平成30年度公営企業会計決算審査意見
審査の対象
平成30年度秋田市水道事業会計
平成30年度秋田市下水道事業会計
平成30年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間および場所
令和元年6月12日から令和元年7月31日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の財政状態および経営成績を適正に表示しているか否かを審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉に寄与しているかどうかを審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の平成31年3月31日現在の財政状態および同日をもって終わる事業年度の経営成績を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、おおむね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
平成30年度の給水状況は、前年度と比較して、給水世帯数が571世帯増の135,295世帯、給水人口が2,095人減の304,077人となり、普及率は前年度と同率の99.4% となっている。また、年間有収水量は363,927立方メートル減の32,502,978立方メートル、有収率は0.2ポイント低下し92.0%となっている。
次に、建設改良工事の実施状況は、配水管整備事業として河辺、下新城地区などにおいて施工延長28,680.2メートルの配水管布設、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として豊岩浄水場管理本館空調設備更新工事等を実施している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、給水収益の減などにより営業収益が5,112万円(0.8%)の減少、長期前受金戻入の減などにより営業外収益が652万円(1.0%)の減少、その他特別利益の増などにより特別利益が3,833万円(皆増)の増加となっている。これにより総収益は1,931万円(0.3%)減の71億2,697万円となっている。
一方、費用については、給水費の増などにより営業費用が3 億7,736万円(6.9%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が2,339万円(6.0%)の減少、過年度損益修正損の増などにより特別損失が49万円(195.4%)の増加となっている。これにより総費用は3億5,446万円(6.1%)増の62億951万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して3億7,377万円(28.9%)減の9億1,746万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、構築物の増などにより固定資産が3,960万円(0.1%)増加したほか、現金・預金が増となったことなどにより流動資産が2億9,610万円(2.4%)増加したことから、合計では3億3,570万円(0.4%)増加し749億4,734万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が3億862万円(1.2%)減少したことなどから、合計では6億8,777万円(1.6%)減少し422億1,413万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが29億4,706万円の資金増加、投資活動によるものが23億9,926万円の資金減少、財務活動によるものが2億4,220万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して3億560万円増加し118億731万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、流動比率、酸性試験比率(当座比率)、現金預金比率および固定資産対長期資本比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている。
意見
収益については、根幹をなす給水収益が、前年度に引き続き僅かに減収となったことから、総収益も減収となった。費用では、営業外費用が減少したものの、営業費用が前年度より増加したことなどから総費用は増加した。その結果、30年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの黒字額は減少した。
今後の収入については、一般家庭における節水意識の定着や節水器具の普及に加え、本市の人口減少に伴い給水人口が年々減少していることなどにより、給水収益は中長期的に減収となる見通しであることから、引き続き漏水調査や老朽管の更新などによる有収率の向上や料金収納率の向上による収益の確保に努めることが必要である。また、支出については、老朽化した施設の維持管理や更新に加え、浄水・配水施設の耐震化などに多くの費用が見込まれることから、「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:1)や「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)に基づき、将来の給水量の見通しにあわせた施設規模の適正化や施設の廃止などを積極的に行うとともに、本年度スタートした「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:3)の改革の項目である配水ポンプ施設の廃止を着実に進め、水道スマートメーターの導入を検討するなど、事業運営の効率化やコスト縮減を図る必要がある。
特に、本市の主力浄水場である仁井田浄水場の更新については、昨年9月に基本計画が策定され、設計・工事費等が約190億円と多額の事業費が見込まれている。本浄水場の更新にあたっては、後年度の負担が過大とならないよう適正な規模の整備を行うとともに官民連携手法の活用を検討し効率的な施設運営に努められたい。
また、水道は市民の日常生活に直結した重要なライフラインであり、大規模災害により水道施設が被災した場合は、断水などにより市民生活に重大な支障をきたすことから、今後も引き続き施設および管路の耐震化や供給システムの強化などの災害対策を進められたい。
