令和元年度秋田市エイジフレンドリーパートナー研修会
令和元年10月8日(火曜日)、秋田市役所5階 正庁にて、エイジフレンドリーパートナーを主な対象とした研修会を開催しました。
高齢者にやさしい地域社会づくりの推進にあたり、ビジネスを通した地域課題の解決について学ぶことを目的に実施し、パートナーをはじめとする事業者・団体およびテーマに関心のある一般市民83名(パートナー事業者・団体37名、市民46名)が参加しました。
参加者からは、「採用の取組などシニア活用について参考になった」「リサーチの分析結果に基づく説明が分かりやすかった」「高齢化が悪いことばかりではないように思えた」などの声をいただきました。
第1部 講演「シニア活躍に向けて~雇用への理解と人材活用について」

今回は、(株)リクルートジョブズ ジョブズリサーチセンター センター長の宇佐川邦子氏を講師に迎えました。
第1部では、人手不足を乗り越えるための新たな雇用の形やシニア活躍推進のポイント、シニア活躍の事例などについて、講演を行っていただきました。
要旨
Ⅰ.国内における労働人口問題
人口構造の変化と労働力人口
人口減少が進み、少子高齢化により人口ピラミッドは崩れてきている。この人口構造の変化は、労働力人口にも影響し、働き手の減少、若年層の減少と高齢化の進行に繋がっている。
潜在労働力と、期待されるシニア層の活躍
潜在労働力の割合と実際の就業率が、男性はほとんど差がないが、女性は10%の余白があり、全国で約200万人程度の既婚女性の労働力が眠っていると言われている。また、シニアの就業率は、60歳ぐらいまで80~90%であるが、70歳前になると3分の1に下がる。体力や労力は数年でそれほど変わらないはずで、高齢者に目を向けた方が採用の分母は大きい。加えて、既に就業経験があると考えると、社会性も高く、教育の観点などをクリアできている点は大きいため、効率も非常によい。
人材不足を解消するための4つの方法
- 働く女性を増やす
- 働くシニアを増やす
- 日本で働く外国人を増やす
- 生産性を向上する
生産性向上を徹底して行ったうえで、人でしか担保できない部分の仕事だけを切り出し、作り出して、いかにシニアや女性が活躍できる形にしていくかが大きなポイントになる。外国人材は非常に注目されているが、現在就労ビザで働いている人は21万人しかいない。潜在労働力の女性200万人、シニアは75万人おり、比較にならないほど分母が違う。
秋田県の現状
男性は全国平均とほぼ同じ。女性は結婚や出産後も働く方が多く、就業率が日本の平均より一際高い。ただし女性に関しても、20~59歳までは就業率が高いが、60歳を超えると全国平均並みに急激に下がる。また、有業者の平均年齢は全国平均の46.1歳に対し、秋田県は48.9歳で、平均をはるかに超えており、東北の他県と比較してもかなり高い。ただ、60歳前の就業率は高いが、65歳を超すと他県より下がる。65歳や70歳が一区切りで引退というイメージや雰囲気を変え、働き続けられる風土や地域の雰囲気を作っていくことが大事である。
Ⅱ.シニア雇用への理解
シニア雇用の実態
何歳まで働きたいか?
