令和元年度公営企業会計決算審査意見
審査の対象
令和元年度秋田市水道事業会計
令和元年度秋田市下水道事業会計
令和元年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間および場所
令和2年6月8日から同年7月31日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の経営成績および財政状態を適正に表示しているかについて審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉に寄与しているかどうかを審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の令和2年3月31日をもって終わる事業年度の経営成績および同日現在の財政状態を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、おおむね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
令和元年度の給水状況は、前年度と比較して、給水世帯数が579世帯増の135,874世帯、給水人口が1,912人減の302,165人となり、普及率は前年度と同率の99.4%となっている。また、年間有収水量は286,422立方メートル減の32,216,556立方メートル、有収率は0.8ポイント低下し91.2%となっている。
次に、建設改良工事については、配水管整備事業として仁井田、飯島地区などにおいて施工延長24,664.8メートルの配水管布設工事、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として仁井田浄水場中央監視装置C系増設等工事などを実施している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、受託工事収益の増などにより営業収益が537万円(0.1%)の増加、長期前受金戻入の増などにより営業外収益が1,310万円(2.0%)の増加、その他特別利益の減などにより特別利益が3,833万円(皆減)の減少となっている。これにより総収益は1,986万円(0.3%)減の71億711万円となっている。
一方、費用については、総係費の増などにより営業費用が9,812万円(1.7%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が2,209万円(6.0%)の減少、減損損失の増などにより特別損失が405万円(549.3%)の増加となっている。これにより総費用は8,008万円(1.3%)増の62億8,959万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して9,994万円(10.9%)減の8億1,753万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、ダム使用権の減などにより固定資産が5,830万円(0.1%)減少したが、現金・預金が増となったことなどにより流動資産が3億7,655万円(2.9%)増加したことから、合計では3億1,825万円(0.4%)増加し752億6,559万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が5億5,921万円(2.3%)減少したことなどから、合計では6億2,430万円(1.5%)減少し415億8,983万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが27億102万円の資金増加、投資活動によるものが19億4,458万円の資金減少、財務活動によるものが3億5,492万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して4億152万円増加し122億883万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている。
意見
収益については、根幹をなす給水収益が、前年度に引き続きわずかに減収となったほか、特別利益が皆減したことから総収益は減収となった。費用では、営業外費用が減少したものの、営業費用が増加したことなどから、総費用は増加した。その結果、元年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの、黒字額は減少が続いている。
今後の収入については、本市の人口減少に伴う給水人口の減少に加え、節水技術の進展や節水機器の普及などにより、給水収益は中長期的に減収していく見通しであることから、引き続き有収率の向上や料金収納率の向上による収益の確保に努めることが必要である。また、支出については、「第3期・県都あきた』改革プラン」(注:1)の取組である配水ポンプ施設の廃止や水道スマートメーター導入の検討を着実に実施するほか、「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)に基づき、増加する老朽施設の更新需要などについて、事業費の平準化やライフサイクルコストの最小化を図りながら、計画的に更新を進められたい。
特に、約190億円の多額の費用が見込まれている仁井田浄水場の更新については、令和元年度に事業手法を決定したことから、今後、更新事業のさらなる具体的精査を進め、将来の水道事業における経営効率化に資するよう、水需要の適切な予測に基づく浄水施設の規模の適正化を図られたい。なお、当該事業は、財政計画に大きな影響を及ぼすことから、「秋田市上下水道事業基本計画」に位置づけ、事業計画等において、所要の調整等を実施する必要がある。
また、近年は、地震や豪雨による大規模災害に対する備えが重要となっていることから、引き続き施設および管路の耐震化や供給システムの強化などの災害対策を進められたい。
なお、給水収益等における未収金については、受益者負担の公平性や、経営の安定性を確保する観点から、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者の個々の状況に応じた丁寧できめ細かな納入指導を行うなど、その縮減に鋭意努力されたい。
(注:1)および(注:2)の概要については、下段を参照
