令和元年度一般会計・特別会計決算審査意見
審査の対象
- 令和元年度秋田市一般会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市土地区画整理会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市市有林会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市市営墓地会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市中央卸売市場会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市公設地方卸売市場会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市大森山動物園会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市廃棄物発電会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市病院事業債管理会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市学校給食費会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市国民健康保険事業会計(事業勘定)歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市母子父子寡婦福祉資金貸付事業会計歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市介護保険事業会計(保険事業勘定)歳入歳出決算
- 令和元年度秋田市後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算
- 令和元年度各会計実質収支に関する調書
- 令和元年度財産に関する調書
審査の期間および場所
令和2年7月6日から同年8月31日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の方法
令和元年度秋田市一般会計・特別会計歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書および財産に関する調書は、関係法令に基づいて調製されているか、計数が関係する証書類と符合するかを確認した。また、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施し、予算の執行状況の適否について審査した。
審査の結果および意見
審査に付された各会計歳入歳出決算および決算附属書類は、いずれも関係法令に基づいて調製されており、計数は証書類と符合し正確であると認めた。
また、予算の執行は、おおむね適正であることを認めた。
決算総額
本年度の一般会計の決算額は、歳入が前年度より25億2,237万円(1.9%)増の1,349億8,809万円、歳出が24億2,094万円(1.9%)増の1,326億6,905万円となっている。これに特別会計を加えた決算総額は、歳入が31億8,627万円(1.6%)増の2,075億8,284万円、歳出が35億3,411万円(1.8%)増の2,040億7,090万円となっており、いずれも前年度を上回っている。
一般会計では、歳入歳出差引額(形式収支)が23億1,904万円となり、前年度の形式収支22億1,761万円を上回っている。また、翌年度への繰越財源が前年度は7億8,557万円であったが、本年度は10億4,783万円となっており、形式収支から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は、前年度より1億6,083万円(11.2%)減少し12億7,120万円の黒字となっている。これに特別会計を加えた実質収支の総額では、前年度より4億3,620万円(15.1%)減少し24億6,024万円の黒字となっている。
普通会計における財政状況
地方財政統計上の統一会計区分である普通会計における決算収支の状況は、実質収支が17億2,188万円の黒字、前年度実質収支を差し引いた単年度収支は1,122万円の黒字となっている。これに財政調整基金の積立金および取崩額、市債繰上償還金を加減した実質単年度収支は、2億4,869万円の赤字となっており、赤字額は前年度に比べて3億7,117万円(59.9%)減少している。
主要財政指標は、前年度と比較して、経常一般財源比率、実質公債費比率が改善し、財政力指数、経常収支比率、義務的経費比率は悪化している。
特に、近年改善傾向にあった財政構造における財政力の強弱を判断する財政力指数が悪化に転じたほか、財政構造の弾力性を判断する経常収支比率や義務的経費比率は悪化傾向が続き、今後の推移を注視する必要がある。
一般会計の歳入
