平成29年度 秋田市エイジフレンドリーシティカレッジ第2回リレーセミナーを開催しました
平成30年3月26日(月曜日)、秋田拠点センターアルヴェ2階多目的ホールにて、檜山敦氏を講師に迎え、秋田市エイジフレンドリーシティカレッジ第2回リレーセミナーを開催しました。現役世代を支える力として、そしてシニア自身の健康維持のために、シニア世代の就労が必要不可欠となっているいま、ICT(情報通信技術)を活用して、高齢者が社会の中でより一層、活躍できる仕組みづくりについて講演を行い、30代から80代まで76名の一般市民の方が参加しました。
講演「持続可能な長寿社会へ向けてICTができること」
要旨
- ジェロンテクノロジーとは
医学・生物学・心理学・社会学などさまざまな人文系の研究の側面から、老年期における高齢者が直面する課題を総合的に研究する学問のことを「ジェロントロジー」といい、日本語では老年学という。このジェロントロジー領域の中で、科学技術を活用する研究分野が「ジェロンテクノロジー(日本語では「老年情報学」)」であり、檜山氏は、ジェロントロジーの研究対象となる社会的課題に対して、情報科学的なアプローチで解決を目指している。
- 元気なシニアからスマートシニア(ICTを活用したシニア)へ
元気なシニアが、新しい技術と出会うことによって「スマートシニア」として社会に注目されるようになっている。
【若宮正子さん(82歳)】昨年初めに、iPhoneのアプリを開発。それに驚いたアップルのCEOティム・クック氏が、開発者向けの会議に若宮さんを招待。その他にも、国連の総会において基調講演をするなど大変有名になった方。彼女は、突然アプリ開発に目覚めたのではなく、定年退職後、新しいことに挑戦しようとパソコン教室に通い、そこでエクセルを学んだが、表計算を学ぶのではなくエクセルのマス目を塗りつぶすことで、デザインをするソフトとしてエクセルを活用した。この「エクセルでアート」がマイクロソフト社の目に留まり大変話題になった。彼女は、新しいことを自分なりにアレンジし、楽しもうという発想の積み重ねから、このような大きなステージに立つようになった。
【牧 壮さん(81歳)】81歳にして、インターネット・オブ・シニアという会社を立ち上げ、シニアの生活に役立てるためのICTビジネスのコンサルティングを開始。
このように、元気なシニア、スマートシニアが生まれてきている背景を踏まえると、根底的な問題として、若者がシニアを支えるという考え方にはもう無理がきているのに、その図式にこだわりすぎているといえる。統計的にも65歳以上の約9割が自立した生活ができており、そういった方たちを社会の活力として捉えていないことが問題である。したがって、超高齢化の本質的問題は、福祉問題だけではないという視点を持つ必要がある。
- 65歳以上は果たして、支えられるだけの存在なのか
2055年頃には、一人の高齢者を一人の若者が支える時代となり、今の社会システムである、若者が高齢者を支えるという考え方そのものが、限界を迎える。
- 人口ピラミッドを逆さまにしてみる
情報通信技術を活用することで、元気なシニアの人たちが、活躍することを支援することが現在研究していることであり、これが実現されれば、今、逆三角形になっている人口ピラミッドを逆さまにすると、きれいな安定した三角形にもどるように、これからは元気なシニアが少数の若者を手助けする形で、持続可能な社会に変えられるのではないかと考えた。
今の社会は、戦後の高度経済成長期における社会の仕組みやルールが形作られたものであるが、そのルールの中の人の一生は、教育を受ける期間があって、その後はひとつの会社で定年退職まで勤め上げ、余生は悠々自適な生活を送り、その後は介護を受けて一生を終える、といった形で考えられていたが、今は、その一人の一生の形が変化してきている。特に、退職してから介護を受けるまでの期間が非常に長くなってきている。その長くなった期間をどうするのか。ここに、新しい技術が必要なのではないかという時代になっている。
その長い期間は、社会とのつながりを保つことが重要になるのだが、一番わかりやすく社会とつながる方法として、就労がある。政府の統計では、日本のシニアは働けるまではいつまでも働きたいと思っている人がかなりいるのに対して、実際に就労できている割合には開きがあるのが現状。その開きを埋めることが、定年退職後、社会から孤立せずに、元気に過ごすことにつながってくることになる。
- シニアの労働者としての特徴
