令和5年度公営企業会計決算審査意見
審査の対象
令和5年度秋田市水道事業会計
令和5年度秋田市下水道事業会計
令和5年度秋田市農業集落排水事業会計
審査の期間および場所
令和6年6月5日から同年7月31日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の概要
- 本事業年度における水道、下水道および農業集落排水の各事業会計の決算書類ならびに附属書類は、地方公営企業法および関係諸法令ならびに企業の財務に関する諸規則に準拠して作成され、かつ企業の経営成績および財政状態を適正に表示しているかについて審査した。
- この決算における予算執行の結果が、地方公営企業経営の基本原則である経済性を発揮し、公共の福祉の増進に寄与しているかについて審査した。
- この審査は、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施した。
審査の結果
- 各事業の会計処理は、地方公営企業法および関係法令等に定められた会計原則ならびに手続に従ってなされており、かつ決算書類および附属書類は法令等で定める様式どおり作成されていた。
よって、財務諸表は、各事業の令和6年3月31日をもって終了する事業年度の経営成績および同日現在の財政状態を適正に表示しているものと認めた。 - 決算計数は、正確であると認めた。
- 本事業年度における予算執行は、所期の目的に従い、おおむね適正に執行されたものと認めた。
各事業会計の概況および意見は、次のとおりである。
水道事業会計
業務実績
令和5年度の給水状況は、前年度に比較して、給水世帯数が98世帯増の137,671世帯、給水人口が3,393人減の295,906人、普及率は前年度と同率の99.7%となっている。また、年間有収水量は577,246m3減の30,862,535m3、有収率は1.2ポイント低下し90.7%となっている。
建設改良工事については、配水管整備事業として添川、豊岩地区などにおいて施工延長23,071.0mの配水管布設工事、布設替工事および配水幹線整備工事を行ったほか、施設改良事業として手形山送水管整備工事などを実施している。
経営成績
収益については、前年度に比較して、営業収益が給水収益の減などにより7, 684万円(1.2%)の減少、営業外収益が長期前受金戻入の減などにより748万円(1.1%)の減少、特別利益が固定資産売却益の減などにより21万円(86.0%)の減少となっている。これらにより総収益は8,453万円(1.2%)減の69億5,526万円となっている。
一方、費用については、営業費用が原水及び浄水費の増などにより1億6,285万円(2.8%)の増加、営業外費用が支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより1,438万円(5.4%)の減少、特別損失が過年度損益修正損の減などにより34万円(54.5 %)の減少となっている。これらにより総費用は1億4,814万円(2.4%)増の63億1,109万円となっている。
この結果、 純利益は、前年度に比較して2億3,266万円(26.5%)減の6億4,417万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度に比較して、固定資産が構築物の増などにより19億7,621万円(3.2%)増加したほか、流動資産が現金・預金の増などにより2億8,598万円(2.0%)増加したことから、合計では22億6,219万円(3.0%)増加し781億199万円となっている。
負債については、固定負債が企業債の増などにより8億7,063万円(3.8%)増加したほか、繰延収益が長期前受金の収益化等により1億2,701万円(0.9%) 減少したことなどから、合計では15億4,725万円(4.0%)増加し405億919万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが29億3,318万円の資金増加、投資活動によるものが33億5,640万円の資金減少、財務活動によるものが 9億3,582万円の資金増加であり、この結果、資金期末残高は前年度に比較して5億1,260万円増加し、135億6,356万円となっている。
なお、主要財務比率については、前年度に比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)、現金預金比率および料金収納率はいずれも悪化しているものの、全般的に良好な数値を維持している。
意見
前年度に比較して、収益については、営業収益の根幹をなす給水収益が減少し、営業外収益も減少している。一方、費用については、原水及び浄水費の増などにより営業費用が増加となっている。この結果、令和5年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの、黒字額は減少している。
