キリンの角
キリンの角

動物園は家族や友人、あるいは一人でぶらりとして、日常を忘れて楽しんだり、癒されたりする場である。疲れたこころとからだのリフレッシュや人間性をリ・クリエートできる場である。
でも時には飼育員さんや獣医さんの動物解説などを聞いて「へぇー」や「なるほど」と、生命、生き物、動物、自然に対し、その神秘性を改め意識し、動物理解につなげてほしいものだと動物園人としては考えている。(そのためには動物園の教育サービスについて客観的な評価も必要であるが)
いつもは何気なく見ている動物たちだが、折に触れ改めて動物を特別な思いで注視してみると、長く動物園にいる私でも、自然の神秘性や動物の不思議さに気づく。からだのつくり、カタチは生きぬくために、実によくできているし、成長の絶妙さなど、不思議を超え神秘的でさえある。
7月14日、大森山動物園で13年ぶりにキリンの赤ちゃんが誕生した。15歳過ぎての初産成功例はあまりないが、子は元気に成長中だ。その赤ちゃんキリンの角で気づいたことがある。
トナカイの大きな枝角、独特のねじれを見せるマーコールの角などはすぐにイメージできるだろうが、皆さんはキリンに角はどのようにイメージできるだろうか? 大人キリン(雌雄とも)の頭のてっぺんにニョッキリ生えているが、皮や毛で被われ、一見角らしく見えない。大人キリン同士が時々、頭を相手の首にぶっつけたりする仕草を見ることがあるが、角部分が使われている。一種のコミュニケーションだ。
そのキリンの角だが、生まれたて子キリンは頭のてっぺんに角らしき毛の生えた部分があるが、触ると角にあたる堅い部分(頭骨の盛り上がり)は存在しない、というかまだ成長していない。出産時、子が産道を通過する際に堅い角(突起)はじゃまなものだし、赤ちゃんキリンには無用なものなのだろう。
だが、子の成長とともに少しずつ成長しはじめ、2週間くらいで角らしくなってくる。触ると頭の骨が盛り上がり突起状になっているのだ。子キリンながら角は必要だから成長するのだろうが、果たして子キリンにとって角の存在はどんな役目を果たすのか。必要だからあるキリンの角、子キリンの時の役割に注目してみたいものだ。
多様な動物がたくさんいる動物園は不思議が一杯の場所だ。動物という自然物を見ながら、生命や自然の神秘、不可思議な営みを改めて感じながら、動物理解につなげてほしいものだ。
令和2年8月
大森山動物園 園長 小松 守


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