平成30年度 秋田市エイジフレンドリーパートナー研修会
平成31年1月21日(月曜日)、秋田市役所3階 中央市民サービスセンター洋室4にて、エイジフレンドリーパートナーを主な対象とした研修会を開催しました。
高齢者にやさしい地域社会づくりの推進にあたり、超高齢社会における企業の取組の可能性と、高齢者をはじめとする市民のニーズに対応したまちづくりについて考えることを目的に実施し、パートナーをはじめとする事業者・団体およびテーマに関心のある一般市民53名(パートナー事業者・団体27名、パートナー以外の事業者11名、市民15名)が参加しました。
参加者からは、「単なる営利目的でもボランティアでもない持続可能な取組に共鳴しました」「地域と共存していることがすばらしい」「他事業者の取組をよく知ることができよかった」などの声をいただきました。
第1部 講演「これからの社会に求められる”新たな企業の役割”をさがして」
今回は、秋田県南部でスーパーマーケット「スーパーモールラッキー」を経営する(株)マルシメの代表取締役社長の遠藤宗一郎氏を講師に迎えました、
第1部では、高齢化が進む現状を新しいビジネスのチャンスと捉え、住民のニーズを取り入れ、地域課題の解決を目指した、県南リビングラボの活動事例などについて、講演を行っていただきました。
要旨
(株)マルシメの置かれていた状況
(株)マルシメを取り巻く環境として、人口減少により、客数が減少したことに加え、店舗周辺への競合店進出により、客が分散、客数が減少し、売上も減少した。
競合店に対抗し、客足を伸ばそうと行った安売りにより、利益率が悪くなり、会社の収益状況が悪化。業績を立て直すための資金繰りの過程で、不採算店舗、不採算部門を閉鎖し、それに伴い、リストラを実施。このリストラを行う際の面談時に、会社に対する感謝や思いを語る社員と向き合い、今後はリストラを行わない会社経営の必要を実感。従業員、地域とともに成長するために、永続的に運営できる会社を目指した。
地域に支えられてきた会社の成長は、地域の発展とともにある。自分の会社、商売を通じて、まちを元気にすることはできないのかと考えるようになった。
無料シャトルバス「お買い物バス」
高齢者が自家用車に乗り合いで買い物に訪れる姿にヒントを得て、2011年12月、県の補助を活用し、試験的に「お買い物バス」1路線を運行。他地域からの要望もあり、路線を増加し、2018年11月現在週5日、14路線を運行し、延べ20,000人以上が利用。住民のなくてはならない足となっているうえ、車内や店内で会話の機会が増え、高齢者の元気づくりにもつながっている。
また、増田町狙半内(さるはんない)地区という雪深い、限界集落に、住民同士が助け合いながら生活している「狙半内共助運営体」があるが、その運営体と、シャトルバスの運行や災害時には援助するという協定を結んでいる。
シャトルバスがきっかけで、いろいろな団体と関わりができ、NPO法人から新たに話を受けるなど、地域ニーズの掘り起こしにつながった。
「お客様サポートサービス」
シャトルバス利用者から、草刈り、家の補修など、こんなサービスあったらいい、こんなことやってほしいという声を伺う機会ができた。この困りごとのハブになれないかと考え、(株)マルシメが御用聞きのように困りごとを全部集めて、地域の業者(工務店、ガス、水道など現在8社)に依頼をするサービスを開始。住民がいざという時に頼れる場所としてあるほか、地域でできることは地域で行う、地域で循環させるネットワークができた。
「高齢者向け配食サービス」
食事の準備が大変になり、困っている高齢者が増え、栄養バランスのとれた食事を自宅に届ける配食サービスを開始。離れて暮らす子どもから、配食の依頼がくることもある。食事を届けながら見守りを行っているが、さらに、購入したい商品の要望の受付も始めている。
県南リビングラボ実施のきっかけ
(株)マルシメ単一企業では、(株)マルシメだけの価値観、考えが固執してしまい、本当に顧客、地域がそのニーズを持っているかわからない。地域のさまざまなニーズを汲み上げるためには、地域の方々の意見を取り入れながら、一緒に取り組んでいかなければならない。社内に「CSR推進委員会」を設置。
県南リビングラボの実施
