令和2年度 秋田市エイジフレンドリーシティカレッジを開催しました
令和2年12月23日(水曜日)、秋田市にぎわい交流館AU 3階 多目的ホールにて、若宮 正子氏を講師に迎え、秋田市エイジフレンドリーシティカレッジを開催しました。パソコンを通じて広げた世界で活躍されている経験も交えながら、コロナ禍で様変わりした「日常」において、創造的に人生100年時代を楽しく生きるための秘訣やヒントについて講演を行い、30代から80代以上の方まで79名が参加しました。
参加者からは、「バイタリティあふれる若宮さんに刺激を受けた」「デジタル化を敬遠するのではなく挑戦していきたい」「70代、80代は伸び盛り、勇気を頂いた」「歳を感じさせない生き方、チャレンジ、パワフルさは目標でお手本になった」などの声をいただきました。
講演「コロナ禍、人工知能と共に生きる智慧」
自分の世界が広がっていった定年退職後の活動
メロウ倶楽部
インターネットを通じて、会員相互の親睦を図り、円熟時代の生きがいづくりを目的とした、インターネット上の老人クラブ。日本国内のみならず、海外在住の会員もいる高齢者の交流サイト。倶楽部のモットーは「年寄りだってやればできる!」。特色のひとつとして、「誰にも頼らない」政府にも、企業にも頼らない自主運営、費用は会費で賄う。また、もうひとつの特色は、「20年以上前から、すべての活動をオンライン上で展開」新型コロナウイルス感染拡大による自粛の中にあっても、倶楽部の運営には何ら支障はなかった。昨今の情勢の中、「シニアの精神的な居場所」として再評価されている。
熱中小学校
熱中小学校は「地方創生と大人の再教育を」ということで、全国の様々な町に展開している大人の学び舎。コンセプトは「もういちど7歳の目で世界を…」。熱中小学校で言っている地方創生の“地方”は、半端でない過疎地が多い。過疎地では、同じコミュニティーの人たちだけの付き合いになることが多い。しかし、その地にあって、例えば東京などから派遣される講師陣による講座を受講することで、新しい刺激を受けたり、交流があったり、毎日見慣れて、当たり前に感じている景色が、観光客によって心を動かされる風景であることに気づかされたりする。そうしたきっかけにより、視野が広がり、地方の価値を感じられるヒトが増えることで、活性化されていく。
NPO法人ブロードバンドスクール協会
高齢者へのデジタル機器の普及支援を行っている。スマホサロンなども開催しているが、大部分は、高齢者がスマホに対してどのように感じ、何を不自由に思っているかなどについて、ウェブアンケートを実施したり、政府にこういうニーズがあるという提言を行う活動をしている。また、デジタル改革関連法案ワーキンググループの構成員として、デジタル改革に携わっている。
創作活動
1 ExcelArt(エクセルアート)
表計算ソフトのExcelで、「セルの塗りつぶし機能」や「罫線の色つけ機能」を使って作る『アート』作品。Excelはコンピュータを理解するために重要なソフトであるが、自分と同世代の人にパソコンを教える機会では、面倒くさいと敬遠されてしまう。そこで、高齢者でも楽しめるものとして創案した。
高齢の女性でも手芸感覚で抵抗なく取り組める、日本古来の文様を描くことからスタートし、今では自分でデザインしたオリジナルの生地を作り、裁縫が得意な友人に洋服に仕立ててもらっている。テレビ出演や2018年に天皇皇后両陛下主催の園遊会への招待された際にも、自分のデザインしたブラウスやドレスを身につけることで、話題をつくることができた。自分が作ったものが様々な場面で役に立っていることに喜びを感じる。
2 ゲームアプリ「hinadan」
高齢者でもスマートフォンを使う方は増えているが、高齢者が楽しめるようなアプリがなかった。若い人に高齢者が楽しめるようなアプリの作成を持ちかけたが、「高齢者の興味を理解している、若宮さんが作ればいいのでは」と言われ、日本の伝統的な行事をデジタル化して若い世代に伝えていきたいという思いもあり、「ひな祭り」を題材にしたシンプルなゲームアプリを作ることにした。
ますは、宮城県在住の方に遠隔授業でプログラミングの指導を受け、アイコンの絵は、絵の上手な友達に描いてもらって制作を進め、2017年2月の公開までたどり着いた。当初は日本語版のみであったが、この年6月米国アップル社の世界開発者会議に特別招待され、同社のCEOに会ったことをきっかけに、今は他言語版で公開している。「hinadan」アプリを作って感じたことは、プログラミングができれば、アプリができるわけではなく、プログラミングというのは「つなぎ」である。自分は幸い、周りに手伝ってくれる友達などがいて、制作することができた。