下水道事業会計
業務実績
令和元年度の普及状況は、前年度と比較して、処理区域内人口が943人減の287,422人、水洗化人口が306人減の258,161人となっている。また、下水道普及率は0.2ポイント上昇し93.8%、水洗化率も同じく0.2ポイント上昇し89.8%となっている。
次に、建設改良工事については、泉、寺内地区で浸水対策として雨水管の整備や市内各地域で汚水管の面整備などを行い、総延長3,321.7メートルの管渠を布設したほか、山王、土崎地区などにおいて老朽管の改築など4,453.8メートルを実施している。また、ポンプ場建設事業は、山王雨水排水ポンプ場電気設備更新工事、旭橋返送ポンプ場機械設備および電気設備更新工事のほか、処理場建設事業として八橋下水道終末処理場無停電電源設備更新工事などを実施している。特定環境保全公共下水道事業では太平地区に汚水管3,490.1メートルを布設している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、他会計負担金の減などにより営業収益が4,351万円(0.6%)の減少、長期前受金戻入の減などにより営業外収益が4,901万円(1.5%)の減少、その他特別利益の増などにより特別利益が1,271万円(殆増)の増加となっている。これにより総収益は7,981万円(0.8%)減の103億7,212万円となっている。
一方、費用については、処理場費の減などにより営業費用が1億3,069万円(1.6%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が8,190万円(7.2%)の減少、固定資産売却損の減などにより特別損失が2,608万円(98.9%)の減少となっている。これにより総費用は2億3,868万円(2.5%)減の91億9,494万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して1億5,887万円(15.6%)増の11億7,718万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、構築物の減などにより固定資産が10億4,399万円(0.6%)減少、現金・預金が減となったことなどにより流動資産が3億8,115万円(6.3%)減少したことから、合計では14億2,514万円(0.8%)減少し1,703億8,104万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が21億432万円(3.3%)減少、長期前受金の収益化などにより繰延収益が6億3,146万円(1.1%)減少したことなどから、合計では34億8,218万円(2.7%)減少し1,252億4,908万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが42億5,908万円の資金増加、投資活動によるものが32億2,466万円の資金減少、財務活動によるものが14億6,080万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して4億2,638万円減少し46億8,704万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている。
意見
収益については、根幹をなす下水道使用料がわずかに減収となる中、長期前受金戻入や他会計補助金が減少したことなどにより、総収益は減収となった。
費用については、営業費用、営業外費用および特別損失がいずれも減少したことにより、総費用が大幅に減少した。その結果、元年度損益は前年度に引き続き黒字となり、黒字額は増加した。
今後の収入については、本市の人口減少に伴う水洗化人口の減少に加え、節水技術の進展や節水機器の普及などにより、下水道使用料は中長期的に減少していく見込みとなっている。一方、支出については、今後、施設や管渠等の老朽対策費用が増加するほか、耐震化に多額の費用が見込まれている。こうしたことから、使用料収納率の向上や水洗化率の向上等により、収益の確保を図る必要がある。また、「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)および「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:3)等に基づき、今後増大する老朽施設・管渠の更新需要の平準化を図るとともに、「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:1)に位置づけている、秋田県流域下水道への接続による本市単独公共下水道の処理施設の廃止を推進し、事業運営の効率化や維持管理コストの削減を図るなど、長期的な視点での経営基盤の強化に努められたい。
また、近年は地震や豪雨による大規模災害に対する備えが重要となっており、引き続き施設および管路の耐震化や浸水対策の推進などの災害対策を進められたい。
なお、下水道使用料等の未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かな納入指導を行うなど、その縮減に鋭意努力されたい。
(注:1)から(注:3)の概要については、下段を参照
農業集落排水事業会計
業務実績
令和元年度の普及状況は、前年度と比較して処理区域内人口が242人減の9,488人、水洗化人口が221人減の9,093人となっている。また、普及率は0.1ポイント低下し3.1%、水洗化率は0.1ポイント上昇し95.8%となっている。
次に、建設改良工事については、農業集落排水建設改良事業として河辺砂子渕処理区を隣接する河辺三内処理区に統合するための管渠布設工事および笹岡農業集落排水処理施設フェンス改修工事などを実施している。また、個別排水処理施設建設事業として山内字田中地内において1基の浄化槽を設置している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、農業集落排水施設使用料の減などにより営業収益が264万円(2.0%)の減少、他会計補助金の減などにより営業外収益が1,017万円(1.7%)の減少、その他特別利益の増により特別利益が1,571万円(皆増)の増加となっている。これにより総収益は290万円(0.4%)増の7億3,904万円となっている。
