コロナ禍の中で考えた動物園
コロナ禍の中で考えた動物園
北国秋田の動物園、春3月からの営業が11月30日でシーズンを終了、1月に始まる「雪の動物園」までは今はしばしの幕間だ。とは言え、いのちを預かる現場スタッフは忙しい。シーズン中は休園日が1日もないため様々な作業が山積みしている。
11月29日の日曜日、お客様、園運営にお手伝い頂いたボランティアの皆さん、関わりのあった企業の方々、そして園の主人公である動物さんへの感謝を込め、恒例の「さよなら感謝祭」が行われた。コロナ禍の中、人数限定での感謝祭だったが、忙しい穂積志市長や高木美保名誉園長も駆けつけてくれ、和やかな会であった。
今シーズンの春はコロナ禍で始まった。4月の緊急事態宣言もありゴールデンウィーク前後の3週間、臨時休園を余儀なくされた。4月から5月の入園者数は昨年比で約7万2千人減となり、園運営がどうなることか不安だったが、宣言解除後の入園者数は昨年比を上回る月も多く、シーズンの入園者数は20万人を超えた。閉塞感が広がる中、自然豊かで開放的な大森山公園の中にある動物園を憩いの場、動物と出会える癒しの空間と捉えてくれていたのかもしれない。コロナ禍の中、改めて動物園の存在について考えてみた。
動物園側は、グローバルな視点で種の保存や環境教育を動物園の存在意義、役割としてうたいあげるが、来園者が捉える動物園観との間にはどこか溝がありそうだ。動物園のベーシックで大事な役割は、動物(自然)との出会いと対話を通し、心を豊かに柔らかくし、時に人間性を回復させながら、知らず知らずのうちに動物や自然への関心を高めてもらう場であるだろうと私は考えている。動物を知ることで大切さを感じ、その先に動物を守ってあげようという、保護や保全の観念が広がって行くのだろう。基本の大切さを改めて見直す必要があるのではないだろうか。コロナ禍で大勢の人が動物園に来たのは、癒しと失われつつある人間性を保ちたいという思いが自然に働いたからではないだろうか。
話は変わるが、4年前に大森山動物園は恐ろしい高病原性鳥インフルエンザを経験し、やはり休園を余儀なくされた。コロナとインフルエンザも感染症は人間だけの問題ではなく、人、動物、自然の関わりとそのバランスの歪みが根本にある問題とも言われ、最近では「One Health」という概念ができあがっている。これらの重大な感染症は人、動物、地球や自然環境の健康(多様性の豊かさ)に問題が生じ始めたからだと唱える医学者、自然科学者、獣医師がたくさんいる。動物園は人が動物とかかわりながら、心を豊かにし、自然に思いを広げられる素晴らしい場と言える。まずは動物と語らうことから始めてほしい。
令和2年12月
大森山動物園 園長 小松 守
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