60歳以上を対象とした調査で、現在の年齢よりプラス5~10歳ぐらい働きたいと回答しており、70歳を超えても働きたいと考えている方が約7割いる。
シニア就業意欲と企業とのギャップ
働きたいシニアのうち、5年以内に実際に仕事を探し、新しい仕事が決まった方は約42%。探したが結局見つからなかった人が3人に1人。また、企業側に60歳以上を採用するのに積極的か尋ねると、積極的とすごく積極的を足しても3割、非積極的が7割である。
シニアが仕事探しで感じたこと
新しく仕事が見つかった方を対象とした調査でも、「年齢制限が低い」、「職種が限られている」、「そもそも求人数が少ない」という回答が多かった。職種については、企業側の問題だけでなく、高齢者も事務職を希望するなど、求人倍率が低い職種を狙った結果で、なかなか就業がマッチングしないところもある。
仕事を探したときに重視した点(絶対条件)
「勤務日数」、「勤務時間」、「勤務地」などの働き方を挙げている。6割の方が働ける勤務日時でないと、仕事がどんなに面白く、高い給与でも、応募しない。実際給与にこだわっている人は、約25%。時間は6割が気にするが、給与を気にしている人は半分以下である。
希望する勤務時間
女性と70歳以上の男性の半数は約1日あたり3~5時間勤務。また、シニアの大半は勤務日数3~4日を希望しているが、60代の男性に関しては、8~10時間働くことを希望し、かつ出勤日数についても、週5日程度働いてもよいという方が4割ある。つまり、60歳を超えていると、長時間働くことが無理と言うわけでもなく、できないという状況でもない。人それぞれ、希望の就業体系が相当違うということである。
シニア活躍に向けて
在職中の高齢者も、年齢が上がると、仕事内容や給与よりも、働き方の柔軟性や他との両立を求める傾向が確実に強くなってくる。今のうちに、年齢の壁、また仕事内容や時間、休日といった、シニアが働く際のネックになっているところへ、いかに柔軟に対処していけるかが鍵となってくる。
「プチ勤務」を活用した多様な人材活躍
柔軟な働き方として、「プチ勤務」という超短時間勤務を創出。例えば8時間の労働を4時間の仕事で2つ、または2時間の仕事を4つのように、小さい単位での仕事を作るといった、シフトの細分化。また、時間を切り出すだけでなく、業務の中身を変えてしまうという取組を進めている。つまり、短期間で独り立ちができる、比較的単純な、オペレーティブな仕事を切り出し、入社してすぐに活躍してもらえる仕事を「プチ勤務」としている。
プチ勤務のシニアを採用し、土木関連で離職が止まった事例、朝が比較的得意なことから従業員をシフトに入れにくかった早朝時間帯をカバーできた事例、家事の延長から入り、ヘルパーの資格取得までステップアップした事例などがある。
Ⅲ.シニア人材の活躍推進
重視点と不安解消のポイント
企業がシニア採用で不安を感じる点
「特に理由なし」が4割あり、見えない不安の解消は、難易度が高い。具体的理由の上位としては、「健康状態・体力」の2割と「能力・スキル」が2割弱である。一方、企業側が思うことの裏返しとして、働くために重要だと思う事をシニアに尋ねたところ、社会経験があるからか、企業側が求めているものと項目がほぼ一致する。
企業がシニアに求めるスキル
1位は「コミュニケーション能力」、次いで「体力」。コミュニケーションと体力がある程度きちんとあり、臨機応変に対応できる、柔軟な人であれば、基本的にはクリアする。その中でも絶対譲れない最も求めるスキルは、1位が「体力」だが、それでも15%。これら見えてくることは、健康で体力があり、あわせて職場や仕事に柔軟に対応できる、柔軟性があればいいという、とてもシンプルなことである。
「体力」はシニア、企業ともに重要に感じているが、不安にも思っている。シニアが各自の適性や志向を正しく自己認識し、働くための一助になるものとして「からだ測定」を生み出した。
「からだ測定」とは
測定は大きく分けて「しごと体力」「しごと処理力」「しごと個性」の3つ。身体能力と記憶力、判断力、そして、性格特性についての測定にかかる時間は約30分。結果はパソコンですぐ集計され、「結果レポート」が出るため、自分の体力や認知力を知ることができるほか、仕事の向き不向きなどの確認もできる。自分自身を知ることで、シニアの働きたいという意欲を後押しすることができ、企業に対してもシニアの能力の適性を判断できる材料として示すことができている。2年ほど行った結果分かったことが、能力は若者やシニアという年齢差だけでなく、個人差も大きいということであった。
警備業で求められる人材
「警備スタッフ」の仕事は、6つぐらいに業務分解ができる。市街地で行う交通誘導といった体力、処理能力、臨機応変性も必要とする難易度が高いものから、新築の戸建て、住宅地で1件を建てる際難易度の低い警備まで多様である。これらについて、それぞれの年代層、性別、男女別で見たときに、難易度が高い仕事は年齢に比例してできなくなるが、一番簡易な仕事は80代でも可能で、男女差もほとんどない。あらゆる能力を持つ人はいないので、それぞれの仕事に最も必要な能力、それぞれの強みを生かした採用が今後非常に重要になってくる。