一方、費用については、処理場費の増などにより営業費用が840万円(1.3%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が630万円(8.3%)の減少、過年度損益修正損の減などにより特別損失が8千円(皆減)の減少となっている。これにより総費用は209万円(0.3%)増の7億1,817万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して81万円(4.0%)増の2,087万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度と比較して396万円(1.9%)増の2億1,288万円となっている。
財政状態
資産については、前年度と比較して、構築物の減などにより固定資産が3億3,851万円(3.0%)減少したことなどから、合計では3億6,955万円(3.1%)減少し114億8,252万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が2億8,432万円(8.8%)減少、長期前受金の収益化などにより繰延収益が1億8,564万円(3.7%)減少したことなどから、合計では5億49万円(5.8%)減少し81億7,482万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億1,965万円の資金増加、投資活動によるものが1億2,840万円の資金減少、財務活動によるものが1億5,591万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して6,466万円減少し6億527万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率および酸性試験比率(当座比率)がいずれも好転し、概ね良好な数値を保っている。
意見
収益については、根幹をなす施設使用料が減収となる中、他会計補助金の減収等により営業外収益も減収となったが、特別利益が皆増したことにより、総収益は増収となった。費用については、営業外費用が減少したが、処理場費等の営業費用が増加したことにより総費用も増加した。その結果、元年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの、黒字の主な要因は、営業外収益である一般会計からの繰入金となっている。
本事業は、本市の中でも人口減少幅が大きいと予想されている市の郊外部を処理区としており、今後も処理水量の減少により使用料の減収は避けられない上、老朽化した施設の更新や維持管理に要する経費の増嵩が見込まれることなどから、経営環境はさらに厳しさを増していくものと推測される。
また、本事業の汚水処理原価は、下水道事業に比べ高額であるものの、施設使用料を下水道使用料と同水準にして利用者の負担軽減を図っているため、その不足する経費は一般会計が負担している。
このような状況を踏まえ、今後の経営においては、「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:1)、「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)および「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:3)に基づき、処理区の統合や公共下水道への接続を着実に実施するとともに、事業運営の効率化やコスト縮減を図ることにより経営基盤の強化を推進し、一般会計の負担軽減に努められたい。
なお、施設使用料等の未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かな納入指導を行うなど、その縮減に鋭意努力されたい。
(注:1)から(注:3)の計画の概要
(注:1)第3期・県都『あきた』改革プラン(第7次秋田市行政改革大綱)
人口減少・少子高齢社会の進行に適応した持続可能な行財政運営の実現に向け、平成31年度から令和4年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革や成果指標を平成31年1月に定めたもの。
上下水道事業については、仁井田浄水場の更新に当たり官民連携手法の活用を検討することや、秋田県流域下水道への接続による単独公共下水道の廃止、農業集落排水処理施設の廃止などが改革項目に掲げられている。
(注:2)秋田市上下水道事業基本計画
安定した事業運営のもと、良質な上下水道サービスを提供できる機能を維持、継続するため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする経営の基本方針を平成29年3月に定めたもの。
仁井田浄水場の更新などによる安全な水道水の供給、水道管路の耐震化や下水道管路の改築などによる災害に強い上下水道の構築、施設の統廃合による事業運営の効率化などが定められている。
(注:3)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、将来負担の軽減を図るため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定めたもの。
上下水道事業については、事業計画の策定による施設の維持、民間委託の検討などによる経営の効率化、災害時のライフラインの維持、管路の長寿命化や施設の統廃合などが今後の方向性として定められている。
詳細については、添付ファイル「令和元年度公営企業会計決算審査意見書」でご確認ください。
PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。
よりよいウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。
このページに関するお問い合わせ
秋田市監査委員事務局
〒010-8560 秋田市山王一丁目1番1号 本庁舎6階
電話:018-888-5791 ファクス:018-888-5792
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。