政状態を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、概ね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
令和2年度の給水状況は、前年度と比較して、給水世帯数が929世帯増の136,803世帯、給水人口が1,992人減の300,173人、普及率が同率の99.4%となっている。また、年間有収水量は14,983㎥増の32,231,539㎥、有収率は同率の91.2%となっている。
建設改良工事については、配水管整備事業として横森、寺内地区などにおいて施工延長25,607.8mの配水管布設工事、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として大町・旭南ブロック測定局流量計設置工事などを実施している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、給水収益の減などにより営業収益が7,682万円(1.2%)の減少、雑収益の減などにより営業外収益が1,174万円(1.8%)の減少となっている。これにより総収益は8,856万円(1.2%)減の70億1,856万円となっている。
一方、費用については、総係費の減などにより営業費用が1億6,511万円(2.8%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が2,659万円(7.7%)の減少、減損損失の減などにより特別損失が442万円(92.4%)の減少となっている。これにより総費用は1億9,612万円(3.1%)減の60億9,347万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して1億756万円(13.2%)増の9億2,509万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、現金・預金の増などにより流動資産が1億2,760万円(1.0%)増加したものの、ダム使用権の減などにより固定資産が2億1,261万円(0.3%)減少したことから、合計では8,502万円(0.1%)減少し751億8,057万円となっている。
負債については、企業債の減などにより固定負債が5億2,133万円(2.2%)減少したほか、未払金の減などにより流動負債が4億1,010万円(13.4%)減少したことなどから、合計では11億498万円(2.7%)減少し404億8,485万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが28億6,711万円の資金増加、投資活動によるものが23億4,577万円の資金減少、財務活動によるものが3億4,692万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して1億7,442万円増加し123億8,325万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている。
意見
収益は、前年度と比較して、営業収益の根幹をなす給水収益が減少したほか、営業外収益も減少したことから総収益は減少した。一方、費用は、営業費用、営業外費用および特別損失が減少したことから総費用は減少した。この結果、2年度損益は黒字となった。
今後、本市の給水人口の減少に伴い給水収益は減少する一方で、老朽施設の更新等による費用の増加が見込まれる中、将来にわたり良質で安定的な水道サービスを提供していくためには、料金収納率の向上など収益を確保する取組を継続するとともに、漏水調査等による有収率の向上や施設を給水人口に見合った適正な規模とすることなどにより費用を抑制していく必要がある。
こうしたことから、「第3期・県都『あきた』改革プラン(注:1)」や「秋田市上下水道事業基本計画(注:2)」に基づき、今後の給水人口を見据えた施設規模の適正化や、老朽施設の更新を計画的に実施し事業費を平準化するなどの取組を着実に実施されたい。
特に、事業手法が決定した仁井田浄水場の更新事業については、事業のさらなる具体的精査を進め、将来の水道事業における経営効率化に資するよう、水需要を適切に予測し施設規模の適正化を図られたい。また、当該事業は多額の費用が見込まれており、今後の水道事業会計の財政計画等に大きな影響を及ぼすため、本事業に係る費用等を見込んでいない「秋田市上下水道事業基本計画」の見直しを図る必要がある。
なお、地震などによる大規模災害に対応するため、引き続き施設および管路の耐震化や供給システムの強化などの災害対策を進めるとともに、給水収益等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から新たな発生の防止に努め、債権管理を適切に行いその縮減に努力されたい。
(注:1)および(注:2)の概要については、下段を参照
下水道事業会計
業務実績
令和2年度の普及状況は、前年度と比較して、処理区域内人口が1,161人減の286,261人、水洗化人口が450人減の257,711人となっている。また、下水道普及率は0.3ポイント上昇し94.1%、水洗化率も0.2ポイント上昇し90.0%となっている。