- 専門的知識を持っており、即戦力として活躍できる。
- 若い人に比べて物事を俯瞰的に見ることができる。鈍感力がある。
- フルタイムで働くのではなく、働きたいときに働きたいと考えている人が多く、時間的な制約がある。
- 遠距離通勤は好まないため、空間的な制約がある。
- ジョブマッチングを丁寧に行わないと、仕事が長続きしない。
- 若い時のように、生活のために働くだけではなく、就労を通じて仲間を作りたい・健康のために働きたい・新しい経験をしたい、といったさまざまな理由で就労する人が多い。
つまり、これらを総合すると、シニア労働者は、「不均一で多様性に富んでいる労働者」であるといえる。
- 「モザイク型就労」
不均一で多様性に富んでいる労働者を社会とつなげるためのものとして、「モザイク型就労」というアイデアがある。これによると、一人のシニアがフルタイムで働くのではなく、複数人で一人分の労働力を結集して現場に届けることができるようになる。
1 時間モザイク
一人一人の働ける時間を組み合わせて複数人でフルタイムの仕事をする、いわばタイムシェアリングという働き方を実現することができる。
2 空間モザイク
インターネットを通じてロボットを遠隔操作することで、自宅にいて遠隔授業を行ったりすることもできる。
3 スキルモザイク
一人一人の能力や興味関心、求めている働き方の情報を集め、その情報をうまく組み合わせることによって、一人だけでは不得意なものがあったとしても、組み合わせることでバーチャルな労働者を合成することができる。
- 「地域の元気高齢者を集める」GBER(=Gathering Brisk Elderly in the Region)
地域における求人のニーズと、働きたいシニアをマッチングするGBERは、地域の農家の手伝いや仕事の情報のほかにも、歌の教室やパソコン教室などの地域活動情報と高齢者を結びつけることができるツール(アプリケーション)である。2016年4月から千葉県柏市ではGBERを使って日常をデザインしていくことを目指した実証実験を行っている。これまで、延べ約1,700人分のシニアと就労、ボランティア、趣味などの地域コミュニティ活動とのマッチングが成立している。
さらに、GBERを活用した柏市の事業が、2016年度から厚生労働省が開始した、高齢者の活躍の場を広げるための政策「生涯現役促進地域連携事業」のモデル地域の一つに選ばれ、シニア就労をサポートする共通プラットフォームとして全国に広げられるよう取り組んでいる。
質疑応答
- 質問:秋田県の場合、農業・林業・建設業においては労働力不足が問題となっている。そのような現場で働いている高齢者は、できれば80歳くらいまで働きたいと思っている。しかし、それぞれの現場は、重機などを使用することが多く、高齢者は身体的な衰えがどうしても出てくるため、そういった重機の操縦ができなくなっている。新しい技術で、高齢者が重機の操作ができるようにならないものか。
- 回答:現在、重機の遠隔操作について研究開発を行っており、高齢者が、危険なところに出向いていかなくても、遠隔操作により可能となると思われる。また、熟練者の重機の操縦というものをコンピューターが学んでいくことで、その操作を自動化させることもできるようになると思われる。
- 質問:秋田県に限らず、これからの課題として、文化芸能などの芸事の後継者がおらず、このままなくなってしまうのではないかという危機感を感じている。例えば、遠隔操作やVR(バーチャルリアリティー)を合わせて後継者を育てるような研究は進んでいるものか。
- 回答:VRを使った技能伝承の研究があり、技能保持者の技能を、VRを介すことで、学習をする人が、技能保持者の体の中に入ったような感覚になり、体で覚えることが可能となるかもしれない。視覚、聴覚、力の感覚の3つの感覚を学習することができ、技能伝承の分野でのVRの活用は大いに可能性があると思う。
PDFファイルをご覧いただくには、「Adobe(R) Reader(R)」が必要です。お持ちでない方はアドビシステムズ社のサイト(新しいウィンドウ)からダウンロード(無料)してください。
よりよいウェブサイトにするために、ページのご感想をお聞かせください。
このページに関するお問い合わせ
秋田市福祉保健部 長寿福祉課 エイジフレンドリーシティ推進担当
〒010-8560 秋田市山王一丁目1番1号 本庁舎2階
電話:018-888-5666 ファクス:018-888-5667
お問い合わせは専用フォームをご利用ください。