令和4年度公営企業会計決算審査意見
審査の対象
令和4年度秋田市水道事業会計
令和4年度秋田市下水道事業会計
令和4年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間および場所
令和5年6月5日から同年7月28日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の経営成績および財政状態を適正に表示しているかについて審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉の増進に寄与しているかについて審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の令和5年3月31日をもって終わる事業年度の経営成績および同日現在の財政状態を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、おおむね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
令和4年度の給水状況は、前年度に比較して、給水世帯数が424世帯増の137,573世帯、給水人口が2,916人減の299,299人、普及率は前年度と同率の99.7%となっている。また、年間有収水量は557,389㎥減の31,439,781㎥、有収率は0.1ポイント上昇し91.9%となっている。
建設改良工事については、配水管整備事業として新屋、下新城地区などにおいて施工延長25,160.5mの配水管布設工事、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として清水木ポンプ場受電盤等更新工事などを実施している。
経営成績
収益については、前年度に比較して、営業収益が給水収益の減などにより3,437万円(0.5%)の減少、営業外収益が雑収益の増などにより191万円(0.3%)の増加、特別利益がその他特別利益の減などにより6,153万円(99.6%)の減少となっている。これらにより総収益は9,400万円(1.3%)減の70億3,979万円となっている。
一方、費用については、営業費用が原水及び浄水費の増などにより2億815万円(3.7%)の増加、営業外費用が支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより2,577万円(8.8%)の減少、特別損失が減損損失の減などにより424万円(87.3%)の減少となっている。これらにより総費用は1億7,815万円(3.0%)増の61億6,296万円となっている。
この結果、純利益は、前年度に比較して2億7,214万円(23.7%)減の8億7,683万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度に比較して、固定資産が構築物の増などにより4,035万円(0.1%)増加したほか、流動資産が前払金の増などにより3億2,706万円(2.3%)増加したことから、合計では3億6,740万円(0.5%)増加し758億3,981万円となっている。
負債については、固定負債が企業債の減などにより3億530万円(1.3%)減少したほか、繰延収益が長期前受金の収益化等により2億3,039万円(1.7%)減少したことなどから、合計では5億8,475万円(1.5%)減少し389億6,194万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが25億7,277万円の資金増加、投資活動によるものが22億7,153万円の資金減少、財務活動によるものが2億4,049万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度に比較して6,076万円増加し、130億5,096万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度に比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率はいずれも良化している。
意見
前年度に比較して、収益については、営業収益の根幹をなす給水収益が減少し、その他特別利益も減少している。一方、費用については、原水及び浄水費の増などにより営業費用が増加となっている。この結果、令和4年度損益は黒字となったものの、黒字幅は前年度に比して減少している。
水道事業においては、人口減少や節水機器の普及により給水収益が減少していく一方、施設や管路の老朽化に伴う更新需要が増すものと見込まれ、世界的なエネルギー価格の高騰による経費の増加など、経営環境は今後も厳しさを増していくものと予測される。
将来にわたり良質な水道サービスを安定的に提供するためには、有収率や料金収納率の向上など収益を確保する取組を継続するとともに、水需要の見通しに合わせた施設規模の適正化や適切な事業選択などにより費用を抑制する必要がある。
このため、限りある経営資源を効率的に活用し、デジタル技術を適切に導入することにより業務の効率化を図るなど「第8次秋田市行政改革大綱(注:1)」等に基づき事業を実施しているところであるが、適時、取組の成果を評価・検証するとともに見直しを行い、「秋田市上下水道事業基本計画(注:2)」に定める目標の達成に向け取組を着実に実施されたい。
特に、仁井田浄水場等整備事業については、大規模であり整備期間も長期にわたるため、社会経済情勢の変化を的確に把握したうえで経済的かつ効率的な進行管理に努められたい。
また、本市においてもこのたびの豪雨災害により上水道施設が被災し、一部地域において断水など市民生活に重大な支障をきたしたことから、ライフラインである安全な水道水を安定的に供給できるよう、引き続き供給機能の維持・向上を図るための災害時対策を推進されたい。