横手・湯沢を中心に活動する市民活動団体や事業所の参加者と(株)マルシメの社員が一緒に話し合い、地域の現状について考え、地域課題を解決するためのアイデアを検討した。地域の方と考えたアイデアをCSR推進委員会が企画化し、(株)マルシメの社員およびCSRに関心のある企業などを参集したセミナーでプレゼンテーションを行い、実施する事業について決定する審査会とした。店内に市民活動の場を提供する「ラッキーサークル」、引きこもりの方や障がいのある方など、社会的生活に困難を抱える方が買い物など行うことで社会との緩やかなつながりを持つ機会を提供する「らいくステップ」の2事業が採択された。
これからの社会に求められる、企業の役割
企業は、社会にある顕在的、潜在的なニーズから解決策を見出すことで、社会と双方に利益がある関係を築くことができると考える。人口減少や少子高齢化の進行など脅威と感じること、困難が多いが、この機会に新しい時代に合ったビジネスモデルを作ることが、社会に求められる企業の役割であり、持続可能な秋田、持続的に成長していける秋田ができていくと考える。
質疑応答
質問:リビングラボの取組を実際に実施してみて、こういった意見やニーズは予想していなかったという事や、これは実際やってみないと教えてもらえなかったという声はどのようなものがあったか。
回答:湯沢市にある団体の方で、孤独な高齢者の方を一人で見守っている方がいる。その方の話では、高齢者の中には、生活保護を受けられず、介護をしてもらえないという人もおり、社会問題になってもいいはずだが、あまり表に出てこない。こういう機会を通じ、この問題をぜひ外に出してほしい、ということであった。自分の地域の社会的に超弱者ともいえる方に対して、たった一人の人が世話をしている現状があるという事を知り、そういうところをしっかりフォーカスしていく必要があり、マスコミ、行政もそうだが、企業もそういった人たちがいるという事を認識し、情報を共有したほうがよいと感じた。
質問:地域の活動を本当によく行われていると感じた。(株)マルシメさんのような地域の企業が全面的に応援してくださると商工会の方も力になると思う。地元のイベントなどに社員もお手伝いするというお話が大変よいことだと思ったが、(株)マルシメや地域の行事に社員を参加させるということか。
回答:お祭りなどの設営から関わり、出店する業者さんが少ないようであれば、自社でも綿あめやおもちゃなどを出店し、イベントを活気づけるようにしている。なお、商工会も祭りなどには関係していて、他の経営者の方が参加する。そのため、参加したイベントで自社の社員と他の経営者の方がつながりを持つことで、後々ほかの機会で協力して物事を進められたケースもある。
質問:企業なので、いろいろ物事を進めていく間に、どういう項目、どういう評価でどのぐらいのスパンで評価していくか、難しいようであれば、そういった指標を立ててデータを出しているかという事を教えていただきたい。
回答:現段階では1年しか行っていないため、定量的に評価(具体的な目標件数の達成)するという事はできていない。今各事業に対して、それぞれKPI(重要業績評価指標)を設けて、評価し、それを続けるか続けないかも含めて、どの項目、アンケートを取るのか、実際数字として出てきているものをKPIとしてあげるのか、どれにしていくかという話をしている最中で、ぜひ逆に教えていただけるとありがたいです。
質問:前職をやめて地元に戻り、この地域を元気にしなければという思いが背景にあって、こういった取り組みをされているという事だったのですが、その当時に思い描いていたところと、今を比べて、当時の構想を100%とすると、今は何%ぐらい進んでいるか。そして、次に仕掛けることを教えてください。
回答:12年前ぐらいに帰ってきた当時は会社の業績が本当に悪かったが、いろいろな問題をクリアしていく中で、30%ぐらいだと思っている。何か見えてきた部分はあり、こういう取組をしていく中で、地域の頑張っていこうという人たちと一緒に組んで、なにかをやるということをやっていて、もしかしたら、地域のプラットホームとして、マルシメという会社を使って、いろいろなビジネスを生んでいったり、ビジネスを使って地域の課題を解決したり、そういう地域の引っ張り方ができるのではないかと感じている。
第2部 パネルトーク・交流会
「私たちの知りたいシニアニーズのこと」をテーマに、パートナー事業者の(株) 南山デイリーサービス、イオンリテール(株)イオン秋田中央店をゲストスピーカーとして迎え、第1部で登壇いただいた遠藤氏も交えたパネルトークで各事業所での取り組まれているサービスをご紹介いただき、最後に参加者同士の交流を図る、交流会を行いました。