なお、給水収益等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、その縮減に鋭意努力されたい。
(注:1)から(注:3)の概要については、下段を参照
下水道事業会計
業務実績
平成30年度の普及状況は、前年度と比較して、処理区域内人口が1,229人減の288,365人、水洗化人口が368人減の258,467人となっている。また、下水道普及率は0.3ポイント上昇し93.6%、水洗化率は0.2ポイント上昇し89.6%となっている。
次に、建設改良工事の実施状況は、市内各地区で汚水管の面整備や浸水対策として雨水管の整備を行い、総延長3,194.3メートルの管渠を布設したほか、南通地区や土崎地区などにおいて老朽管の改築など8,143.7メートルを実施している。また、ポンプ場建設事業は、金足汚水中継ポンプ場の築造や川口汚水中継ポンプ場沈砂池設備更新・耐震補強工事のほか処理場建設事業として八橋下水道終末処理場消防設備改修工事を実施している。特定環境保全公共下水道事業では太平地区などに汚水管6,259.3メートルを布設している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、他会計負担金の増などにより営業収益が1,146万円(0.2%)の増加、長期前受金戻入の増などにより営業外収益が6,311万円(1.9%) の増加、その他特別利益の減などにより特別利益が5,852万円(100.0%) の減少となっている。これにより総収益は1,604万円(0.2%)増の104億5,192万円となっている。
一方、費用については、資産減耗費の増などにより営業費用が2億2,582万円(2.8%)の増加、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が1億3,161万円(10.3%)の減少、固定資産売却損の増などにより特別損失が2,633万円(殆増)の増加となっている。これにより総費用は1億2,054万円(1.3%)増の94億3,361万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して1 億449万円(9.3%)減の10億1,831万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度と比較して、現金・預金が増となったことなどにより流動資産が2億5,575万円(4.4%)増加したものの、構築物の減などにより固定資産が9億7,624万円(0.6%)減少したことから、合計では7億2,050万円(0.4%)減少し1,718億618万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が19億2,320万円(2.9%)、長期前受金の収益化により繰延収益が5億8,294万円(1.0%)それぞれ減少したことなどから、合計では26億7,454万円(2.0%)減少し1,287億3,126万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが44億536万円の資金増加、投資活動によるものが30億928万円の資金減少、財務活動によるものが11億4,404万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して2億5,203万円増加し51億1,342万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)および現金預金比率がいずれも好転しており、全般的に良好な数値を保っている。
意見
収益については、根幹をなす下水道使用料が僅かに減収となったものの、長期前受金戻入が増加したことなどから、総収益は増収となった。費用については、営業外費用は減少したものの営業費用、特別損失が増加したことから、総費用も増加した。その結果、30年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの黒字額は減少した。
今後の収入については、一般家庭における節水意識の定着や節水器具の普及に加え、本市の人口減少に伴い水洗化人口も減少傾向となることが予測されることから、下水道使用料は減少する見通しとなっており、使用料収納率の向上による収益の確保や水洗化率の向上に努めることが必要である。また、支出については、老朽化した施設・管渠の維持管理や更新に加え、耐震化に多くの費用が見込まれることから、本年度スタートした「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:3)の項目である秋田県流域下水道への接続による単独公共下水道の廃止や下水道ポンプ場への官民連携手法の活用検討を着実に進めるとともに、「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:1)や「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)に基づき、施設の統廃合などを積極的に行うことにより、事業運営の効率化やコストの縮減を図るなど引き続き経営基盤の強化に努められたい。
また、下水道は、市民生活に欠かせない重要なライフラインであり、大規模災害により下水道施設が被災した場合は、浸水被害などにより市民生活に重大な支障をきたすことから、今後も引き続き施設および管路の耐震化や浸水対策の推進などの災害対策を進められたい。
なお、下水道使用料等の未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、その縮減に鋭意努力されたい。
(注:1)から(注:3)の概要については、下段を参照
農業集落排水事業会計
業務実績
平成30年度の普及状況は、前年度と比較して処理区域内人口が315人減の9,730人、水洗化人口が276人減の9,314人となっている。また、普及率は0.1ポイント低下し3.2%、水洗化率は0.2ポイント上昇し95.7%となっている。
次に、建設改良工事の実施状況は、河辺飛沢処理区を隣接する河辺岩見三内中央処理区に統合するための管渠布設工事や河辺砂子渕処理区を隣接する河辺三内処理区に統合するための実施設計業務委託などを実施している。また、個別排水処理施設建設事業として山内字田中地内などにおいて2基の浄化槽を設置している。