「年功助力」とは
2017年から年の功が職場を助ける力になるという意味で、「年功助力」というキーワードで、60歳以上の方々にもう一度仕事復帰、シニアを戦力として活かす働き方をしていただいている。時間の融通が効き、労働意欲も高いシニアを戦力的に活かす企業が増加中である。
高齢者雇用の3つのステップ
第1段階の若い人が来ないから人手不足で頭数だけでも欲しいから高齢者を雇う「消極的シニア雇用」の企業が70.8%。第2段階の定着率がよい、急なキャンセルをしないということから雇用する、もともと高齢者が比較的活躍している介護、清掃、警備といった「優先的シニア雇用」の企業が22.7%。第3段階のシニアの方が売上利益が上がると気づき、シニア部隊を作っている、飲食店、工事、ホームセンターといった「戦略的シニア雇用」の企業が6.5%。そういった会社の評価基準は、今までの仕事で培ってきたスキルやスペックではなく、むしろ、長い人生かけて自然についてきている生活の知恵の方であるケースが多かった。
「年の功」の3つの力
- 自活力
- 融通力
- 対人力
「自活力」の1つとして、自立心やレジリエンスといった、自分のことは自分でという自ら動くということ、長年の仕事や子育て、生活のライフイベントで培った忍耐強さや人に寄り添う力など、また、2つめとして、日常生活の中で身についている豊富な生活の知恵。「融通力」として、若者や主婦が働けないもしくは働きたくないという人手不足になりがちな時間帯、またイベントがあるときには、急な要請でも代わりに入ることができる。「対人力」として、長年の人付き合いで磨かれたコミュニケーション能力。
年功助力で、若い人よりも粘り強さがあり電話対応がうまく商談機会獲得数が高くなったコールセンターの事例、年令が近いことにより寄り添った対応を可能としている介護施設での事例などがある。
まとめ
シニアの方々は個別差が非常に大きいため、年齢ではなく能力を生かすということを見ることが極めて重要。少子高齢化の時代にある中、従来の採用ターゲットでは、いつまでたっても採用できないということを認識する必要がある。できることであれば、働き手が働き続けられるような、柔軟に選択できる状況、フルタイム一辺倒ではなく、週3日でも働ける仕事や1日3時間のような仕事を作り、選択性にするといった働き方を、これを機会に創出することが、今後の人材の確保、多様な人材の活躍という観点で極めて重要である。
第2部 エイジフレンドリーパートナーの取組紹介・交流会
エイジフレンドリーパートナーとしての取組状況をパートナー事業者の伊藤工業(株)、(株)こすもす秋田からご紹介いただき、最後に第1部の講演および第2部の取組紹介などについて意見交換を行うグループワークをもって、参加者同士の交流を図りました。
エイジフレンドリーパートナーの取組紹介
取組紹介事業者
伊藤工業(株) 営業副部長 柴田 康貴氏
(株)こすもす秋田 企画部終活課 菅澤 貴子氏
要旨
伊藤工業株式会社の取組
高齢者雇用を積極的に行っている。新卒の採用も安定した実績があるが、戦力になるには時間を要するため、その間の有資格者の高齢者の活躍は必要と考えている。5人に1人は61歳以上で、高齢者と若年者の間では良好な関係が構築されている。有資格者は,高齢者、障がいのある方にかかわらず採用しており、ジョブシェア、タイムシェアなど仕事環境も整えている。
そのほかの取組としては、自販機の横にベンチを設置し、屋根をつくり、「くつろぎ庵」として整備、また社屋までのスロープ設置や高齢者、障がい者用の駐車場も整備などがある。整備にあたっては、高齢者、若年者がともに協力し取り組んでいる。
株式会社こすもす秋田の取組
セレモニーホールにおいて、トイレのバリアフリー化、車いすの設置と介助、大きな文字での案内表示、カウンターに老眼鏡を設置するなど、安心してご利用いただけるよう整備している。
取組で最も力を入れているのは「高齢者の社会参加」で、いきいきと人生に役立つ集いの輪を広げることを目的とし、お花見会やグラウンドゴルフ大会、クリスマス会など多様なイベントを開催している。また、健康づくり、仲間づくり、生きがいづくりの場として、健康教室、笑いヨガ教室などを行っている。あわせて、高齢者が子どもと触れ合い、一緒に学ぶ機会を作り「多世代が支え合う地域づくり」として、親子坐禅会、クッキング教室などに取組んでいる。
高齢者も積極的に雇用しており、今年度60歳以上の正規社員14名、パート社員40名である。今後も健康で意欲と体力がある限り、年齢にかかわりなく働き続けることができる企業を目指している。
宇佐川氏と取組紹介事業者との質疑応答
質問:伊藤工業(株)では、定期的な治療が必要な従業員の方が働いていると伺いましたが、病気との両立ができるような制度は作っているか?