水道事業においては、人口減少や節水型機器の普及などにより給水収益が減少していく一方、管路の耐震化や施設の老朽化などの更新需要の増加に加え、激甚化する災害への対応、電気料金や資材価格等の高騰による経費の増加などにより、経営環境は今後も厳しさを増していくものと予測される。
将来にわたり良質な水道サービスを安定的に提供するためには、有収率や料金収納率の向上など収益を確保する取組を継続するとともに、水需要の見通しに合わせた施設規模の適正化や適切な事業選択などにより費用を抑制する必要がある。
このため、限りある経営資源の効率的な活用として、デジタル技術を導入し、業務の効率化を図るなど「第8次秋田市行政改革大綱」(注: 1)等に基づき事業を実施しており、今後は、見直し中の「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)についても、事業を取り巻く環境の変化を見据えた目標を設定するとともに、その達成に向けて、取組の成果を評価・検証しつつ、着実に実施されたい。
特に、進行中の仁井田浄水場等整備事業については、大規模であり整備期間も長期にわたるため、社会経済情勢の変化を的確に把握した上で、経済的かつ効率的な進行管理に努められたい。
また、昨年の豪雨災害により上水道施設が被災し、一部地域において断水など市民生活に重大な支障をきたしたことから、ライフラインである安全な水道水を安定的に供給できるよう、引き続き送水管や配水幹線の耐震化など、供給機能の維持・向上を図るための災害時対策を推進されたい。
さらに、料金収入等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から、債権管理を適切に行うとともに、新たな発生の防止と縮減に努められたい。
注:各計画等の概要については、下段を参照
下水道事業会計
業務実績
令和5年度の普及状況は、前年度に比較して、処理区域内人口が1,720人減の282,153人、水洗化人口が429人減の256,613人となっている。また、下水道普及率は0.5ポイント上昇し95.6%、水洗化率も0.4ポイント上昇し90.9%となっている。
建設改良工事については、管渠建設事業として、浸水対策のため新屋、広面地区などで雨水管の整備等や、各地域で汚水管の面整備等を行い、総延長2,701.5mの管渠を布設したほか、土崎、新屋地区などにおいて5,935.3mの老朽管の改築等を実施している。また、ポンプ場建設事業として、新屋汚水中継ポンプ場受変電設備更新工事などを実施している。特定環境保全公共下水道事業では、上新城、河辺三内地区などで2,187.4mの管渠を布設したほか、雄和平沢地区において管渠の移設636.3mなどを実施している。
経営成績
収益については、前年度に比較して、営業収益が下水道使用料の減や他会計負担金の増などにより1,190万円(0.2%)の増加、営業外収益が長期前受金戻入の減などにより2,333万円(0.7%)の減少、特別利益が過年度損益修正益の減などにより5,323万円(43.8%)の減少となっている。これらにより総収益は6,465万円(0.6%)減の101億2,987万円となっている。
一方、費用については、営業費用がポンプ場費の増などにより3億2,585万円 (3.7%)の増加 、営業外費用が支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより6,188万円(8.8%)の減少、特別損失が過年度損益修正損の減などにより39万円(96.3%)の減少となっている。これらにより総費用は2億6,358万円(2.8%)増の98億3,379万円となっている。
この結果、純利益は、前年度に比較して3億2,823万円(52.6%)減の2億9,607万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
財政状態
資産については、前年度に比較して、固定資産が構築物の増などにより4億2,112万円(0.3%)増加したものの、流動資産が前払金の減などにより5,343万円(0.9%)減少したことから、合計では3億6,769万円(0.2%)増加し、1,674億32万円となっている。