経営成績
収益については、前年度と比較して、農業集落排水施設使用料の減などにより営業収益が358万円(2.7%)の減少、他会計補助金や長期前受金戻入の減などにより営業外収益が1,468万円(2.4%)の減少となっている。これにより総収益は1,826万円(2.4%)減の7億3,614万円となっている。
一方、費用については、減価償却費の減などにより営業費用が888万円(1.4%)の減少、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用が649万円(7.9%)の減少、過年度損益修正損の減により特別損失が16万円(95.4%)の減となっている。これにより総費用は1,553万円(2.1%)減の7億1,608万円となっている。
この結果、純利益は、前年度と比較して273万円(12.0%)減の2,006万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度と比較して846万円(4.2%)増の2億892万円となっている。
財政状態
資産については、前年度と比較して、構築物の減などにより固定資産が3億9,355万円(3.4%)減少したことなどから、合計では3億4,189万円(2.8%)減少し118億5,207万円となっている。
負債については、企業債が減となったことなどにより固定負債が2億7,897万円(8.0%) 、長期前受金の収益化により繰延収益が2億1,205万円(4.0%)それぞれ減少したことから、合計では4億5,720万円(5.0%)減少し86億7,531万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億4,815万円の資金増加、投資活動によるものが1,563万円の資金減少、財務活動によるものが1億8,419万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度と比較して4,834万円増加し6億6,993万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度と比較して、固定資産対長期資本比率が好転しており、流動比率を除き良好な数値を保っている。
意見
収益については、処理区域内の人口減少などにより農業集落排水施設使用料が減収となったことに加え、営業外収益が減となったことなどから、総収益は減収となった。費用においては、営業費用、営業外費用がそれぞれ減となったことにより、総費用も減少した。その結果、30年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの黒字額は減少した。
今後、これまで整備した処理区域を公共下水道へ接続する計画としていることから、利用者の減により使用料は年々減少する見通しとなっており、支出についても、管路の維持管理が下水道事業会計に移行することや処理場の統廃合などに伴い維持管理経費が縮減するため、事業全体の会計規模が縮小することが予測される。
今後の経営においては、事務事業の見直しなどにより一層の業務効率化に努めるとともに、本年度スタートした「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:3)や「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:1)および「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)に基づき、処理場の統廃合や公共下水道への接続などを着実に進め、事業運営の
効率化やコストの縮減を図るなど引き続き経営基盤の強化に努められたい。
また、農業集落排水事業においては、汚水処理原価が下水道事業に比べ高額であるが、施設使用料を下水道使用料と同水準にして利用者の負担軽減を図っているため、その不足する経費は一般会計が補てんしている。地方公営企業会計における独立採算の原則や一般会計との負担の適正化の観点から、こうした基準外の繰入については、今後着実に縮減し、一般会計のさらなる負担軽減に努められたい。
なお、施設使用料等の未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保するため、新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、その縮減に鋭意努力されたい。
(注:1)から(注:3)の計画の概要
(注:1)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、将来負担の軽減を図るため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定めたもの。
上下水道事業については、事業計画の策定による施設の維持、民間委託の検討などによる経営の効率化、災害時のライフラインの維持、管路の長寿命化や施設の統廃合などが今後の方向性として定められている。
(注:2) 秋田市上下水道事業基本計画
安定した事業運営のもと、良質な上下水道サービスを提供できる機能を維持、継続するため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする経営の基本方針を平成29年3月に定めたもの。
仁井田浄水場の更新などによる安全な水道水の供給、水道管路の耐震化や下水道管路の改築などによる災害に強い上下水道の構築、施設の統廃合による事業運営の効率化などが定められている。
(注:3) 第3期・県都『あきた』改革プラン(第7次秋田市行政改革大綱)
人口減少・少子高齢社会の進行に適応した持続可能な行財政運営の実現に向け、平成31年度から令和4年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革や成果指標を平成31年1月に定めたもの。
上下水道事業については、仁井田浄水場の更新に当たり官民連携手法の活用を検討することや、秋田県流域下水道への接続による単独公共下水道の廃止、農業集落排水処理施設の廃止などが改革項目に掲げられている。
詳細については、添付ファイル「平成30年度公営企業会計決算審査意見書」でご確認ください。
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