アシリの目(2015年6月)
大森山動物園のアイドル的な存在であったアムールトラのアシリが病気を患い、高齢だったこともあり、あっという間に逝ってしまった。16歳だった。
99年ドイツに生まれ、東京の多摩動物公園にやって来てしばらく活躍した後、07年に希少なアムールトラの命をつなごうと秋田にやって来た。出産と子育てを一回経験し、広島に嫁がせた娘アルルの子、即ち孫ヒロシが今、秋田に帰って来ている。
私は動物園でいろいろなトラを見続けてきたが、アシリは実に美人さんであった。トラはトラだろう、美人という見方はいかがなものかという反論も聞こえてきそうだが、アシリはとにかく美しいという印象だ。
美人の基準や評価は難しいが、アシリの目は落ち着きとやさしさを漂わせ、一方では子育て中に見せた凛とした意識、強さもあった。無論それだけではなく、暑い夏の夕方、水に浸りながら涼むアシリの優雅な姿やしぐさ、お客さんと対話しているかのようなやさしい視線は印象的で忘れられない。
40年余の大森山動物園の歴史、トラの飼育は途絶えたことがない。
その中には何頭かの雌トラがいたが、初代のミドリ、アシリの前にいたトラ次郎の連れ合いマドンナは今でも鮮やかに思い出すが、アシリの目は特に印象的であった。
アシリの訃報が流れると多くの人がお悔やみに訪れ、祭壇に多くのメッセージやお花を手向けてくれている。本当にありがたかったし、皆さんに感謝したい気持ちで一杯だ。アシリも同じ気持ちであろう。
大森山では動物が亡くなった場合、時に祭壇を設けてきたが、今回の弔意には一つの特徴がある。それは、アシリを写した写真がたくさん手向けられていたことだ。写真が多いのは、美人アシリの目にどこか惹かれ、多くの人が写真を撮っていたということだろう。
そうそう、美人と言えば大森山動物園の名誉園長、女優の高木美保さんもわざわざお花を届けてくれた。美人の高木さんは寅年でもあり、アシリとどこかでシンクロナイズするところがあったのだろう。名誉園長の遠くからのお気持ちも本当に嬉しい。
平成27年6月
大森山動物園 園長 小松 守
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