平成30年度第2回秋田市エイジフレンドリーパートナー研修会
平成31年3月3日(日曜日)、秋田市にぎわい交流館AU 2階 展示ホールにて、エイジフレンドリーパートナーを主な対象とした第2回パートナー研修会を開催しました。
加速する日本の少子高齢化、人々の意識や価値観が多様化する中、社会の変化や時代のニーズに対応した新たなサービスや製品を、どのように生みだしていくことができるかについて学ぶことを目的に実施し、エイジフレンドリーパートナーを含む民間企業関係者や行政職員、一般市民など、61名のが参加しました。
参加者からは、「ビックデータの解析は大きな可能性があると感じました」「今後の事業展開にすごく役立つ内容でした」「ビジネスの種は周りにたくさんあるのだと感じました」「このような社会貢献の仕方があるのかと取組や着眼点に感心しました」などの声をいただきました。
講演「不満買取センター × AIで生活者の本音をイノベーションの種に」
Webサイトやモバイルアプリから投稿された不満を買取り、集まった不満をAI (人工知能)で解析し、企業や社会の多様な課題解決につなげている「不満買取センター」を運営する(株)インサイトテック。
今回は、代表取締役社長の伊藤友博氏を講師に迎え、「不満買取センター」を活用し、生活者の声を新商品開発に活かした具体的な事例や、ライフスタイルなどの変化によって商品やサービスに対する消費者の要望も年々変化していることなどについて、講演を行っていただきました。
要旨
株式会社 Insight Tech
『生活者の「声」で、ビジネス創出を支援し、社会課題を解決する』という基本理念を掲げ、「誰もがそれぞれ抱えている“不満”を解決に結びつけることができれば、社会はより豊かになるはず」という想いからスタートした、「不満買取センター」を運営し、課題解決のハブとなることを目指している。
不満買取センター
Webサイトまたはモバイルアプリから投稿された商品やサービスの不満・改善案を買取り、集まった不満を人工知能(AI)で分析し、企業などに届ける仕組み。不満買取センターには、現在約40万人ほどの会員がおり、1日10,000から40,000件の声が寄せられている。この4年で集まった不満は1000万件を超えた。
投稿される「声」の特徴
ノンバイアス
広告で集めたモニターではなく、自然投稿であるため、偏りがない。
サイレントマジョリティ(物言わぬ大衆)
クレーマーではなく、投稿した不満を他言したことがなかった層。
高感度悲観層
世の中の制度変更やトレンドに敏感で、不便なことに感度が高い層。
不満と離反の関係
さまざまなカテゴリに投稿される中で、「いつも口にするもの」と「非日常・ハレ」に関しては不満→離反のリスクが大きく、「日常的に口にするものは安心できるものを選びたい」や「ハレの日はフマンなく過ごしたい」などの期待に応えらなかった時に離反を誘発する。生活者がどんな気持ちで商品・サービスを利用しているのか、その探求が結果として離反を防ぐことになる。
また、モノより時間を大切にしたい傾向があるシニア層やリッチ層は、「時間には余裕があるのでいろいろな選択肢から選ぼう」、「多少高くても自分が納得でき気持ちよく過ごせるものを」という期待があり、この期待に応えられないと離反を誘発する。
Insight Tech独自のAIによる解析
アンケートや口コミで得られた情報には自然文で書かれた本音、価値のある情報が豊富に存在しているが、次のような問題点があり、十分に活用できていない現状がある。
自然文の問題点
- 人がアンケートを読む必要があり、手間と時間がかかる
- パッとみて理解しづらい
- 口調や書き方などを踏まえ主観でみてしまい、人によって判断が異なる
一方、Insight Techは、最先端の言語処理技術を誇る京都大学の黒橋・河原研究室といった強力な産学連携のもと、独自のAIの構築とこれを活用した課題解決に取り組んでいる。
意見タグAI
原文から“何に対するどんな意見”かを構文解析。意見性のあるフレーズを抽出し、意見の要約を行う。
可視化AI
類似する意見フレーズを束ね、全体を可視化。意見の俯瞰化を可能とし、どのような意見がどの程度のボリュームになるのか理解しやすくなる。
感情分類AI
原文から読み取れる発言者の感情を「ポジティブ」、「ニュートラル」、「ネガティブ」に分類。ネガティブについては更に「低不満」、「嫌気」、「怒り」、「あきらめ失望」に細分化。1件1件の感情の重み付け、優先順位付けが可能になりひと目でどこから手をつけるべきか理解できる。
- 不満は時とともに変化し、より「付加的な価値」の期待が高まる。マイナスイメージの強い「不満」は、商品、サービスをよりよくしたいという期待の裏返しであり、生活者の声に耳を傾け改善することが、次の商機、社会の課題解決につながる。
- 不満の声は、“イノベーションの種”であり、“種”なので、見過ごそうと思えば見過ごせるし、また、気づかないでいようとすることもできる。しかし、それを見過ごすことによって次の時代のビジネスチャンスや次の事業成長の可能性の芽を摘んでしまっている恐れがある。いかにして不満の中から種を見つけて、芽として育てて花を咲かせられるかが、重要である。
