ヒトも見る
ヒトも見る
動物園という場は、愛玩動物や家畜とは違った野生動物(ほとんどが動物園生まれのため動物園動物と表現することが多い)を見て、その多様な姿形と生き方に思いを広げ、学ぶ場である。多くの家族連れなどが楽しむ場でもあり、人は無意識に人をも観ているのかもしれない。
当園の一角、現在のオオカミとクマの展示場のそばに、50年前の開園当初に造られた古い時代の猛獣舎の囲いの一部が残されている。20年くらい前、動物たちをもっと開放的で豊かな環境で生活できるように新猛獣舎「王者の森」に建てかえた際、古い展示施設を遺産的に保存しようと残したものだ。
保存した施設の有効活用策として、施設に「ヒト」のネームプレートをつけてお客様が自由に入れるようにしてあり、ちょっとだけ動物の一種「ヒト」になった体験をしてもらっている。人の「ヒト」という表現に違和感をお持ちの方もおいでだろうが、特殊な動物の「ヒト」を見てもらおうというユーモアから出た発想で、ヒト、人、人間を改めて考えて欲しいという思いもある。家族連れには人気で写真に収める光景をよく見る。錆が出るなどしたため、この6月に施設のお色直し行ったので是非またのぞいて見て欲しいと思う。
生物学的に「ヒト」の学名はホモ・サピエンスだ。賢い知恵のある動物、人間という意味だが、「ヒト」には幾つもの切り口が見えてくる。
ヒトという動物は、動物の中で唯一動物を飼うことができる動物だと表現する人類学者もいるし、人は人と言葉で心を通わせ、道具を作り操る高度な生き方をする存在でもある。さらに豊かさを求めるあまり自然環境を破壊し、動物たちの生息を危うくさせてきたのも人だ。さらに自分たちの領域(経済圏)を広げ、あるいは主義主張を押し通すあまり、相手を攻撃し、殺し合う悲惨な戦争を起こすのも人なのだ。ヒトは「人」の他に「人間」とも表現されるが、それは人と人の「間」にある大切なものを大事してきた存在であることを意味しているのかもしれない。支え合う「人」、互いの「間」も意識する素晴らしい動物である「人間」、ヒトは動物でもあり人間でもあるのだ。「ヒト」を見ながら特殊な動物に思いを広げる機会になってくれたらうれしい。
令和6年6月
大森山動物園〜あきぎんオモリンの森〜 園長 小松 守
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