障害者プランの基本的な考え方
本市の障害者支援のための総合計画である「秋田市障害者プラン」は、すでに策定されている、「秋田市エンゼルプラン」・「秋田市高齢者プラン」と同様に、秋田市保健福祉長期計画「けやきのまちのしあわせプラン」の一部門を構成するものです。
計画の策定に当たっては、障害のある人が人生のすべての段階において「完全参加と平等」を実現できることを基本目標としました。
この基本目標は、二つの理念が根底にあります。
一つは、障害のある人もない人も、住み慣れた地域や家庭で“共に生きる”社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念です。
もう一つは、人権尊重に基づいて人間的復権を目指す「リハビリテーション」の理念です。
対象となるのは、身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病患者など、長期にわたって日常生活に不自由がある人たちすべてです。
この「秋田市障害者プラン」は、障害のある本人とその介護者を対象にした実態調査や、障害者団体と障害者施設からの聞き取り調査、秋田市社会福祉審議会での議論などを踏まえ、中核市として、市民に質・量ともに満足してもらえるようなサービスを提供するために、既存事業の充実を図り、また、新規事業も盛り込みながら、今後の事業の方向性と整備目標量を定めています。
また、計画期間については、第8次秋田市総合計画の最終年度の平成17年度までの8年間とし、今後は、社会状況の変化に対応し市民の意識や生活実態に即した施策を展開するため、毎年計画の達成状況や成果などについて検証するとともに、おおむね5年後にプランを見直しすることとしています。
「秋田市障害者プラン」は、行政の立場からの取り組みについて計画したものですが、基本となるのは、あくまでも障害のある人一人ひとりが、障害の種類や程度に応じて、自主性と主体性を持って努力することです。そのための支援は、障害のある人の人間としての尊厳を尊重し、サービスを受ける本人の意思と責任ある選択を前提とした自立支援の形で実施されるべきであると考えます。同時にまた、障害のある人の支援は、社会全体で取り組むべきものでもありますので、このプランを契機として、本人、家族はもちろん、地域住民、事業所などがそれぞれの立場で、それぞれの役割を考えていただくことを期待しています。
障害者施策の動向
国際連合では、1981年の国際障害者年の「完全参加と平等」という目標をより具体的なものにするため、1982年に「障害者に関する世界行動計画」を採択するとともに、1983年から1992年までの10年間を「国連・障害者の十年」と宣言し、障害のある人への福祉を増進するため、各国で行動計画を策定するよう提唱しました。
また、国際連合アジア太平洋経済社会委員会は、「障害者に関する世界行動計画」を1992年以降も実践し地域協力を強化するために、1993年から2002年までの10年間を「アジア太平洋障害者の十年」と宣言しました。
このような状況の中で、わが国では、平成5年(1993年)3月に「障害者対策に関する新長期計画」を策定し、10年間にわたる障害者施策の基本的方向と具体的方策を明らかにしました。
また、同年12月には、障害のある人を取り巻く社会情勢の変化に対応し、障害のある人の自立と社会参加を一層促進するため、「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改正され、法律の対象として身体障害・知的障害のほかに、はじめて精神障害についても明記されました。さらに、障害者計画については、国と都道府県の策定義務、市町村の努力義務が明記され、これに基づき、国では、平成7年12月に「障害者プラン」を策定しています。
本市においては、昭和50年(1975年)に国の身体障害者福祉モデル都市の指定を受けてから今日に至るまで、障害のある人たちのために、国・県の施策のほかに、秋田市福祉授産所の開設や重度身体障害者の通院移送費の助成など、市独自の事業も実施してきました。
また、平成6年3月に策定した「けやきのまちのしあわせプラン」には、身体障害・知的障害・精神保健福祉について、当面重要と考えられる事項を整理しました。
しかし、「けやきのまちのしあわせプラン」を策定してから数年を経て、ノーマライゼーションの理念の普及など市民の価値観が変化・多様化する中で、これまで以上にサービスの質・量の充実が必要になってきました。
さらに、平成9年4月に中核市に移行したことにより、従来行ってきた身体障害者・知的障害者に関する市の事務権限が拡大されるとともに、新たに精神障害者や難病患者に関する事務権限の一部が県から移譲され、障害のある人たちの福祉への本市が果たすべき役割はさらに大きくなるものと認識しています。
本市における課題
本市における障害のある人への支援の課題は、大きく分けて、「健康と生きがいづくり」、「自立した生活」、「安心した生活」の3つであると認識しています。
健康と生きがいづくり