負債については、固定負債が企業債の減などにより14億8,653万円(2.6%)減少したほか、流動負債が未払金の増などにより1億8,242万円(2.8%)増加、繰延収益が長期前受金の増などにより7,045万円(0.1%)増加したことなどから、合計では12億3,366万円(1.1%)減少し、1,160億5,286万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが37億8,366万円の資金増加、投資活動によるものが31億4,891万円の資金減少、財務活動によるものが5億1,695万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度に比較して1億1,779万円増加し47億1,806万円となっている。
なお、主要財務比率については、前年度に比較して、酸性試験比率(当座比率)は良化しているが、固定資産対長期資本比率、流動比率、現金預金比率、使用料収納率は悪化している。
意見
前年度に比較して、収益については、営業収益の根幹をなす下水道使用料が減となったことや、過年度損益修正益の減などにより減少している。一方、費用については、支払利息及び企業債取扱諸費などが減となったものの、ポンプ場費や流域下水道費の増などにより増加となった。この結果、令和5年度損益は前年度に引き続き黒字となったものの、黒字額は減少している。
下水道事業においては、人口減少や節水型機器の普及により下水道使用料が減少していく一方、管渠の耐震化や施設の老朽化などの更新需要の増加に加え、激甚化する災害への対応、電気料金や資材価格等の高騰による経費の増加などにより、経営環境は今後も厳しさを増していくものと予測される。
このため、管路や施設の維持管理に導入している包括的民間業務委託のほか、秋田県と連携した下水処理施設の広域化・共同化を推進するなど、費用の縮減や業務の効率化を図っており、今後も「第8次秋田市行政改革大綱」(注:1)や「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:3)等の計画に基づき、使用料収納率や水洗化率の向上等により収益を確保するとともに、老朽施設の更新や管渠の長寿命化等を計画的に実施し、経営基盤の強化に努められたい。
また、昨年の豪雨による内水氾濫対策として、新たな浸水対策プロジェクトに取り組んでおり、今後も、雨水排水施設の整備や管渠の耐震化などに努め、災害に強い下水道の構築を推進されたい。
さらに、下水道使用料等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から、債権管理を適切に行うとともに、新たな発生の防止と縮減に努められたい。
注:各計画等の概要については、下段を参照
農業集落排水事業会計
業務実績
令和5年度の普及状況は、前年度に比較して処理区域内人口が1,146人減の5,698人、水洗化人口が1,148人減の5,417人となっている。また、普及率は0.4ポイント低下し1.9%、水洗化率は0.8ポイント低下し95.1%となっている。
建設改良工事については、農業集落排水建設改良事業として、国が施工する雄物川洪水対策工事の支障となる管渠の移設工事を実施した。また、上新城地区の汚水ポンプ施設において、老朽化した制御盤の更新工事を実施した。
なお、令和5年度は農業集落排水区域のうち、下新城南部および下新城北部の2処理区域について汚水処理施設を廃止の上、下水道に接続し、会計を下水道事業会計へ引き継いだ。
経営成績
収益については、前年度に比較して、営業収益が農業集落排水施設使用料の減などにより1,799万円(18.6%)の減少、営業外収益が長期前受金戻入の減などにより6,948万円(13.3%)の減少、特別利益が280万円(94.6%)の減少となっている。これらにより総収益は9,027万円(14.5%)減の5億3,337万円となっている。
一方、費用については、営業費用が減価償却費の減などにより7,039万円(12.9%)の減少、営業外費用が支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより913万円(18.1%)の減少となっている。これらにより総費用は7,951万円(13.3%)減の5億1,635万円となっている。
この結果、純利益は、前年度に比較して1,077万円(38.8%)減の1,702万円となり、全額を利益剰余金に計上している。
なお、一般会計からの基準外繰入金を除いた損益では赤字となり、純損失は、前年度に比較して201万円(0.9%)増の2億3,713万円となっている。
財政状態
負債については、固定負債が企業債の減により3億5,562万円(17.6%)減少したほか、繰延収益が下水道事業会計への引継ぎ等により7億5,095万円(21.1%)減少したことなどから、合計では11億4,489万円(19.4%)減少し47億5,501万円となっている。
キャッシュ・フローについては、業務活動によるものが2億544万円の資金増加、投資活動によるものが3,649万円の資金減少、財務活動によるものが1億3,883万円の資金減少であり、この結果、資金期末残高は前年度に比較して3,013万円増加し、6億9,860万円となっている。