回答:体調によってフルタイムが難しい場合など、状況に応じて早退させるといった対応をするケースもある。仕事をきちんとしていただければ、柔軟に対応している。
宇佐川氏:日本で課題になっていることとして、今までは女性の出産や育児との両立があり、最近では介護との両立がある。また、自分の病気との両立について、課題として言われ始めている。人生100年という状況があるので、いつどこでどんな病気になるか分からないこと、癌も十分治る病気になり、うまく付き合う病気になっているので、こういった取組はすごく先進事例だと思う。
働き方、人事制度について言うと、大企業の場合、人事制度を変えるのに最低でも半年、場合によって1~2年かかる。しかし、中堅企業や中小企業の場合は、トップの考え方ひとつで、従業員の状況を考慮し、制度作成前にフレックスタイム制のような形がとれる。このような取り組みができることが一つ強みである。そういうことを求人票に反映させると採用が上がっていくと思うので、ぜひ活用していただきたいと思う。
質問:(株)こすもす秋田では、60歳以上の方々を正社員、パートという形ですでに新たに採用しており、かつ仕事内容も働き方のパターンもたくさんあるようだが、どのぐらいの量の業務の振り分けができているか?
回答:営業部門で2種類、ご葬儀などに携わる業務で4種類、内勤業務で3種類、また、市内県内で9つのホールでの管理業務で2種類など、幅広い職種がある。
いわゆる第2職場として再就職される方がおり、例えば営業などでは一般企業を退職された方が今までのスキルを活かして、さらにお客様の意向に対して、今までの人生で経験したご葬儀の内容なども踏まえて、ご案内できるというように活躍している。また、ホールの管理業務では、夜間時間帯の勤務があるが、求人募集を行うと60歳以上の方の応募が非常に多く、実際に現在雇用している方々もその年代が多いというように、新たな仕事を求める方の選択肢の一つにもなっている。
宇佐川氏:圧巻です。それだけの職種があると、よくマネジメントが大変だということがありますが、当たり前のようにできる環境になっているのが素晴らしい。
年は誰でも取るものですが、それぞれの方で体力、認知力など個人差がある。どういうことが世の中で求められているのかをフラットに考え、企業側としても働いてもらう時に、自分の会社で仕事をしてもらえる人の年齢のタガを外してもらい、この仕事をやってもらえるのではないか、もしかしたら新しい価値ができるのではないかということをプラスにみていただくことがすごく重要だと思う。
両社の取り組みで、伊藤工業(株)の社会貢献の取組自体を年齢に関係なく若い方とキャリアのある職人さんが一緒になって行うことで、職場の風土がよりよくなる。また、(株)こすもす秋田の地域の方々の場をオープンにし、その方々がより活性化するようなことを行うという経営ビジョン、その会社の方向性というのが見える。このようなことをきちんと言語化し、何のためにこういう取組をしているというように謳っていただくことが、今自社にいない方に対して、とてもアピールできるポイントになってくる。できるだけ言語化し、伝えることがよいと思う。最近の傾向として、人生100年と言われている時代で、ものすごく高い直接報酬がもらえるよりも、むしろ中間ぐらいの報酬で、社会的意義があり、この組織にいると自分が成長できる、いい会社だなと思えるところにいられる方がすっと長く働き続けられるため、特に若い人に関してはそちらの方がいいという数が実は増えている。そういったことを考えると、この取組全体をもっとアピールすると、採用率が上がるのではないかと考えるので、ぜひ活用いただければと思う。
グループワークでの感想
(株)こすもす秋田の多様な勤務形態は非常に参考になった。伊藤工業(株)の多様な勤務形態を構築している取組も今後は取り入れていかなければならないのかなと思った。また、地域貢献、社会貢献というところが、企業理念という中で、少子高齢化で高齢者がどんどん増えていくが、高齢者と若い人が融合していくためにも大事で、その中で技術を継承し、盛り上げていける社風が生まれてくるのかなと感じた。
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