最近では、2020年11月に新たなアプリとして、日本の美味しい野菜に親しんでもらいたいこと、1月7日に七草がゆを作って食することで、無病息災を願う伝統行事を伝えていきたいという思いで「nanakusa」を制作し、公開した。
新型コロナウイルスが我々にもたらしたもの
新常識(ニューノーマル)で変わる人間関係
コロナ前に中途退職者の再就職のための研修で講演を行った際、会社を辞めた理由を尋ねると、一番多かったのは、人間関係がうまくいかなかったというものであった。三密社会で人間関係がすごく息苦しく辞めた人が多かった。しかし、三蜜を避けなければならなくなった今、食堂での会話や更衣室に長くいることはなくなっており、悪口を言ったり、噂話をする時間がない。会社での人間関係に煩わされることもない。
新常識(ニューノーマル)で変わる個人生活
会社から帰って寝るだけの場所であった住まいが、リモートワークなどにより、生活の大部分を過ごす場所となり、それに見合った居住環境を求めるようになる。また、一人で楽しむ、一人で何かをする時代になり、群れる時代ではなくなった。
今までの組織への帰属意識が強いフォルダー型人間が、趣味や関心、興味などを表現するハッシュタグ型人間に変わる。共通のハッシュタグを持つ人同士の交流や、自分にはないハッシュタグを持つ人に関心を持って、新たな交流が生まれたりしやすい。また、自分だけのハッシュタグがあれば、会社という組織を離れても、新しいビジネスを立ち上げたり、老人ホームを慰問したり、社会に必要とされる存在となることができる。これからは、若いときから自分特有なものというのを育てていくことが大事。
新常識(ニューノーマル)で変化するビジネスライフ
2020年がコロナでこんな騒ぎになるとは誰も予測していなかった。これからは経済・産業以外の知識がビジネスで重要になる。今後迎える少子高齢化の未来は、持続可能な社会であり、経済が右肩上がりになるとは言えず、高度成長は無理だと言われている。いろいろなものの質や意味が大事になってくる。変化への機敏な対応、スピード感も重要である。
また、気づきという意味では、経済を回すためにサービス業が果たしていた役割の大きさをコロナが表出させた。一日も休めない重要な仕事、いわゆるエッセンシャルワーカー(私たちが日常生活をする上で欠かせない職業に就いている方々)として、医療関係者以外にも、掃除やゴミの片付け、火葬場の方など、いつ感染するか分からない状態で仕事をしている方々がいて、我々の生活が支えられ、成り立っていることを肝に銘じなければならない。
コロナとも人工知能とも戦うのではなくて、共存する時代であり、三密を避ける時代では、組織にぶら下がって生きるのではなく、一人の自立した人間としての人間力、自立した個人として生きる智慧が必要となってくる。
「情報」のチカラを活用しよう ~デジタルはこんなに便利~
デジタル化が進むと…
その1 河川氾濫危険などの緊急避難情報が、個人のパソコンやスマートフォンに行政から直接一斉メールで届く。個人が避難方法を返信し、避難予定者の到着が遅れている場合には、位置情報で確認し、消防が捜索を行うことができる。
その2 孫の運動会のライブ配信を見て、応援することができる。離れて暮らす家族の様子が分かる。
その3 遠く離れて住んでいる級友とオンライン同窓会ができる。
その4 家族の都合がつかなくなった時などに、「お互いさまライン」というような登録システムで、代わりに対応できる方を探すことができる。
その5 どうしても思い出せないことなどをいくつかの単語を入力し、検索すると、「秘書」のように代わりに調べてくれる。
その6 通話相手の声が聞き取りづらいと感じている方でも、「みえる電話」を使うと、相手の話す言葉がリアルタイムで文字変換されたものが画面に表示されるため、不自由を感じることなく電話を利用でき、便利である。
情報が命を守り、自立を助け、生活を豊かにさせて、世界を拡げる。だから情報を活用できることが必要。
人工知能(AI)と共に生きる時代、人間こそが持つ力とは
近年は、NoCode(ノーコード)といって、コードなし、プログラミングを一切しないでWebアプリやモバイルアプリを開発できるようになってきている。現に、兵庫県の加古川市の職員が市役所の特別定額給付金の申請システムは使いにくいと、プログラミングを習わず、NoCodeにより、システムを1週間で作ってしまった例がある。今はプログラミングを必死になって覚えるよりも何かやりたいという気持ちを大事にすることが重要である。