建設改良工事については、管渠建設事業として、浸水対策のため土崎、新屋地区などで雨水管の整備を、下浜地区などで汚水管の面整備などを行い総延長4,996.6mの管渠を布設したほか、山王、手形地区などにおいて5,095.7mの老朽管の改築などを実施している。また、ポンプ場建設事業として、土崎汚水中継ポンプ場耐震補強工事や川口汚水中継ポンプ場汚水ポンプ設備等更新詳細設計業務委託を実施したほか、処理場建設事業として、八橋下水道終末処理場中央監視制御設備工事などを実施している。特定環境保全公共下水道事業では、豊岩地区などに3,106.3mの汚水管を布設している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、下水道使用料の減などにより営業収益が1億1,160万円(1.6%)の減少、長期前受金戻入の増などにより営業外収益が4,947万円(1.5%)の増加、その他特別利益の減などにより特別利益が1,252万円(98.5%)の減少となっている。これにより総収益は7,465万円(0.7%)減の102億9,746万円となっている。
一方、費用については、流域下水道費の増などにより営業費用が8億3,163万円(10.2%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が1億163万円(9.6%)の減少、固定資産売却損の増などにより特別損失が440万円(殆増)の増加となっている。これにより総費用は7億3,440万円(8.0%)増の99億2,934万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して8億905万円(68.7%)減の3億6,813万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、建設仮勘定の減などにより固定資産が14億7,479万円(0.9%)減少したほか、現金・預金の減などにより流動資産が2億6,553万円(4.7%)減少したことから、合計では17億4,032万円(1.0%)減少し1,686億4,073万円となっている。
負債については、未払金の増などにより流動負債が2,044万円(0.3%)増加したものの、企業債の減などにより固定負債が24億361万円(3.8%)減少したことなどから、合計では30億361万円(2.4%)減少し、1,222億4,547万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが37億1,202万円の資金増加、投資活動によるものが26億476万円の資金減少、財務活動によるものが15億7,125万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して4億6,399万円減少し42億2,305万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも悪化している。
意見
収益は、前年度と比較して、営業外収益が増加したものの、営業収益の根幹をなす下水道使用料が減少したことなどにより総収益はわずかに減少した。
一方、費用は、営業外費用が減少したものの、流域下水道の維持管理負担金の値上げや、八橋下水道終末処理場での汚水処理を廃止し県の秋田臨海処理センターでの汚水処理に切替えたことなどに伴う営業費用の増加により、総費用は大幅に増加した。この結果、2年度損益は黒字となったものの、黒字額は前年度と比較して大幅に減少(68.7%)した。
今後、本市の水洗化人口の減少に伴い下水道使用料は減少する一方で、施設および管渠の老朽対策や耐震化に伴う費用の増加が見込まれていることから、使用料収納率や水洗化率の向上等により収益を確保するとともに、「秋田市上下水道事業基本計画(注:2)」および「秋田市公共施設等総合管理計画(注:3)」等に基づき、老朽施設や管渠の更新を計画的に実施し、費用の平準化を図る必要がある。
令和2年度の純利益の減少については、八橋・流域汚水処理機能統合の影響として「秋田市上下水道事業基本計画」の想定するところであるが、令和3年度以降も純利益は低位に推移する見込みとなっていることから、欠損が生じないよう留意されたい。
また、地震や豪雨による大規模災害に対応するため、引き続き施設および管渠の耐震化や浸水対策の推進などの災害対策を進められたい。
なお、下水道使用料等の未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生防止に努めるとともに債権管理を適切に行い、その縮減に努力されたい。
(注:2)から(注:3)の概要については、下段を参照
農業集落排水事業会計
業務実績
令和2年度の普及状況は、前年度と比較して処理区域内人口が332人減の9,156人、水洗化人口が297人減の8,796人となっている。また、普及率は0.1ポイント低下し3.0%、水洗化率は0.3ポイント上昇し96.1%となっている。