いつまでも健康で明るく暮らしたいというのは、すべての市民の願いです。そのためには、障害の発生を未然に防ぐことが基本となります。しかし、何らかの原因で障害が発生してしまうこともあります。もし仮に、障害が見つかった場合でも、早期発見・早期治療の体制が確立していれば、その障害を軽減し、機能の回復を図ることができます。胎生期・乳幼児期から成人期、さらには高齢期にいたるまで、常に健康に気を配ってもらうためには、各種健康診査体制を充実することが必要です。
生きがいづくりについては、たくさんの人たちと交流しふれあいを深めていくことが、充実した人生には欠かすことはできませんが、障害のある人が気軽に参加し活動できる場は十分に確保されているとはいえません。学術・文化・芸術などの生涯学習の場や、生涯スポーツ・レクリエーションなどの社会活動の場に、障害のある人が自主的・主体的に参加できるような、開かれた環境づくりに努めていくことが必要となっています。
また、精神障害については、他の障害に比べ法律の対象として認定された歴史が浅いため、社会に根深く残っている精神障害者への誤解や偏見をなくすことが早急に求められています。
自立した生活
どんなに重い障害があっても地域の中で普通に暮らしていける社会、いわゆるノーマライゼーションの社会の実現が望まれています。本市においても、ここ数年、障害者福祉についての関心や意識は高まってきてはいますが、市民一人ひとりのノーマライゼーションへの認識や理解は必ずしも十分とはいえません。就学前教育や学校教育の場、雇用の場などを通して、ノーマライゼーションの理念をより広く市民の間に浸透させていくことは、障害のある人が地域の中で主体的に自立の道を進んでいくうえで、とても重要なことです。
教育の面においては、障害のある子どものために、その障害の種類・程度・特性に応じたきめ細かな教育体制を整備し、一人ひとりの可能性を最大限に伸ばし、社会的に自立できるように支援していくことが必要です。また、障害のある子どもも障害のない子どもも、地域の中で共に学び、共に遊び、共に育つ環境を整え、お互いの豊かな人間性を育んでいけるように支援することが大切です。
雇用の面においては、障害があっても仕事を通して自立したいと願う人が増えている一方、就労の場が不足しているのが現実です。障害のある人が社会への完全参加を実現し生きがいのある充実した人生を送るために、就労はとても大切なことです。そのためには、障害のある人の働く意欲を尊重し、一般雇用はもとより、福祉的就労を含め、その能力と適性に応じた働く場が確保されるよう支援していく必要があります。
安心した生活
障害のある人が、地域の中で安心して生活するためには、さまざまな福祉サービスを充実していくことが必要ですが、行政の機構の弊害や煩雑な申請手続きなどによって、サービスを利用しにくい場合も少なくありませんでした。日常生活を営むうえで困りごとがあるときは、身近なところでいつでも気軽に相談でき、すばやく情報が手に入る体制が必要です。そして、それぞれのニーズに応じて、適切な在宅サービスあるいは施設サービスを、個人の意志によって選択できるような体制づくりが求められています。
また、障害のある人があらゆる分野に積極的に参加し活動するためには、社会に存在するすべてのバリア(障壁)を取り除くことが大切です。生活の拠点となる住宅や道路、公園、公共施設などについては、バリアフリー(無障壁)化が着実に進んできてはいますが、心のバリアを含めまだまだ十分とはいえません。快適で潤いのある環境づくりや利用しやすい移動手段の確保などをいっそう推進する必要があります。さらには、突然の災害に備え、情報伝達システムの確立や、避難誘導・救助方法などの安全体制を確保しておくことも求められています。
本市がめざす都市像
本市としては、秋田の気候・風土のもと、市民一人ひとりが伸びやかに暮らしていく中で、障害のある人も人生のすべての場面で、やすらぎと生きがいのある充実した生活を送っていけるように支援していくことが必要と考えます。
そのために、本市が抱える課題について、保健・医療・福祉の分野にとどまらず、教育・建設・産業など行政全体として応え、「誰もが互いを理解しながら、地域で共に暮らしていける、心に豊かさを実感できるまち」をめざして鋭意努力していきます。
注
- 「完全参加と平等」とは、ノーマライゼーションの理念を踏まえた1981年の国際障害者年の目標テーマで、障害のある人がそれぞれの住んでいる社会において、社会生活と社会の発展に完全に参加できるようにすると同時に、ほかの住民と同じ生活条件の中で経済的発展により生み出された成果を平等に配分されなければいけないという理念です。
- 「ノーマライゼーション」とは、障害のある人を特別視するのではなく、一般社会の中で普通の生活を送っていけるような条件を整えるべきであり、共に生きる社会こそノーマルな社会であるという考えです。デンマークのバンク・ミケルセンが知的障害者の処遇に関して唱え、北欧から世界へ広まった障害者福祉の重要な理念です。
- 「リハビリテーション」とは、身体的・精神的・社会的な適応能力を回復するための技術訓練にとどまらず、障害のある人の人生のすべての段階において人間的復権に寄与し、障害のある人の自立と社会参加をめざす障害者福祉の理念です。
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