一般会計の収入済額を前年度と比較すると、自主財源は、土地開発基金繰入金の増などにより繰入金が5億9,385万円(13.3%)、ふるさと納税などの総務管理費寄附金の増などにより寄附金が5,316万円(32.9%)それぞれ増となったものの、県・市連携文化施設整備事業負担金の減などにより諸収入が3億310万円(3.4%)、私立保育所保護者負担金の減などにより分担金及び負担金が2億8,186万円(23.7%)、一部業種を中心に企業収益が縮小したことによる法人税割の減などにより市税が3,124万円(0.1%)それぞれ減となったことなどにより484万円(0.0%)減少し633億1,875万円となっている。
依存財源は、国の消費税収入額が減少したことにより地方消費税交付金が4億459万円(6.3%)、税制改正により令和元年9月末で廃止されたことに伴い自動車取得税交付金が6,023万円(33.4%)それぞれ減となったものの、子どものための教育・保育給付交付金の増などにより国庫支出金が12億9,958万円(6.2%)、算定基礎となる基準財政需要額の増加や臨時財政対策債振替相当額の減少により地方交付税が7億4,890万円(3.8%)、小学校大規模改造事業などに係る市債の増加により市債が4億1,920万円(3.8%)増となったことなどにより25億2,721万円(3.7%)増加し716億6,934万円となっている。歳入総額では、25億2,237万円(1.9%)増の1,349億8,809万円となっている。
自主財源比率については、前年度の47.8%から0.9ポイント低下し46.9%となっており、諸収入の減や依存財源である国庫支出金の増が主な要因となっている。
収入未済額については、総額で前年度より3億8,819万円(12.3%)増の35億3,203万円となっており、これから繰越事業に係る国庫支出金や県支出金の収入未済額を除くと、1億4,049万円(6.6%)減の20億73万円となっている。このうち市税の収入未済額は、前年度より1億5,325万円(8.7%)減少し、16億1,615万円となっている。収入率は、前年度と比較して現年課税分が同率の99.1%、滞納繰越分が3.8ポイント低下し23.9%、全体では0.3ポイント上昇し96.2%となっている。
また、繰越事業分などを除いた税外収入の収入未済額は、前年度より1,277万円(3.4%)増加し、3億8,457万円となっている。収入率は、前年度と比較し現年度分が0.9ポイント低下し96.6%、過年度分が0.2ポイント上昇し9.6%、合計では5.3ポイント低下し80.5%となっている。
不納欠損額は、前年度より842万円(6.5%)減少し、1億2,076万円となっている。
一般会計の歳出
一般会計の支出済額を前年度と比較すると、24億2,094万円(1.9%)増の1,326億6,905万円となっている。
目的別にみると、増加した主なものとしては、民生費が私立保育所等給付費の増加などにより17億8,510万円(3.7%)増の506億5,523万円、商工費がプレミアム付商品券発行事業費の増加などにより3億9,457万円(4.6%)増の89億8,436万円、消防費が常備消防人件費の増加などにより2億450万円(5.3%)増の40億7,369万円となっている。一方、減少した主なものとしては、災害復旧費が公共土木施設災害復旧事業費の減少などにより4億3,818万円(38.7%)減の6億9,304万円、土木費が地方道路交付金事業費の減少などにより1億7,860万円(1.3%)減の137億9,556万円などとなっている。
次に、性質別にみると、消費的経費は、維持補修費が1億6,325万円(11.5%)減の12億5,080万円となったものの、扶助費が13億678万円(3.9%)増の349億2,951万円、物件費が6億6,257万円(4.7%)増の148億9,149万円となったことなどにより全体では20億7,931万円(2.4%)増の873億7,324万円となっている。投資的経費は、災害復旧事業費が4億3,818万円(38.7%)減の6億9,304万円となったものの、普通建設事業費の単独分が8億5,944万円(20.4%)増の50億6,731万円となったことなどにより全体では4億6,667万円(4.0%)増の120億8,984万円となっている。また、その他の経費は、繰出金が8,044万円(0.9%)増の95億4,365万円となっものの、積立金が2億6,277万円(12.3%)減の18億6,546万円となったことなどにより全体では1億2,503万円(0.4%)減の332億596万円となっている。この結果、歳出全体に占める構成比率については消費的経費が0.3ポイント上昇し65.8%、投資的経費が0.2ポイント上昇し9.1%、その他の経費が0.5ポイント低下し25.1%となった。
不用額は、42億9,938万円となっており、前年度と比較して9億9,766万円(30.2%)増加している。また、予算現額1,452億1,870万円に対する割合である不用率は、近年2%台で推移していたが、前年度より0.6ポイント上昇し3.0%となっている。
特別会計
13特別会計の決算総額は、歳入が前年度より6億6,391万円(0.9%)増の725億9,476万円、歳出が11億1,317万円(1.6%)増の714億185万円となっている。
