秋田の動物園を見続けてきた動物(2017年4月)
老イヌワシ「鳥海」、ありがとう
20代の若い獣医さんは老イヌワシ「鳥海」に敬意を表し、「鳥海さん」と呼ぶ。老いてからだが小さくなっても「鳥海」の目つきは、イヌワシ特有の鋭さが残っていた。2017年4月24日15時過ぎ、「鳥海」が静かに逝った。47歳であった。
「鳥海」の名は保護された場所が秋田県の霊峰、鳥海山麓であったことに因んでいる。飼育のはじまりは1970年8月、大森山の前身、秋田市千秋公園の児童動物園であった。同山麓奈曽渓谷の砂防工事に従事していた作業員さんが、巣から落下したと思われる幼鳥を救護し、一時飼育していたものが運び込まれたのであった。「鳥海」は大事に育てられ、1973年に児童動物園が大森山動物園に引っ越してきてからも引き継がれ、飼育され47年間生きた。児童動物園から大森山動物園まで秋田の動物園を見てきた数少ない動物であった。
「鳥海」はイヌワシ特有の凜とした気高さ、力強さを持ちながらも仲間のイヌワシに対してだけでなく、私たち飼育者にも温厚で、実に穏やかなナイスガイであった。飼育や繁殖基礎研究に大いに貢献してくれた。
しかし、それだけではなかった。昨年11月に当園で発生した鳥インフルエンザ発生施設で暮らしていながら、感染もせず元気にやり過ごし、春の開園を元気な姿で迎え話題となった。
さらには世界最高齢とも言われる47歳まで生き続け、日本動物愛護協会から長生き勲章の功労賞も頂き、大森山動物園の名を世に広めてくれもした。擬人化しすぎとも言われそうだが、いつも我が園を思い続けてくれた動物のように思えてならない。
そんな「鳥海」の姿に多くの人が何かを感じていたのであろう。ビジターセンターに設けられた献花台にたくさんの花が手向けられている。「鳥海」にかわりお礼をお伝えしたい。「みなさん、忘れないでいてくれてありがとう」と。
「鳥海」はさまざまな功績、思い出を残し旅立った。おそらく今も天高いところからずっと大森山を見続けてくれるだろう。いやそうしてほしいものだ。
「鳥海さん」、本当にご苦労さま、そして、ありがとう。
平成29年4月
大森山動物園 園長 小松 守
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