アフリカゾウの「だいすけ」君のこと
アフリカゾウの「だいすけ」君のこと
オスのアフリカゾウ・だいすけ君の体調が心配だ。最近1、2年は巨体を支える特有の足底クッションパッドの摩耗がいびつになりがちで飼育員さんと獣医師さんがチームを組んで、トレーニングしながらの定期的な足の洗浄消毒を続けてきた。そんな様子をご覧になったお客様も多いと思う。この秋の寒さが強まったこともあってか、後ろ足の調子が特に悪くなり、一時はスタッフに緊張が走った。何せ、あの巨体のだいすけ君が立てなくなると一大事なのだ。
だいすけ君がずっと抱えてきた後ろ足のトラブル要因の一つは、彼の素因とも言えそうな後ろ足の弱さだ。人間の踵(かかと)にあたる関節が弱く、成長し体重が増すとともに、関節への負荷も増していたのかもしれない。年齢は31歳、老け込む年ではないが、壮年を過ぎ高齢期に向かっているのも事実だ。私事だが、手指関節が痛く受診したら「加齢による変形性関節炎です。根治はできないから痛み止めなどでだましながら付き合うしかないです。」とあっさり言われた。だいすけ君の足関節の変化も加齢が影響しているのかもしれない。重い体重を支えながら生きるゾウにとって、脚の健康はゾウの生命線と言っても過言ではない。不調をだましながら生きてもらうにしても、動物園スタッフの愛情を込めたケアは絶対要件だ。
だいすけ君が、秋田に来たのは今から30年前のことだ。アフリカからやってきた子ゾウを成田空港に迎えに行ったことを今でも鮮明に覚えている。小さな輸送箱から親しげに鼻先を出し、私の匂いを嗅いでくれた。市制百周年記念事業の一つで「ゾウとキリンを大森山動物園で見ることができたら」という市民の思いが実現し、翌年のお披露目のオープン式で市民から「だいすけ」という親しみやすい愛称をつけてもらった。
やんちゃなだいすけ君は、折れた牙が原因で上顎骨内の化膿症を起こし長く治療し、歯科医さんに登場してもらって全身麻酔での処置にも耐えた。時折おなかを壊し(疝痛)、スタッフは寝ずの番でケアにあたった。何度も大変なケガや病気を乗りこえてきた。
今回の後ろ足のトラブルはこれまでとはまた違った大変さがある。何せ、ゾウの生命線とも言える体躯を支える後ろ足の問題だからだ。人間の力でできることには限界があるが、私たちは最大限のケアでこれを乗り切って行かねばならない。長年付き合っている飼育員さんや獣医師さんは、だいすけ君と日々語り合っている。彼が何を求め、動物園に何ができるかを毎日探っている。
大森山動物園の顔とも言える存在、頑張れだいすけ。
令和2年11月
大森山動物園 園長 小松 守
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