- まちづくりでも「欲しいものを作る」時代ではなく、「ないと困る」「不便なこと」に気づき、マイナスに思っていたことを地域の力で課題解決し、プラスに変えていくことが必要である。「不満はイノベーションの種」という発想の転換により、社会のさまざまな課題解決につなげることができ、ビジネスやまちづくりにおいて、行政、民間、市民が連携して地域課題解決を図ることが一層重要となる。
質疑応答
質問:二点伺いたい。一点目が、メールアドレスのみの登録ということなので分からないかもしれないが、スマートフォンやパソコンで不満を収集しているということで、高齢者の登録数はどのくらいあるのか。二点目は、プラットフォームの役割にとどまらず、解決まで携わっているということだが、自分の不満が解消された商品があれば、購入意欲もわいて、経済も回るかと思うので、つぶやかれた不満がその後どう生かされたか、どういうシステムがあるのか教えていただきたい。
回答:一点目について、メールアドレスを登録いただくときに、個人が特定されない、居住地域、年齢、結婚の有無、など属性の情報は聞くようにしている。現状高齢の方はモニターとしては少なく、全体の2割ほどである。ただ、これが問題というわけではなく、会社の体力が続く限り継続していけば、今の自分たちのような現役層がやがて高齢層になって、自然にシフトして安定していくと考えている。
二点目について、やりたいとは思っているが、悩ましさがある。一つは、プロモーションのように見えてしまうリスクがあって、悩みを解決した商品の宣伝をしているように見えてしまうと、モニター側は、不満買取センターに投稿すると、セールスをされるのかと思い、非常に嫌な思いが生まれる。そして、一番大切にしている本音を言ってほしいという関係性が崩れてしまうリスクがある。一人一人にお返しするのは非常にリスクが高いので、皆様の声でこう言った商品が作れましたといった記事にして、メールマガジンで会員に届けている。ゆくゆくは、マッチングのような機能というものはやっていきたいと思っていて、困っている人に対して、困りごとを解消できるプレイヤーをご紹介する、マッチングのプラットフォームの可能性もあると思っている。
質問:インサイトテックは、伊藤様が最初に就職された会社と全く違う分野のように思うが、何かこのことを始めようと思ったきっかけがあれば教えていただきたい。
回答:事業に対しての想いで言わせていただくと、マーケティングあるいは公共でもそうだと思うが、何かをアクションしようという時のモチベーションが、世の中全体で、新しい足りないものを埋めていこうという時代から、負の解消ということに、マーケティングやまちづくりの大きな潮流の変化があるのではないかと思っている。自分が小さいころは、新しい機能が出るとそれが欲しいというプラスに対して消費者が動く時代であったが、今は機能というよりは、生活シーンの中でのちょっとした欲望、不満みたいなところにビジネスがあるだろうということで、世の中がプラス側というよりは、マイナスからプラスというように変わってきたんだろうと思い、不満というのが出てきたのはキーワードであったが、声として集めることで、社会の役に立つのではないかと思い、挑戦してみた。
質問:二点伺いたい。一点目が、ハイコンテクストとよく言われていますが、日本語は「はいのはい」と「はいのいいえ」、「いいえのいいえ」と「いいえのはい」があるとよく言われる。それをAIがきちんと認識できているのか。二点目は、投稿文によっては、「すごい」や「とても」など修飾語によっても思いの強さを点数化することになると思う。その際、会員が正しい日本語を使っているかどうかという懸念があるが、会員の教育や正しく日本語を使ってもらうというような工夫があれば教えていただきたい。
回答:一点目について、集まってきた情報を正とする立場にしかない状況であり、1件1件、これは本当かというような確認はしていない。ただ、基本的には幅広く、言いたいことを言ってほしいと言いながら、領域としては、不満ということに収れんはされており、その中での言語処理になっているので、扱いやすいと言える。
二点目については、信頼性のチェックはしており、コピーアンドペーストをしているとか、不満があった結果、その商品を買いたくなくなったかという教師データになるようなところは取ってあるので、その中で感情の論理付の精度を上げるというようなことを行っている。ロジカルクレーマーで、淡々と書いているが実は怒っているというのは、テキストだけでは難しいというところは、ご想像のとおりですが、1,000万件ある不満の中で、ならされていくところである。総体として優先度の高いものを見つけ出していくというところをまずは優先しているところである。
質問:外国人の方からの不満が送られてくることはあるか。
回答:ないことはないと思う。ただ、我々が対象としているのが、日本語の表記としているため、日本語がでいる外国人の方の声はあると思う。想像されているのが、英語で書くというところになると、我々は対応していないところになる。
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秋田市福祉保健部 長寿福祉課 エイジフレンドリーシティ推進担当
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