これからは人工知能ができることが増えていくが、何かを作る、0から1を作るというのは、人工知能にできない。私たちもそうであるが、若い人たち、特に子どもの創造力は宝で、これをいかにしぼませず、生涯にわたり学習、創造し続けていくかが大事だと思う。創造することこそ、人工知能にも動物にもできない最も人間的な活動と思う。だからこそ、私は「創造的でありたい」。
人生に「遅すぎる」はない
人生100年時代、70、80代は伸び盛り。私も60歳近くでパソコンを使い始め、80歳を超えてからプログラミングをやり始めた。そのなかで、自分が成長したと思ったのは、80代になってからの5年間で、それまでの80年間に比べでグンと凝縮しており、自分自身もバージョンアップしたと感じる。
私には、年の離れた小学生の友達がいる。人生100年時代は、血縁、地縁、職縁を超え、年齢や性別、人種を超えて、新しい人とのつながりを求めていき、ワクワクする毎日を送ってほしい。そうすれば脳も活性化する。あわせて、息長く、一生楽しく学び続け、輝く個人になってほしい。また、これまでのたくさんの失敗の積み重ねこそが、何かを作り出す力のもとになり、失敗の経験も財産となる。
若い人は知識はたくさん持っているが、体験が大事。また選別した必要な知識と体験をよく消化して、味噌や麹と同じように、それを発酵させ、熟成させてできあがったものが、叡智であり、智慧となる。今後、人工知能には、知識ではなく、智慧で対峙していく時代が来ると思う。世の中を活性化させるために、何十年か人生を生きた我々が自信を持って、高齢者の智慧をどんどん広めていかなければいけないと同時に、若い人が持っている先端的な技術を活用し、可能なかぎり、自分も楽をし、周りの人にも迷惑をかけないようにすることも必要ではないかと思う。
若い方もいずれは年を取る。しかし、「私もう70でしょ」「いよいよ80だから」ということはない。「年寄りだってやればできる!」、これは私や私の周りにいる仲間が皆実現したことです。是非そのように思っていただき、自分が年を取ったときにもそう思えるようにしてほしい。
何が正しく、どういうことをやればいいのかも分からない、正解のない時代。刻々と変化する厳しい時代を生き抜くためは、年齢に関係なく知識を吸収して、それを智慧に変えていくことが必要。その智慧が、柔軟な発想をもたらし、その時点その時点で、取りうる選択肢からよりよいと思うものを選び続けていくことにつながり、人生100年時代といわれているこの時代を創造的に楽しく生きるために重要なことである。
質疑応答
質問:小さい頃はどういった子ども時代であったか。今現在、子ども時代の経験で役に立っていることはあるか。
回答:戦争の真っ只中の少女時代で、親も私も毎日を生きるということが最大の課題であった。東京の子どもたちは学童疎開で9つの時には親から引き離され、皆地方に連れて行かれた。食料もなく、どうやって生きていこうかと、大変心細かったことを覚えている。また、親も必死で子どもに構う時間がなかった。ただ、それが日本人にとってどん底で、これからだんだんよくなると思えたため、意外にその後は明るく生きられた。その経験は今も生きていて、コロナは大変ではあるが、戦争中のことを思えば、餓えることもなく、そんなに悲観的には考えない。やはり、あのような時に子ども時代を送ってよかったのかなと思っている。
質問:有名になり、今まで会うことがなかった方に会ったり、国連に行くなど、そういった環境の変化により、若宮さんの心境の変化があったか。
回答:有名人になると、猛烈なスケジュールの中で毎日を送らなければならないが、マネージャーがいるわけではなく、事務手続きも全部自分でしなくてはいけないので大変。しかし、人間やればできる。毎日が新しい発見があるので、張り合いがある。自分が万が一コロナになったら、皆さんに大変ご迷惑をかける、予定を間違えたりしたらいけないなど、毎日すごく緊張していることが、返って心身にいい影響を与えているような気がしている。
質問:特に健康に気をつけていることはあるか。
回答:特にない。若い時から気をつけたこともなく、寝る時間も決めていないので、仕事が終われば、疲れ果てて寝てしまう。私のかかりつけ医が「大丈夫ですよ、今までどおりに暮らしていればいいですよ」と言ってくれて、気にしすぎることなく過ごせるのが、自分の健康にいいようだ。今後歩けなくなっても、今はテクノロジーの時代。オンラインで話せれば、講演会もできる。口がきけて話したいことがある間は、このような活動もできると思っている。
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