令和5年度一般会計・特別会計決算審査意見
審査の対象
- 令和5年度秋田市一般会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市土地区画整理会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市市有林会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市市営墓地会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市中央卸売市場会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市公設地方卸売市場会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市大森山動物園会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市廃棄物発電会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市病院事業債管理会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市学校給食費会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市国民健康保険事業会計(事業勘定)歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市母子父子寡婦福祉資金貸付事業会計歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市介護保険事業会計(保険事業勘定)歳入歳出決算
- 令和5年度秋田市後期高齢者医療事業会計歳入歳出決算
- 令和5年度各会計実質収支に関する調書
- 令和5年度財産に関する調書
審査の期間および場所
令和6年7月3日から同年8月28日まで
(於:監査委員室および監査委員事務局)
審査の方法
令和5年度秋田市一般会計・特別会計歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書および財産に関する調書は、関係法令に基づいて調製されているか、計数が関係する証書類と符合するかを確認した。
また、秋田市監査基準に準拠し、関係書類の閲覧、帳簿記録について関係者から説明を求めるなどの手続によって実施し、予算の執行状況の適否について審査した。
審査の結果および意見
審査に付された各会計歳入歳出決算および決算附属書類は、いずれも関係法令に基づいて調製されており、計数は証書類と符合し正確であると認めた。
また、予算の執行は、おおむね適正であることを認めた。
決算総額
本年度の一般会計の決算額は、前年度に比較して、歳入が41億4,456万円(2.8%)増の1,539億3,751万円、歳出が39億279万円(2.6%)増の1,514億7,215万円となっている。これに特別会計を加えた決算総額は、歳入が81億6,764万円(3.5%)減の2,285億3,112万円、歳出が83億8,578万円(3.6%)減の2,240億3,681万円となっており、いずれも前年度を下回っている。
一般会計では、歳入歳出差引額(形式収支)が24億6,536万円となり、前年度の22億2,359万円を上回っている。また、翌年度への繰越財源は、前年度の7億6,254万円に対し、本年度は10億1,547万円となっており、形式収支から翌年度への繰越財源を控除した実質収支は、前年度より1,116万円(0.8%)減少して14億4,989万円の黒字となっている。これに特別会計を加えた実質収支の総額は、前年度より3,479万円(1.0%)減少して、34億7,884万円の黒字となっている。
普通会計における財政状況
地方財政統計上の統一会計区分である普通会計における決算収支の状況は、実質収支が18億9,590万円の黒字、前年度実質収支を差し引いた単年度収支が5,919万円の黒字となっている。これに財政調整基金の積立金および取崩額、市債繰上償還額を加減した実質単年度収支は、11億1,339万円の赤字となった。
主な財政指標は、前年度に比較して、実質収支比率、経常一般財源比率、義務的経費比率、公債費負担比率は良化し、財政力指数、経常収支比率、実質公債費比率は悪化している。
一般会計の歳入
一般会計の収入済額のうち自主財源は、前年度に比較して2億301万円(0.3%)増加し、618億4,603万円となっている。これは、諸収入が地域総合整備資金貸付金元金収入の減などにより8億3,744万円(9.6%)、財産収入が一般土地売払収入の減などにより2億2,127万円(47.9%)、それぞれ減少したものの、繰入金が財政調整基金繰入金の増などにより9億3,621万円(23.4%)、寄附金がふるさと納税の増などにより1億7,228万円(45.8%)、それぞれ増加したことなどによる。