さらに、料金収入等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から、債権管理を適切に行うとともに、新たな発生の防止にも意を用い、その縮減に努められたい。
(注:1)および(注:2)の概要については、下段を参照
下水道事業会計
業務実績
令和4年度の普及状況は、前年度に比較して、処理区域内人口が1,686人減の283,873人、水洗化人口が578人減の257,042人となっている。また、下水道普及率は0.4ポイント上昇し95.1%、水洗化率も0.3ポイント上昇し90.5%となっている。建設改良工事については、管渠建設事業として、浸水対策のため新屋、手形地区などで雨水管の整備や、各地域で汚水管の面整備等を行い、総延長4,386.0mの管渠を布設したほか、新屋、川元地区などにおいて5,088.7mの老朽管の改築等を実施している。また、ポンプ場建設事業として、新屋汚水中継ポンプ場自家発電設備更新工事などを実施した。特定環境保全公共下水道事業では、下新城、太平地区などに2,261.3mの汚水管を布設している。
経営成績
収益については、前年度に比較して、営業収益が下水道使用料の減などにより1億539万円(1.5%)の減少、営業外収益が他会計補助金の増などにより3,313万円(1.0%)の増加、特別利益が過年度損益修正益の増などにより1億1,982万円(殆増)の増加となっている。これらにより総収益は4,757万円(0.5%)増の101億9,452万円となっている。
一方、費用については、営業費用が資産減耗費の減などにより1億281万円(1.1%)の減少、営業外費用が支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより9,536万円(12.0%)の減少、特別損失が過年度損益修正損の増などにより31万円(329.6%)の増となっている。これらにより総費用は1億9,786万円(2.0%)減の95億7,022万円となっている。
この結果、純利益は、前年度に比較して2億4,543万円(64.8%)増の6億2,430万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度に比較して、固定資産が構築物の減などにより10億7,678万円(0.7%)減少したものの、流動資産が前払金の増などにより3億4,831万円(6.4%)増加したことから、合計では7億2,846万円(0.4%)減少し、1,670億3,263万円となっている。
負債については、固定負債が企業債の減などにより21億2,686万円(3.6%)減少したほか、繰延収益が長期前受金の収益化等により4億105万円(0.7%)減少したことなどから、合計では25億3,932万円(2.1%)減少し、1,172億8,652万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが38億929万円の資金増加、投資活動によるものが20億9,249万円の資金減少、財務活動によるものが14億8,171万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度に比較して2億3,509万円増加し46億26万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度に比較して、使用料収納率は悪化しているが、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも良化している。
意見
前年度に比較して、収益については、営業費用のうち経営の根幹をなす下水道使用料が減少したものの、過年度損益修正益の増などにより特別収益が増加している。一方、費用については、資産減耗費の減などにより営業費用が減少するとともに、支払利息及び企業債取扱諸費の減により営業外費用も減少しており、この結果、令和4年度損益は黒字となった。
下水道事業においては、人口減少や節水機器の普及により下水道使用料が減少していく一方、施設および管渠の老朽化対策や耐震化などによる建設改良費等の増加に加え、世界的なエネルギー価格の高騰による経費のかかり増しなど、経営環境は今後も厳しさを増していくものと予測される。
このため、施設や管渠の維持管理に係る包括的民間業務委託を導入したほか、秋田県と連携し下水処理施設の広域化・共同化を推進するなど維持管理費用の縮減を図っているところであるが、今後も「第8次秋田市行政改革大綱(注:1)」や「秋田市公共施設等総合管理計画(注:3)」等の計画に従い、使用料収納率や水洗化率の向上等により収益を確保するとともに、老朽施設の廃止や管渠の長寿命化等を計画的に実施し、事業運営の一層の効率化を図り経営基盤の強化に努められたい。
また、本市においてもこのたびの豪雨災害により住宅が広範囲にわたって浸水するなど市民生活に重大な支障をきたしたことから、引き続き雨水排水施設の整備や下水道施設および管渠の耐震化などに努め、災害に強い下水道の構築を推進されたい。
さらに、下水道使用料等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から、債権管理を適切に行うとともに、新たな発生の防止にも意を用い、その縮減に努められたい。
(注:1)および(注:3)の概要については、下段を参照
農業集落排水事業会計
業務実績
令和4年度の普及状況は、前年度に比較して処理区域内人口が817人減の6,844人、水洗化人口が782人減の6,565人となっている。また、普及率は0.2ポイント低下し2.3%、水洗化率は95.9%で前年度と同率となっている。
建設改良工事については、農業集落排水建設改良事業として、国が施工する雄物川洪水対策工事の支障となる管渠の移設工事を実施した。また、河辺三内字外川原地内において、老朽化した非常用発電機の更新工事を実施した。