なお、主要財務比率は、前年度に比較して、固定資産対長期資本比率、流動比率、酸性試験比率(当座比率)、現金預金比率および使用料収納率はいずれも良化している。
意見
前年度に比較して、収益については、営業収益の根幹をなす施設使用料や長期前受金戻入の減などにより減少となっている。一方、費用については、減価償却費の減などにより営業費用が減少し、支払利息及び企業債取扱諸費の減などにより営業外費用も減少している。結果的に、令和5年度の損益は黒字となったものの、この要因は営業外収益である一般会計からの繰入金である。
本事業については、汚水処理の効率化を推進するため、令和17年度を目途に処理区の大部分を順次公共下水道へ接続し農業集落排水施設を廃止するとともに、未接続の隣接する施設については統合を進め事業規模の適正化を図ることとしている。
これらにより、本事業の収益は減少するが、費用についても、管路等の維持管理が下水道事業会計へ移行し、統合により処理場の維持管理費用が縮減されるなど、事業全体の会計規模の縮小が想定される。
こうしたことを踏まえ、今後の経営に当たっては、「秋田市上下水道事業基本計画」(注:2)や「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:3)等に基づき、計画・目標の達成に向け取組を推進するとともに、取り巻く環境の変化を考慮した適切な事業を選択するなど、一層の効率化やコストの縮減を図られたい。
また、施設使用料等における未収金については、受益者負担の公平性や経営の安定性を確保する観点から、債権管理を適切に行うとともに、新たな発生の防止と縮減に努められたい。
注:各計画等の概要については、下段を参照
【参考】
(注:1)第8次秋田市行政改革大綱(第4期・県都『あきた』改革プラン)
人口減少・少子高齢社会の進行など、市政を取り巻く社会情勢の変化に対応し、持続可能な行財政運営を実現するため、「公共サービスの改革」「財政運営の改革」「組織・執行体制の改革」の3つの視点に基づき、令和5年度から令和8年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革の項目を令和5年1月に定めたもの。
上下水道事業については、配水ポンプ施設2カ所(下浜、萱ケ沢)を廃止することや、汚水中継ポンプ場集中監理による維持管理体制の再編、農業集落排水処理施設の廃止などが改革項目に掲げられている。
(注:2)秋田市上下水道事業基本計画
安定した事業運営のもと、良質な上下水道サービスを提供できる機能を維持、継続するため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする経営の基本方針を平成29年3月に定めたもの。
仁井田浄水場の更新などによる安全な水道水の供給、水道管路の耐震化や下水道管路の改築などによる災害に強い上下水道の構築、施設の統廃合による事業運営の効率化などが定められている。
基本計画の下に、5年間で実施する詳細な事業計画や指標を取りまとめた「推進計画」があり、後期計画を令和4年3月に公表している。
なお、基本計画は策定から7年が経過し、事業を取り巻く環境が大きく変化したことから、令和7年度から令和16年度までの10年間の計画について、令和6年度中に見直しを行い、策定する予定としている。
(注:3)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、将来負担の軽減を図るため、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間とする公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定め、令和4年1月に改訂したもの。
上下水道事業については、人口減少等を踏まえた長期的視点に立った事業計画の進行管理、民間委託の推進などによる経営の効率化、災害時のライフラインの維持、施設規模の適正化や施設の統廃合、再配置の検討などが今後の方向性として定められている。
PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。
よりよいウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。
このページに関するお問い合わせ
秋田市監査委員事務局
〒010-8560 秋田市山王一丁目1番1号 本庁舎6階
電話:018-888-5791 ファクス:018-888-5792
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。