令和3年度公営企業会計決算審査意見
審査の対象
令和3年度秋田市水道事業会計
令和3年度秋田市下水道事業会計
令和3年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間および場所
令和4年6月3日から同年7月29日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の経営成績および財政状態を適正に表示しているかについて審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉の増進に寄与しているかについて審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の令和4年3月31日をもって終わる事業年度の経営成績および同日現在の財政状態を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、概ね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
令和3年度の給水状況は、前年度と比較して、給水世帯数が346世帯増の137,149世帯、給水人口が2,042人増の302,215人、普及率が0.3ポイント上昇し99.7%となっている。また、年間有収水量は234,369㎥減の31,997,170㎥、有収率は0.6ポイント上昇し91.8%となっている。
建設改良工事については、配水管整備事業として土崎および上北手地区などにおいて施工延長20,943.4mの配水管布設工事、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として清水木ポンプ場自家用発電機更新工事などを実施している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、給水収益は減少したもののその他営業収益の増などにより営業収益が3,319万円(0.5%)の増加、長期前受金戻入の増などにより営業外収益が2,026万円(3.1%)の増加、その他特別利益の増などにより特別利益が増加となっている。これにより総収益は1億1,523万円(1.6%)増の71億3,379万円となっている。
一方、費用については、総係費の減などにより営業費用が8,763万円(1.5%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が2,552万円(8.0%)の減少、減損損失の増などにより特別損失が449万円(殆増)の増加となっている。これにより総費用は1億866万円(1.8%)減の59億8,481万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して2億2,389万円(24.2%)増の11億4,898万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、構築物の減などにより固定資産が4億9,139万円(0.8%)減少したものの、現金・預金の増などにより流動資産が7億8,322万円(5.9%)増加したことから、合計では2億9,183万円(0.4%)増加し754億7,240万円となっている。
負債については、企業債の減などにより固定負債が6億4,623万円(2.7%)減少したほか、未払金の減などにより流動負債が6,260万円(2.4%)減少したことなどから、合計では9億3,817万円(2.3%)減少し395億4,669万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが26億3,760万円の資金増加、投資活動によるものが17億1,446万円の資金減少、財務活動によるものが3億1,619万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して6億695万円増加し、129億9,020万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率はいずれも全般的に良好な数値を保っている。
意見
令和3年度の損益については、前年度と比較して、営業収益の根幹をなす給水収益が減少したものの、総係費の減などにより営業費用が減少しており、この結果、黒字となった。
しかしながら、水道事業においては、人口減少に伴う水需要の減少、施設や管路の老朽化に伴う更新需要の増加など、経営環境は今後も厳しさを増すものと予測されることから、将来にわたり良質な水道サービスを安定的に提供していくために、有収率や料金収納率の向上など収益を確保する取組を継続するとともに、水需要の見通しに合わせた施設規模の適正化などにより費用を抑制していく必要があると考える。
このことについては、「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:1)や「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)に基づき事業を実施しているところであるが、適時、取組の成果を評価・検証し、見直しを行い、計画・目標の達成に向け取組を着実に実施されたい。
特に、仁井田浄水場等整備事業については計画されている事業費が多額であることから、経済的・効率的な実施に努められたい。
なお、地震などの大規模災害に対応するため、引き続き計画的に管路等の耐震化や供給システムの強化などの災害対策を進めるとともに、料金収入等における未収金については、債権管理を適切に行い、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点からも新たな発生の防止に意を用い、その縮減に努められたい。