一方、 依存財源は 、前年度に比較して39億4,155万円(4.5%)増加し、920億9,148万円となっている。これは、国庫支出金が子育て世帯への臨時特別給付金給付事業費補助金などの減により10億5,360万円(3.2%)、法人事業税交付金が法人事業税の減により1億201万円(14.7%)、それぞれ減少したものの、地方交付税が普通交付税および特別交付税の増により30億754万円(13.7%)、県支出金が災害救助費負担金の増などにより13億6,266万円(13.3%)、市債が清掃施設整備債の増などにより7億1,590万円(5.8%)、それぞれ増加したこと等による。
自主財源と依存財源を合計した歳入総額は、41億4,456万円(2.8%)増加して、1,539億3,751万円となっている。
自主財源比率は、依存財源である地方交付税や県支出金が増加したことなどにより、前年度の41.2%から1.0ポイント低下して、40.2%となっている。
収入未済額は、前年度に比較して9億7,043万円(29.7%)増加し、42億3,493万円となっており、これから繰越事業に係る国庫支出金や県支出金などの収入未済額を除くと、6,439万円(3.8%)減の16億3,134万円となっている。
このうち、市税の収入未済額は、前年度に比較して9,521万円(7.5%)減少し11億8,194万円となっており、収入率は、現年課税分が0.1ポイント低下して99.2%、滞納繰越分が4.8ポイント上昇して24.1%、全体では0.4ポイント上昇して97.1%となっている。
また、繰越事業分などの収入未済額を除いた税外収入の収入未済額は、前年度に比較して3,082万円(7.4%)増加し、4億4,939万円となっており、収入率は、現年度分が3.1ポイント上昇して94.8%、過年度分が1.7ポイント低下して5.9%、合計では0.9ポイント上昇して72.3%となっている。
不納欠損額は、前年度に比較して8,486万円(37.3%)減少し、1億4,252万円となっている。
一般会計の歳出
一般会計の支出済額は、 前年度に比較して39億279万円(2.6%)増加し、1,514億7,215万円となっている。
目的別にみると、増加した主なものは、民生費が住民税非課税世帯物価高騰支援給付金給付事業などにより38億5,726万円(6.8%)増の606億7,451万円、教育費が日新小学校増改築等事業などにより9億8,317万円(7.7%)増の137億7,069万円 、 災害復旧費が豪雨災害等による公共土木施設災害復旧事業等により9億5,377万円(555.2%)増の11億2,555万円等となっている。
一方、減少した主なものは、公債費が市債元金償還金の減少などにより7億1,425万円(5.3%)減の128億8,447万円、土木費が除排雪関係経費の減少などにより6億2,508万円(3.8%)減の156億7,630万円、商工費が新型コロナウイルス感染症対策プレミアム付商品券発行事業の終了などにより6億969万円減の89億2,840万円等となっている。
次に、性質別にみると、消費的経費は、物件費が9億8,094万円(4.9%)減の190億1,879万円、維持補修費が6億2,842万円(24.9%)減の18億9,740万円となったが、扶助費が24億4,027万円(6.2%)増の416億8,918万円となったことなどにより、全体では10億2,611万円(1.0%)増加して、1,018億8,408万円となっている。
投資的経費は、災害復旧事業費が13億1,790万円(767.2%)増の14億8,968万円、普通建設事業費補助分が6億299万円(12.4%)増の54億5,625万円、普通建設事業費単独分が4億8,947万円(5.6%)増の92億7,760万円となったことなどにより、全体では24億2,259万円(16.8%)増加して、168億604万円となっている。
その他の経費は、公債費が7億1,519万円(5.3%)減の128億8,353万円となったものの、積立金が8億8,134万円(79.9%)増の19億8,469万円、繰出金が2億3,513万円(2.4%)増の102億2,572万円となったことなどにより、全体では4億5,409万円(1.4%)増加して、327億8,203万円となっている。
この結果、歳出の構成比率は、消費的経費が1.0ポイント低下して67.3%、投資的経費が1.3ポイント上昇して11.1%、その他の経費が0.3ポイント低下して21.6%となっている。
不用額は、前年度に比較して23億5,504万円(37.6%)増加し、86億2,234万円となっており、予算現額1,698億6,236万円に対する割合である不用率は、1.2ポイント上昇して5.1%となっている。
特別会計
13特別会計の決算総額は、前年度に比較して、歳入が123億1,220万円(14.2%)減の745億9,361万円、歳出が122億8,858万円(14.5%)減の725億6,466万円となっている。