パネルトーク
テーマ
「私たちが知りたいシニアニーズのこと」
モデレーター
竹下 香織 氏(オルウィーヴ合同会社 代表社員)
ゲストスピーカー
遠藤 宗一郎 氏(株式会社マルシメ 代表取締役社長)
南山 泰政 氏(株式会社南山デイリーサービス 代表取締役社長)
中条 学 氏(イオンリテール株式会社イオン秋田中央店 人事総務課長)
要旨
(株)南山デイリーサービスの取組
本社は、青森県八戸市。森永乳業の乳製品、牛乳やヨーグルトの宅配を行っている会社。宅配サービスでは、単に商品を届けるのではなく、高齢者が医療や介護に頼らない健康な食生活ができるように、管理栄養士に協力いただき、毎月レシピ宅配便という健康食のレシピを届けたり、地元の大学の栄養学の先生から健康についての情報を届けている。また、市町村と協定の締結や連携をし、高齢者の見守りサービス、定期確認サービスというものを顧客に無料で提供している。なお、青森の県南では高齢者の買い物支援事業として、地元スーパーと連携し、移動スーパーの「とくし丸」を走らせている。
前述の内容については、厳しい経営の中、顧客満足度を図るために、お客様に対するアンケート調査を行ったところ、顧客の7割が高齢者だということが明確になり、その結果を踏まえて、さらに生活に関するアンケート、最終的には聞き取りも含めて実施したうえで、サービスにつながったものである。
イオンリテール(株)イオン秋田中央店の取組
秋田県は高齢化35%と全国一、世界一に多いことから、秋田県でもしビジネスモデルができれば、全国展開できると考えている。認知症の方への理解を深めるため、認知症サポーター養成講座を受講。認知症、また高齢者の方がどのようなことでお困りになっているかという事を、実態として社員に教育していく目的でもある。エイジフレンドリーパートナーとして、登録をしたことをチラシに出したところ、数値には出せないが、車いすの方のご利用頻度が増えてきている、という話が出るようになってきた。車いすのご利用の方の頻度が上がってきたことにより、車いすの方が見える目線、商品を手に取るときにはどういった高さと位置がいいかという気づきという形で、サービス提供に反映されている。また、冬季の運動不足解消のため、毎月15日に保健所と協力し、「いいあんべぇ体操」というのを館内で実施している。秋田中央警察署、他企業にも協力を仰ぎ、企業には商品提供していただき、健康活動と販売に生かしている。
(株)南山デイリーサービスがアンケートを行って、見えてきたことは?
高齢者の方は人のお世話にはなりたくないという方が多い。重い形ではなくて、お声がけをする、という負担にならないような形で、家族と同居しているが、日中は独居になる方や一人暮らしの方の不安を解消する取組を行っている。これは、東日本大震災で被災した際に、スタッフが顧客に、元気ですか、大丈夫でしたかと1件1件訪問したところ、非常に喜んでもらい、実際に自分たちがお客様のお役に立てるということが、実際に行動するスタッフの使命感となる事として学んだ。このことは、その後のいろいろなサービスにつなげていこうという事にも生かされている。
社会貢献は、先行投資、目に見えないところに向かっていくところがあるが、実際には売上や利益が上がる状況が見えてきた中で、何か地域の課題解決する、あるいは、高齢者向けサービスを充実していくことに対して経営戦略的なものを打ち出せるようなものが見えたか?
地域課題を経営戦略にもっていくことは、地域の企業にとっては非常に大事である。今日やることが3年後、5年後など長期的なスパンで返ってくるため、すぐに結果が見えないが、小さなことでも少しずつ取り組んでいくことが、将来につながる。困りごとにビジネスのヒントがあり、それを改善することで社会をもっとよくしていく仕組みを見つけられる。((株)マルシメ)
総括
行政との連携は大きなキーワードであるが、登壇いただいた3社の取組にもあったように、地域とともに取り組み、1社だけではなく、時には行政以外、民間同士の連携で、他社とも取り組むことによって、地域の課題を解決しながら、自社の繁栄や地域の繁栄につなげられると考える。
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