この結果、形式収支は、11億9,291万円となり前年度より4億4,926万円(27.4%)減少している。また、形式収支から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は11億8,904万円となり、前年度より2億7,537万円(18.8%)減少している。
一般会計からの繰入金については、廃棄物発電会計および病院事業債管理会計を除く11会計で、総額で95億4,365万円の繰入れを受けており、前年度と比較して8,044万円(0.9%)増加している。増加額の大きいものとしては、介護保険事業会計で2億9,596万円(7.4%)となっている。
また、繰入金の総額は、11会計の歳入総額705億4,468万円の13.5%を占めており、収入済額に対する繰入金の割合が特に高いのは大森山動物園会計で、収入済額5億4,434万円のうち4億30万円(73.5%)、市有林会計で収入済額2億2,015万円のうち1億1,839万円(53.8%)となっている。
収入未済額については、総額で49億4,179万円であるが、これから繰越事業に係る国庫支出金などの収入未済額を除くと、前年度より1億4,993万円(5.0%)減少し、28億3,782万円となっている。このうち最も収入未済額が多額となっているのは国民健康保険事業会計で、前年度と比較して1億2,745万円(4.7%)減の26億508万円である。次いで、介護保険事業会計の1億6,507万円(前年度比2,453万円、12.9%減)、母子父子寡婦福祉資金貸付事業会計の3,550万円(同68万円、1.9%減)、後期高齢者医療事業会計の3,003万円(同131万円、4.6%増)などとなっている。
不用額は、13億3,516万円となっており、前年度と比較して3億692万円(18.7%)減少している。また、予算現額750億8,250万円に対する割合である不用率は、1.8%となっており、近年は1.6%から2.7%の中で推移している。
意見
令和元年度の本市決算額をみると、一般会計の歳入については、地方消費税交付金や諸収入などが減となったものの、国庫支出金および地方交付税などの増により、前年度と比較して増加している。また、自主財源比率は前年度と比較してわずかに減少しており、平成21年度から50%を下回っている状況が続いている。
一方、歳出は、幼児教育・保育の無償化に伴う事業などにより扶助費が大幅に増となったほか、最終処分場排水処理施設大規模改修事業をはじめとする普通建設事業費の単独分が増となったことなどから、前年度と比較して増加した。
収支状況については、実質収支は黒字であるが、実質単年度収支は財政調整基金の取崩額が積立額を上回ったことから、4年連続で赤字となっている。
基金の状況については、財政調整基金と減債基金の残高は一般会計予算の5%以上を維持しているものの、これに地域振興基金、緑あふれるまちづくり基金、公共施設等整備基金を合わせた主要な5基金の合計残高をみると、前年度と比較して約28億円減少している。
今後の見通しに目を向けると、本市においては生産年齢人口(15~64歳)の減少が続いていることから、地域経済の縮小による個人・法人市民税などの減収が見込まれるほか、一般財源の不足を補う地方交付税についても、算定基礎である人口が減少することにより減額が予想される。
一方、老年人口(65歳以上)の増加に伴い介護・医療費の増大が見込まれるほか、「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:1)によると、老朽化した公共施設等の改修・更新費用がここ数年の間、増嵩するものと試算されている。さらに、今般の新型コロナウイルス感染症の流行は、法人関係地方税の減収や国税減収による地方交付税の原資不足を招くなど、歳入環境に大きな影響を及ぼすこととなり、アフターコロナを見据えた新たな行政需要と合わせ、行財政運営上の課題になっていくものと考えられる。
こうした中、市民生活に必要なサービス水準を保ちつつ、新たなニーズに対応し、本市が持続的かつ安定的に発展していくためには、歳入規模に見合った歳出構造への転換をさらに推進するとともに、将来の人口規模を想定し、財政規模を計画的に縮小していくことが必要となってくる。
そのためには、費用対効果の検証によるスクラップアンドビルドを徹底するとともに、「第3期・県都『あきた』改革プラン」(注:2)に基づき、効率的かつ効果的な事務執行と財源確保に向けた取組を着実に推進していく必要がある。加えて、「秋田市公共施設等総合管理計画」による施設の長寿命化、保有量の見直し、再編などを進め、将来の財政負担の軽減を図ることも重要である。
その上で、喫緊の課題である人口減少や少子高齢化への対策のほか、地域経済の活性化や交流人口の拡大を図るための施策を講じるなど、「新・県都『あきた』成長プラン」(注:3)に基づく選択と集中により、経営資源の最適配分に努めていく必要がある。
また、「秋田市中・長期財政見通し」(注:4)は、一般財源となる歳入や大型事業の精査などを踏まえて精度をさらに高めるとともに、中期的財政収支の中で年度間調整を行うなどにより、実効性のある財政フレームとして活用し、段階的に歳出構造の転換がなされていくことを望むものである。
なお、パンデミックや大規模災害の発生の際には、市民の生命・財産を守るとともに、地域経済活動の早期回復に向けた取組を最優先に進めることは論をまたない。こうした危機管理への的確な対応は、安定的な財政運営があってこそ可能であり、臨機に活用できる財源である財政調整基金等において一定残高を確保するなどの配慮も必要である。