この結果、形式収支および実質収支は、ともに20億2,895万円となり、前年度に比較して、いずれも2,363万円(1.2%)減少している。
一般会計からの繰入金については、廃棄物発電会計および病院事業債管理会計を除く11会計の総額が102億2,572万円となっており、前年度に比較して、2億3,513万円(2.4%)増加している。増加額が大きい会計は市営墓地会計で、1億715万円(殆増)の増となっている。
また、繰入金の総額は、13会計の歳入総額745億9,361万円の13.7%を占めている。収入済額に対する繰入金の割合が高い会計は、大森山動物園会計が収入済額4億8,620万円のうち3億8,591万円(79.4%)、市有林会計が収入済額2億1,481万円のうち1億4,529万円(67.6%)、市営墓地会計が収入済額1億7,276万円のうち1億1,183万円(64.7%)となっている。
収入未済額は、前年度に比較して2億9,046万円(8.9%)減少し、29億8,602万円となっている。繰越事業に係る国庫支出金などの収入未済額を除いたもののうち、最も収入未済額が多額である会計は国民健康保険事業会計で、前年度に比較して、1億6,695万円(8.0%)減の19億2,773万円となっている。次いで、介護保険事業会計の1億1,973万円(前年度比310万円、2.7%増)、後期高齢者医療事業会計の3,802万円(同122万円、3.3%増)などとなっている。
不用額は、前年度に比較して、3億6,450万円(16.9%)減少し、17億9,086万円となっており、予算現額755億6,933万円に対する割合である不用率は、昨年度と同率の2.4%となっている。
意見
令和5年度における我が国の経済は、コロナ禍から正常化に向かう中、緩やかに回復しつつあったものの、世界的な金融引き締めなどに伴う海外景気の下振れに加え、長期化する物価上昇が家計や企業経営を圧迫する状況であった。
さらに本市においては、7月の豪雨などにより、市民生活や各種産業に甚大な被害を受け、災害復旧・復興に取り組んだ1年であった。
このような状況下における令和5年度の本市決算額をみると、一般会計の歳入については、国庫支出金や諸収入などが減少したものの、地方交付税や県支出金などが増加したため、前年度より増加した。
また、歳入総額に占める自主財源と依存財源の割合は前年度並みであり、自主財源比率は依然として50%を下回る状況が続いている。
一方、歳出については、公債費の市債元金償還金や土木費の除排雪関係経費の減や、商工費の新型コロナウイルス感染症対策プレミアム付商品券発行事業の終了などにより減少したものの、民生費の住民税非課税世帯物価高騰支援給付金給付事業や、教育費の日新小学校増改築等事業、豪雨災害等による公共土木施設災害復旧事業の増などにより、前年度より増加した。
この結果、実質収支は黒字となったものの、実質単年度収支については、基金の取崩額が積立額を上回ったため、赤字となっている。
また、財政調整基金と減債基金の主要2基金の合計残高は41億6,412万円となり、前年度に比較して12億7,404万円(23.4%)減少している。
本市では、第14次秋田市総合計画「県都『あきた』創生プラン」(注:1)に設定する将来都市像の実現に向けて、将来都市像ごとの政策および施策に取り組むとともに、人口減少対策を最重要課題と位置づけ、経営資源を一体的かつ集中的に投入する分野として創生戦略事業を掲げ、予算を重点配分し各種施策に取り組んでいるところである。
一方、今後の財政見通しとして、地方交付税・臨時財政対策債の微減傾向や市税・市債の減少などにより歳入の減少が見込まれるほか、歳出では、大規模事業が令和7年度までは高い水準で推移し、それ以降は減少するものの、11年度以降は、一般廃棄物処理施設の更新などにより増加するものと推計されていることから、厳しい財政状況が継続していくものと考えられる。
こうした中、市民生活に必要な行政サービスの水準を維持しつつ、健全な財政運営を確保していくためには、基金の取崩しに依存しない、歳入規模に見合った歳出構造を堅持することが必要である。
このため、全ての施策・事業について、その成果をしっかりと評価・検証した上で、前例にとらわれることなく、取捨選択や見直しを徹底し、歳出を抑制するなど、限られた財源の適切な活用に努められたい。
また、老朽化した公共施設等の改修・更新に当たっては「秋田市公共施設等総合管理計画」(注:2)に基づき、施設の長寿命化や保有量の見直しなどを進め、将来の財政負担の軽減を図られたい。
同時に、臨機に活用可能な財源である財政調整基金については、いかなる非常事態に陥っても、市民の生命・財産の保護や生活の再建、地域経済活動の再興などに迅速に取り組めるよう、一定残高の着実かつ計画的な確保に向けて、特段の配慮が必要である。
