羊から猿へ(2015年12月)
羊から猿へ
今、秋田の大森山動物園はシーズンを終え、お客様がいない静かな時間が流れています。チンパンジーなどはどこか拍子抜けしたように時折寂しそうな顔を見せます。動物園はやはりお客様がいて動物園と言えます。
2015年の羊年(未年)も暮れようとしています。やさしいイメージ、平和の象徴のような動物、羊ですが、今年一年の世界を見るとテロや殺戮など戦争とは異なる卑怯で、身勝手な不満のはけ口的な事件が多く、平和からはほど遠い一年だったように思います。
国内でも耳目を覆いたくなるような悲しく、やりきれないような事件などが頻発し、「いったい人間はどうなっているんだ」という、時には怒りにも似た気持ちにもなった年でもありました。
悪いことばかりではないにしても、どこか基底に不安がうずまく一年だったように思います。毎年恒例になっている京都清水寺が発表する一年を象徴する文字に「安」が選ばれました。安心、安泰、安寧という安らかな気持ちを皆望んでいたのでしょう。
動物園は平和のシンボルとも言われますが、私は心安らかに、心やさしくなれる場所でもあるとも考えています。人と同じ「いのち」である動物を目の前にし、それぞれ家族がにこやかに語らう姿は、心安らぎ、やさしい気持ちに包まれている証でもあります。
大森山動物園のテーマ「動物と語らう森」は、人と動物(自然)との対話の中に、相手を思い、相手のことも考えてあげる「共生と利他の心」が生まれてくるようにも思います。
大上段に平和や安らぎの場を振りかざすつもりは毛頭ありませんが、大人も子どもも動物との語らいの中、そこから安らぎと幸せな気分になるとき、渦巻く不安は、もしかすれば和らいでくれるのではないでしょうか。
2016年はサル年。サルの進化を見れば、地上から樹上、森へと進出し新天地を手に入れた挑戦者とも言えます。サルの一種として挑戦者のDNAを色濃く受け継ぐ者として新たな年の課題のひとつに、入園者が幸せな気分になる動物園、安らぎ、優しくなれる場として動物園づくりを考えたいと思っています。
年明け1月9日から秋田の動物園では「雪の動物園」が始まります。寒さや雪、動物たちと同じ空気の中に入り込むことで、何かを感じ取ってもらえれば嬉しく思います。
今年一年、皆様には大変お世話になりました。来る年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
平成27年12月
大森山動物園 園長 小松 守
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