不用額については、国の経済対策の補助内示の遅れなど外的な要因もあるものの、前年度と比較して増加しており、毎年度、多額となっている。さまざまな行政需要に応えるためには、不用額の発生を抑えて市の財源を有効に活用していくことが重要である。したがって、予算の見積りは可能な限り精緻に行うとともに、不用額の発生理由を的確に把握・分析し、予算編成や予算執行に活かしていくことが必要である。
市債について、市債現在高は減少しており、臨時財政対策債を含む一般会計の令和元年度末現在高は、翌年度の一般会計当初予算総額(1,396億円)を下回っており、改善傾向を示している。また、実質公債費比率をはじめとする公債費関係指標もおおむね改善しているが、類似都市との比較では良好な数値とはいえないことに留意する必要がある。一方、臨時財政対策債を除いた、建設事業へ充当する市債借入額は、前年度と比較して増加に転じている。今後、老朽化した公共施設等の更新需要が高まり、市債の増加が想定されることから、改めて、市債の発行に当たっては借入額が償還額を上回らない範囲にとどめることを堅持し、将来世代に過度な負担を強いることのないよう、管理していく必要がある。
収入未済額は、市税などの債権管理がおおむね適切に行われていることから年々減少しているものの、依然として多額である。市民負担の公平性・公正性の確保を図る観点から新たな発生の防止に努めるとともに、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導を行うなど、さらなる縮減に努められたい。また、不納欠損処分は、十分な調査の上、慎重かつ適正に対処されたい。
特別会計については、廃棄物発電会計と病院事業債管理会計を除く11会計で一般会計からの繰入れを受けている。その額は前年度と比較してわずかに増加しており、歳入総額の1割を超える。特に、大森山動物園会計は7割を超え、市有林会計では5割を超える額となっている。特別会計は、一般会計とは区分して特定の歳入をもって特定の歳出に充てるものであることから、さまざまな手法により自己収入の増加を図るとともに、さらなる経費節減に努め、一般会計からの繰入金は必要最小限にとどめるよう求めるものである。
収入未済額については、繰越事業にかかる分を除くと前年度と比較して減少しているものの、依然として多額であることから、一般会計と同様にその縮減に鋭意努められたい。また、不納欠損処分は、十分な調査の上、慎重かつ適正に対処されたい。
終わりに、市当局においては、リスク管理体制の強化を図るため、現在実施している内部統制について、国の技術的助言を踏まえた対策を取り入れた新たな方針の策定と運営体制の構築に取り組んでいるところであり、その体制を早期に整備するとともに実効ある運用のもと、改めて、職員に法令等の遵守および適正な事務執行に係る基本的認識の徹底を図り、不適切な事務処理の発生を防止するように努められたい。
また、職員一人ひとりにおいては、本市を取り巻く社会経済情勢が依然として厳しいものであることを常に念頭に置き、自らの役割と責務を再認識した上で、適正かつ公正な事務執行のもと、ワーク・ライフ・バランスに留意しつつ、コロナ禍がもたらす新たな常態・常識による市民生活や社会環境の変化への対応にも意を用い、市民福祉の向上のために業務を精励し、次世代に引き継ぐことができる元気な秋田市づくりに邁進することを切望するものである。
注:1 秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、市民ニーズへ適切に対応するとともに、将来負担の軽減を図ることを目的に、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間として公共施設等マネジメント方針等を、平成29年3月に定めたもの。
注:2 第3期・県都『あきた』改革プラン(第7次秋田市行政改革大綱)
人口減少・少子高齢社会の進行に適応した持続可能な行財政運営の実現に向け、平成31年度から令和4年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革や成果指標を平成31年1月に定めたもの。
注:3 新・県都『あきた』成長プラン(第13次秋田市総合計画)
市政推進の基本方針として、時代の変化に合わせ、目指すべき将来の姿やまちづくりの方向性を示すもの。人口減少・少子高齢化の進行、厳しい財政状況など、環境変化や課題を踏まえ、平成28年度から令和2年度までの5年間を計画期間として平成28年3月に定めたもの。
注:4 秋田市中・長期財政見通し
中・長期的な財政収支の見通しを明らかにすることにより、将来に向けた課題と対応を把握するとともに、財政運営の健全性を確保するための指針となるもの。毎年度当初予算を基礎として、翌年度から10年間の財政を試算している。
詳細については、添付ファイル「令和元年度一般会計・特別会計決算および基金運用状況審査意見書」でご確認ください。
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