不用額については、毎年度多額となっているが、市民や企業等にとって必要不可欠な行政需要にタイムリーに応えるためには、過大な不用額の発生を抑えて財源を有効に活用していくことが重要である。
このため、予算の見積りを可能な限り精緻に行うとともに、不用額の発生理由を的確に分析し、予算の編成・執行に活かしていくことが必要である。
市債については、前年度に比較して臨時財政対策債を除いた借入額は増加している。
公共施設の老朽化対策などにより市債の需要の継続が一定程度見込まれることから、発行に当たっては、将来世代に過度な負担を強いることのないよう、プライマリーバランスに留意し、事業の必要性に対する的確な判断と年度間調整などにより、借入額が償還額を上回らない範囲にとどめるとともに、適切に管理されたい。
また、公債費関係指標については、公債費負担比率は良化しているものの、実質公債費比率は悪化しており、いずれの指標も、類似都市と比較すると良好ではなく、注視していく必要がある。
収入未済額については、市税などの債権管理がおおむね適切に行われていることから減少傾向にあるものの、依然として多額であり、市民負担の公平性・公正性の確保を図る観点から、引き続き、新たな未収金の発生を防止することはもとより、未納者個々の状況に応じたきめ細かい納入指導などによる更なる縮減に努められたい。
また、不納欠損処分に当たっては、十分な調査の上、慎重かつ適正に対処されたい。
特別会計については、廃棄物発電会計および病院事業債管理会計を除く11会計において一般会計からの繰入れを受けており、その額は前年度に比較すると微増している。
特別会計は、一般会計と区分して特定の歳入をもって特定の歳出に充てるものであり、法定内の繰入れについては認められているものの、事業の精査と創意工夫により自己収入の増加を図るとともに、更なる経費節減に努め、一般会計からの繰入れを必要最小限にとどめるよう求めるものである。
収入未済額については、おおむね適切な債権管理により、前年度に比較すると減少しているものの、依然として多額であることから、新たな発生の防止と縮減に努められたい。
また、不納欠損処分に当たっては、一般会計と同様に十分な調査の上、慎重かつ適正に対処されたい。
昨年の豪雨災害や近年の新型コロナウイルス感染症の流行のような非常時においては、避難所運営や災害復旧、感染拡大防止などの対応を迅速に行うとともに、通常の市民サービスの提供も継続しなければならない。
このため、日頃から非常事態への対応も想定した上で、秋田市デジタル化推進計画【第2.0版】(注:3)に基づき、AI・RPAなどデジタル技術の活用による事務の効率化とともに事業の選択と集中により、限られた経営資源で最大の効果を発揮することが肝要であり、今後も第8次秋田市行政改革大綱「第4期・県都『あきた』改革プラン」(注:4)に掲げた行財政改革を推進し、次の世代に引き継げる元気な秋田市づくりにまい進されたい。
そのためには、職員がそれぞれの能力や個性を十分に発揮できるよう、働きやすい職場環境の整備に一層留意するとともに、一人ひとりが、将来世代に対して責任ある立場にあることを胸に刻みながら、職務の適正執行に努められたい。
(注:1 )14次秋田市総合計画「県都『あきた』創生プラン」
市政運営の基本方針として、時代の変化に合わせ、目指すべき将来の姿やまちづくりの方向性を示す計画。人口減少・少子高齢化をはじめとした本市を取り巻く課題や、新型コロナウイルス感染症の影響を含む社会の変容などを踏まえ、令和3年度から7年度までの5年間を計画期間として令和3年3月に定めたもの
(注:2)秋田市公共施設等総合管理計画
公共施設等の総合的かつ計画的な管理を推進し、市民ニーズへ適切に対応するとともに、将来負担の軽減を図ることを目的に、平成29年度から令和8年度までの10年間を計画期間として公共施設等マネジメント方針等を平成29年3月に定め、令和4年1月に中間年度の見直しを行ったもの
(注:3)秋田市デジタル化推進計画【第2.0版】
人口減少や高齢化に伴う生産年齢人口の減少などの本市の社会課題についてデジタル技術の活用により解決するため、第14次秋田市総合計画の「ともにつくり ともに生きる 人・まち・くらし」という基本理念のもと、本市の情報化施策の方向性を示す「秋田市デジタル化推進計画」を見直し、令和6年度から8年度までの3年間を計画期間として令和6年4月に改定を行ったもの
(注:4)第8次秋田市行政改革大綱「第4期・県都『あきた』改革プラン」
人口減少・少子高齢社会の進行など、市政を取り巻く社会情勢の変化に対応し、持続可能な行財政運営を実現するため、「公共サービスの改革」「財政運営の改革」「組織・執行体制の改革」の3つの視点に基づき、令和5年度から8年度までの4年間の計画期間に実施すべき改革の項目を令和5年1月に定めたもの
詳細については、添付ファイル「令和5年度一般会計・特別会計決算および基金運用状況審査意見書」でご確認ください。
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