なお、令和4年度は農業集落排水区域のうち、外旭川笹岡および雄和戸賀沢の2処理区域について汚水処理施設を廃止のうえ下水道に接続し、会計を下水道事業会計へ引き継いだ。
経営成績
収益については、前年度に比較して、営業収益が農業集落排水施設使用料の減などにより2,079万円(17.7%)の減少、営業外収益が長期前受金戻入の減などにより3,208万円(5.8%)減少、特別利益が715万円(70.7%)の減少となっている。これらにより総収益は6,002万円(8.8%)減の6億2,364万円となっている。
一方、費用については、営業費用が減価償却費の減などにより5,868万円(9.7%)の減少、営業外費用が支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより836万円(14.2%)の減少となっている。これらにより総費用は6,718万円(10.1%)減の5億9,586万円となっている。
この結果、純利益は、前年度に比較して715万円(34.7%)増の2,779万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度に比較して81万円(0.3%)減の2億3,512万円となっている。
財政状態
負債については、固定負債が企業債の減により3億415万円(13.1%)減少したほか、繰延収益が下水道事業会計への引継ぎ等により5億6,595万円(13.7%)減少したことなどから、合計では8億9,531万円(13.2%)減少し58億9,990万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億1,017万円の資金増加、投資活動によるものが3,550万円の資金減少、財務活動によるものが1億6,348万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度に比較して1,120万円増加し、6億6,847万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度に比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)、現金預金比率および使用料収納率はいずれも良化している。
意見
前年度に比較して、収益については、営業収益の根幹をなす施設使用料や長期前受金戻入の減などにより減少となっている。一方、費用については、減価償却費の減などにより営業費用が減少し、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用も減少している。結果的に、令和4年度の損益は黒字となったものの、黒字の要因は営業外収益である一般会計からの繰入金である。
本事業については、汚水処理の効率化を推進するため、処理区の大部分を順次公共下水道へ接続し農業集落排水施設を廃止するとともに、未接続の隣接する施設については統合を進め事業規模の適正化を図ることとしている。
これらにより、本事業の収益は減少するが、費用についても、管路等の維持管理が下水道事業会計へ移行し、統合により処理場の維持管理費用が縮減されるなど、事業全体の会計規模の縮小が想定される。
こうしたことから、今後の経営に当たっては、「秋田市上下水道事業基本計画(注:2)」や「秋田市公共施設等総合管理計画(注:3)」等に基づき、計画・目標の達成に向け取組を着実に実施するとともに、一層の事業の効率化やコストの縮減を図られたい。
また、施設使用料等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から、債権管理を適切に行うとともに、新たな発生の防止にも意を用い、その縮減に努められたい。
(注:1)から(注:3)の計画の概要
(注:1)第8次秋田市行政改革大綱(第4期・県都『あきた』改革プラン)
人口減少・少子高齢社会の進行など、市政を取り巻く社会情勢の変化に対応し、持続可能な行財政運営を実現するため、「公共サービスの改革」「財政運営の改革」「組織・執行体制の改革」の3つの視点に基づき、令和5年度から令和8年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革の項目を令和5年1月に定めたもの。
上下水道事業については、配水ポンプ施設2カ所(下浜、萱ケ沢)を廃止することや、汚水中継ポンプ場集中監理による維持管理体制の再編、農業集落排水処理施設の廃止などが改革項目に掲げられている。
(注:2)秋田市上下水道事業基本計画
安定した事業運営のもと、良質な上下水道サービスを提供できる機能を維持、継続するため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする経営の基本方針を平成29年3月に定めたもの。
仁井田浄水場の更新などによる安全な水道水の供給、水道管路の耐震震化や下水道管路の改築などによる災害に強い上下水道の構築、施設の統廃合による事業運営の効率化などが定められている。
基本計画の下に、5年間で実施する詳細な事業計画や指標を取りまとめた「推進計画」があり、後期計画を令和4年3月に公表している。
(注:3)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、将来負担の軽減を図るため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定め、令和4年1月に改訂したもの。
上下水道事業については、人口減少等を踏まえた長期的視点に立った事業計画の進行管理、民間委託の推進などによる経営の効率化、災害時のライフラインの維持、施設規模の適正化や施設の統廃合、再配置の検討などが今後の方向性として定められている。
詳細については、添付ファイル「令和4年度公営企業会計決算審査意見書」でご確認ください。
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