(注:1)および(注:2)の概要については、下段を参照
下水道事業会計
業務実績
令和3年度の普及状況は、前年度と比較して、処理区域内人口が702人減の285,559人、水洗化人口が91人減の257,620人となっている。また、下水道普及率は0.6ポイント上昇し94.7%、水洗化率も0.2ポイント上昇し90.2%となっている。
建設改良工事については、管渠建設事業として、浸水対策のため土崎、新屋地区などで雨水管などの整備を、下浜地区などで汚水管の面整備などを行い総延長4,645.7mの管渠を布設したほか、川尻、八橋地区などにおいて4,221.7mの老朽管の改築などを実施している。また、ポンプ場建設事業として、八橋汚水中継ポンプ場No.1、2雨水沈澱池掻寄機更新工事などを実施した。特定環境保全公共下水道事業では、豊岩、外旭川および雄和戸賀沢地区などに4,386.1mの汚水管を布設している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、他会計負担金の減などにより営業収益が2,693万円(0.4%)の減少、長期前受金戻入の減などにより営業外収益が1億2,500万円(3.7%)の減少、その他特別利益の増などにより特別利益が143万円(730.9%)の増加となっている。これにより総収益は1億5,051万円(1.5%)減の101億4,695万円となっている。
一方、費用については、ポンプ場費の増などにより営業費用が869万円(0.1%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が1億6,534万円(17.2%)の減少、固定資産売却損の減などにより特別損失が461万円(98.0%)の減少となっている。これにより総費用は1億6,126万円(1.6%)減の97億6,808万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して1,075万円(2.9%)増の3億7,887万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、機械及び装置の減などにより固定資産が8億5,780万円(0.5%)減少したほか、前払金の減などにより流動資産が2,184万円(0.4%)減少したことから、合計では8億7,964万円(0.5%)減少し1,677億6,109万円となっている。
負債については、企業債の減などにより固定負債が18億7,196万円(3.1%)減少したほか、長期前受金の収益化などにより繰延収益が4億3,200万円(0.8%)減少したことなどから、合計では24億1,963万円(2.0%)減少し、1,198億2,584万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが41億9,710万円の資金増加、投資活動によるものが29億1,053万円の資金減少、財務活動によるものが11億4,445万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して1億4,212万円増加し43億6,517万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも好転している。
意見
収益については、前年度と比較して、総収益においてわずかに減少している。一方、費用については、令和2年度途中に汚水処理を八橋下水道終末処理場から県の秋田臨海処理センターに切替えたことなどに伴い、営業費用のうち資産減耗費および処理場費などが減少するとともに、支払利息及び企業債取扱諸費の営業外費用も減少しており、この結果、令和3年度損益は黒字となった。
下水道事業においては、本市人口の減少に伴い下水道使用料の収益減少が予測されるなか、施設および管渠の老朽化対策や耐震化等により建設改良費等の増加が見込まれ、経営環境はますます厳しさを増すものと推測される。
このことについては、使用料収納率や水洗化率の向上等により収益を確保するとともに、「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)および「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:3)等に基づき、老朽施設や管渠の更新を計画的に実施し、施設や管渠の維持管理に係る包括的民間業務委託を導入するなど事業運営の一層の効率化に取り組み、経営基盤の強化に努められたい。
また、地震や豪雨などの大規模災害に対応するため、引き続き施設および管渠の耐震化や浸水対策などを推進するほか、有収率については微減が続き、使用料充足率も減少傾向にあることから、管渠更生や修繕など雨天時進入水対策を進め有収率の向上を図られたい。
なお、下水道使用料等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点からも新たな発生の防止に意を用いるとともに、債権管理を適切に行うことで、その縮減に努められたい。
(注:2)および(注:3)の概要については、下段を参照
農業集落排水事業会計
業務実績
令和3年度の普及状況は、前年度と比較して処理区域内人口が1,495人減の7,661人、水洗化人口が1,449人減の7,347人となっている。また、普及率は0.5ポイント低下し2.5%、水洗化率は0.2ポイント低下し95.9%となっている。
建設改良工事については、農業集落排水建設改良事業として、国が施工する雄物川洪水対策工事の支障となる管渠の移設工事を実施した。また、上新城小又字熊入沢地内ほかにおいて、老朽化したポンプ設備の更新工事を実施した。