建設改良工事については、農業集落排水建設改良事業として雄和新波地内の老朽化したポンプ設備の更新工事を行ったほか、国が施工する雄物川洪水対策工事の支障となる管渠の移設工事などを実施している。また、特定地域生活排水処理施設建設事業として河辺大張野地区などにおいて2基の浄化槽を設置している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、農業集落排水施設使用料の増などにより営業収益が10万円(0.1%)の増加、他会計補助金の増などにより営業外収益が909万円(1.5%)の増加、その他特別利益の減により特別利益が1,571万円(皆減)の減少となっている。これにより総収益は651万円(0.9%)減の7億3,253万円となっている。
一方、費用については、資産減耗費の増などにより営業費用が60万円(0.1%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が481万円(7.0%)の減少となっている。これにより総費用は421万円(0.6%)減の7億1,396万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して230万円(11.0%)減の1,857万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度と比較して2,518万円(11.8%)増の2億3,807万円となっている。
財政状態
負債については、企業債の減などにより固定負債が2億9,266万円(10.0%)減少したほか、長期前受金の収益化などにより繰延収益が1億7,446万円(3.6%)減少したことなどから、合計では4億6,725万円(5.7%)減少し77億757万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億4,332万円の資金増加、投資活動によるものが4,300万円の資金減少、財務活動によるものが1億9,067万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して965万円増加し6億1,492万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている
意見
収益は、前年度と比較して、営業収益の根幹をなす施設使用料がわずかに増加し、営業外収益も増加したものの、特別利益が皆減したことにより総収益は減少した。一方、費用は、営業費用が増加したものの、営業外費用が減少したことにより総費用は減少した。この結果、2年度損益は黒字となったものの、黒字の要因は営業外収益である一般会計からの繰入金である。
本事業は、事業の性質上汚水処理人口が少ないことに加え、本市の中でも人口減少率が大きいと予想されている市の郊外部を処理区域としていることから、将来的に処理水量の減少による使用料の減収が避けられない上、老朽化した施設の更新や維持管理に要する費用の増加が見込まれるため、今後の経営環境はさらに厳しさを増していくものと推測される。
また、本事業の汚水処理原価は下水道事業に比べ高額であるものの、施設使用料を下水道使用料と同水準にして利用者の負担軽減を図っているため、その不足する経費は一般会計が負担している。
こうした状況を踏まえ、今後の経営においては「秋田市上下水道事業基本計画(注:2)」等に基づき、処理施設の統合や公共下水道への接続を着実に実施するとともに、事業の効率化やコストの縮減を図り、一般会計の負担軽減に努められたい。
なお、施設使用料等の未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生の防止に努めるとともに、債権管理を適切に行いその縮減に努力されたい。
(注:1)から(注:3)の計画の概要
(注:1)第3期・県都『あきた』改革プラン(第7次秋田市行政改革大綱)
人口減少・少子高齢社会の進行に適応した持続可能な行財政運営の実現に向け、令和元年度から令和4年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革や成果指標を平成31年1月に定めたもの。
上下水道事業については、仁井田浄水場の更新に当たり官民連携手法の活用を検討することや、秋田県流域下水道への接続による単独公共下水道の廃止、農業集落排水処理施設の廃止などが改革項目に掲げられている。
(注:2)秋田市上下水道事業基本計画
安定した事業運営のもと、良質な上下水道サービスを提供できる機能を維持、継続するため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする経営の基本方針を平成29年3月に定めたもの。
仁井田浄水場の更新などによる安全な水道水の供給、水道管路の耐震化や下水道管路の改築などによる災害に強い上下水道の構築、施設の統廃合による事業運営の効率化などが定められている。
(注:3)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、将来負担の軽減を図るため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定めたもの。
上下水道事業については、事業計画の策定による施設の維持、民間委託の検討などによる経営の効率化、災害時のライフラインの維持、管路の長寿命化や施設の統廃合などが今後の方向性として定められている。
詳細については、添付ファイル「令和2年度公営企業会計決算審査意見書」でご確認ください。
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