なお、令和3年度は農業集落排水事業対象処理区のうち、豊岩地域の3処理区について汚水処理施設を廃止のうえ下水道に接続し、会計を下水道事業会計へ引き継いだ。
経営成績
収益については、前年度と比較して、農業集落排水施設使用料の減などにより営業収益が1,099万円(8.6%)減少し、長期前受金戻入の減などにより営業外収益が4,799万円(7.9%)減少したが、特別利益は1,011万円(皆増)の増加となっている。これにより総収益は4,887万円(6.7%)減の6億8,366万円となっている。
一方、費用については、減価償却費の減などにより営業費用が4,544万円(7.0%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が562万円(8.7%)の減少となっている。これにより総費用は5,093万円(7.1%)減の6億6,303万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して206万円(11.1%)増の2,063万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度と比較して376万円(1.6%)減の2億3,431万円となっている。
財政状態
負債については、企業債の減などにより固定負債が3億1,519万円(11.9%)減少したほか、下水道事業会計への引継などにより繰延収益が5億9,517万円(12.6%)減少したことなどから、合計では9億1,237万円(11.8%)減少し67億9,520万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億971万円の資金増加、投資活動によるものが3,144万円の資金増加、財務活動によるものが1億9,879万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して4,236万円増加し6億5,728万円となっている。
なお、主要財務比率は、固定資産対長期資本比率、有形固定資産減価償却率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率において概ね前年度並みであった。
意見
収益については、前年度と比較して、営業収益の根幹をなす施設使用料や長期前受金戻入の減などにより減少した。一方、費用については、減価償却費の減などにより営業費用が減少した。結果的に、令和3年度の損益は黒字となったものの、黒字の要因は営業外収益である一般会計からの繰入金である。
引き続き、本事業は汚水処理の効率化を推進するため、処理区の大部分を順次公共下水道へ接続し農業集落排水施設を廃止するとともに、未接続の隣接する施設については統合を進め事業規模の適正化を図ることとしている。下水道への接続により本事業の収益は減少するが、費用についても、管路等の維持管理が下水道事業会計へ移行し、統合により処理場の維持管理費用が縮減されるなど、本事業全体の会計規模の縮小が想定される。
こうしたことから、今後の経営においては、「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:1)および「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:3)等に基づき、計画・目標の達成に向け取組を着実に実施するとともに、一層の事業の効率化やコストの縮減を図られたい。
なお、施設使用料等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点からも新たな発生の防止に意を用いるとともに、債権管理を適切に行うことで、その縮減に努められたい。
(注:1)から(注:3)の計画の概要
(注:1)第3期・県都『あきた』改革プラン(第7次秋田市行政改革大綱)
人口減少・少子高齢社会の進行に適応した持続可能な行財政運営の実現に向け、令和元年度から令和4年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革や成果指標を平成31年1月に定めたもの。
上下水道事業については、仁井田浄水場の更新に当たり官民連携手法の活用を検討することや、秋田県流域下水道への接続による単独公共下水道の廃止、農業集落排水処理施設の廃止などが改革項目に掲げられている。
(注:2)秋田市上下水道事業基本計画
安定した事業運営のもと、良質な上下水道サービスを提供できる機能を維持、継続するため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする経営の基本方針を平成29年3月に定めたもの。
仁井田浄水場の更新などによる安全な水道水の供給、水道管路の耐震化や下水道管路の改築などによる災害に強い上下水道の構築、施設の統廃合による事業運営の効率化などが定められている。
(注:3)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、将来負担の軽減を図るため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定め、令和4年1月に改訂したもの。
上下水道事業については、人口減少等を踏まえた長期的視点に立った事業計画の進行管理、民間委託の推進などによる経営の効率化、災害時のライフラインの維持、施設規模の適正化や施設の統廃合、再配置の検討などが今後の方向性として定められている。
詳細については、添付ファイル「令和3年度公営企業会計決算審査意見書」でご確認ください。
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